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【MDD Diary 2022】#2 (2022/06/04)

2022-06-7

本日はModule1 〜医療機器開発のための臨床医学〜第2日目~でした。

1限目 呼吸器外科診療の実際
新谷康 先生
大阪大学大学院医学系研究科呼吸器外科学

呼吸器外科とは何かをはじめ、肺がんの症状や利用されている治療法、今後期待される医学工学技術についてご紹介いただきました。近年、肺がんの外科手術では治療機器の性能向上や支援ロボットの開発により、開胸を伴わない低侵襲手術が多くの割合を占めるようになりました。また、従来標準的だった肺葉を取り除く手術に代わり、可能な限り肺を温存する縮小手術が増えています。放射線療法や化学療法、免疫療法などの技術も進歩しており、肺がん根治を目指す集学的治療法が開発中です。今後、AIやビッグデータを用いた診断、簡易キットやマイクロチップによるがんの検知、支援ロボットやVRを利用した手術環境の向上や外科医の教育体制の発展が期待されています。

2限目 放射線治療で求められる医療機器
秋野祐一 先生
大阪大学大学院医学系研究科放射線統合医学講座放射線治療学教室

放射線治療の流れや使用される機器、最新技術についてご紹介いただきました。放射線療法は腫瘍細胞と正常細胞の治癒力の違いを利用することで、臓器の機能・形態を温存し、非侵襲で治療が行えることが特徴です。放射線量や絞りを自動調節する装置が開発され、よりがん組織に集中した照射を行えるようになりました。また、正常組織に当たる放射線量を少なくするため、ビームが狙った深さで止まる重粒子線治療や、体内からがん細胞に近接照射する小線源治療といった新しい治療法も行われています。照射精度の向上や医療事故防止のため、日々治療計画の立案が行われており、それらに対してAIを活用することも研究段階ですが進んでいることがわかりました。

3限目 糖尿病の治療 〜治療の現状と根治に向けた取り組み〜
宮下和幸 先生
大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学

糖尿病の病態・合併症・治療法、現在の治療の問題点や将来の治療法についてご紹介いただきました。糖尿病治療においてインスリンの投与は根幹となっていますが、従来の血糖測定・インスリン注射に加え、皮下の間質液中のグルコース濃度を連続的に測定することで、変化の傾向とパターンを表示する持続グルコースモニタシステム、インスリンポンプ機能を備えたSAP(Sensor augmented pump)、血糖値の変化に応じてインスリン量を調整するClosed-loop pumpなど、血糖値の変動により柔軟に対応できるデバイスが用いられています。また、血糖値に応じて血糖降下作用が変化するスマートインスリンも開発されています。これは高血糖で崩壊するバイオマテリアルを利用したマイクロカプセルにインスリンを封入したものになります。このほか、すい臓移植、膵島移植などの実態についてもご紹介いただきました。再生医療や膵臓自体の作製に関する研究も進められているそうです。

4限目 人工関節の臨床現場と医療機器
濱田英敏 先生
大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(整形外科)

関節の構造、疾患、特に人工関節での治療についてご教授いただきました。人工股関節の場合、股関節の付け根のカップ、それらを支えるステム、骨頭それぞれの材料に対して、強度、靭性、耐食性、加工性などを考慮して作製しなければなりませんが、技術の進歩により近年では15年以上のインプラント生存率が100%を超えるなど、長期の耐用性が保証されるようになっているそうです。また3Dプリンタによる表面加工も高い強度性をもって行えるようになってきており、近年注目されています。ロボット支援による手術では、危険な部位に進んでいかないよう、人間より強い力で制動する自動運転のような技術の導入、スマートフォンを用いた簡易マーカーなど、より高い安全性を担保するためのテクノロジーが開発されていることを学ぶことができました。

来週は「産科婦人科領域の臨床現場と医療機器」、「泌尿器科領域の臨床と医療機器」、「消化器外科の臨床現場と医療機器」、「心臓血管外科手術と医療機器」について学びます。

メディカルデバイスデザインコース2022運営チーム