【MDD Diary 2020】#4 (2020/06/27)「医療機器開発のための臨床医学4」

2020-07-2

本日はModule 1〜医療機器開発のための臨床医学〜第4日目~でした

 


1限目は大阪大学大学院医学系研究科 泌尿器科学より木内 寛 先生をお招きして、「泌尿器癌診療における医工学」と題してご講義いただきました。
 泌尿器科領域の癌には、前立腺癌、腎・尿路癌、膀胱癌があるそうです。人種や住んでいる地域によって前立腺癌の罹患率に差があることには非常に驚きました。前立腺癌と前立腺肥大症の症状は似通っているが、片方は悪性疾患、もう片方は良性疾患と大きな違いがあります。MRIによる画像診断が極めて有用であること、海外ではPETも活用されていること、PSAというバイオマーカーが診断に有用であることを教えていただきました。日本だけにいるとわからないことですが、諸外国と比較したときに、MRIが比較的安価に受けられるのは日本で医療を受けるわれわれの特権かもしれません。泌尿器癌の治療では、低侵襲のロボット手術が早くから保険適用になり活用されているそうです。ダヴィンチ手術でも指先の感覚が重要になるそうですが、利き手でなくても自在に動かすことができるという点はとても意外でした。まさに実際に使用している先生だからわかるお話を聞くことができてとても勉強になりました。一方で、ロボット手術はランニングコストが高いことが問題となっているとのお話もあり、機器の開発と医療費の問題は密接に関連しているのだと感じました。講義の最後には排尿機能についてご説明いただきました。排尿機能は加齢とともに低下していき、尿漏れや頻尿は患者さんの生活に影響をもたらします。排尿障害のひとつである過活動膀胱は生活指導や膀胱訓練などの行動療法で改善されることがあるそうです。行動療法は3か月かかるとのことで、患者さんが運動を継続的にできるような器具のようなものを開発することができれば、患者さんのQOLを向上させることに貢献できるのではないかと感じました。(Written by ToShi)

 


2限目は大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座小児成育外科学より田附 裕子 先生をお招きして、「小児外科の臨床現場と医療機器」と題してご講義いただきました。
 小児と成人の違いから、成人には適用できているが小児にはまだ適用が難しい医療機器、そしてその改善点についてお話しいただきました。体のサイズが小さいので、人工呼吸器のチューブや各種モニターを体に付けようとすると体が埋まってしまうということがままあるそうです。そのため、赤ちゃんを治すのが本業なのに、まずその配線の絡まりを直す(解く)ことから始めないといけないというお言葉は特に印象に残りました。サイズ含め、小児と成人の違いを十分理解して小児用の医療機器を開発する必要があると感じました。田附先生の講義では各医療機器について「もっとこうなったら良いのに」ということをたくさんあげていただきました。医療機器の開発には現場の声が必要不可欠だと考えますが、小児外科こそ、お医者さん、看護師さん、患者である赤ちゃんの声がまだまだ反映されていない分野なのではないかと感じました。(Written by ai)
 小児外科の現場では、医療従事者の工夫により成人用の医療機器を代用している例を多くご紹介いただき、他の外科領域に比べて、医療機器開発の視点から解決すべき課題が多い印象を強く持ちました。一方で、医療機器を製品化して患者さんに届けるには、マーケットの規模なども検討する必要があり、ビジネスとしてきびしい現状もこの講義で知ることができました。先駆け審査指定制度や小児用医療機器の承認申請支援事業など国の取り組みが実施されておりますが、ビジネスとして成り立つ制度設計が必要なのかもしれません。今回のご講義で現場の状況を共有していただけたので、現場の声が反映された機器がひとつでも製品として出てくることを願います。(Written by ToShi)

 


3限目は大阪大学医学部附属病院高度救命センターより舘野 丈太郎 先生をお招きして、「救命救急と医療機器」と題してご講義いただきました。
 救命医療とは?というところから災害医療や集中治療について映像を用いてお話しいただきました。その中で特に印象に残ったのは外傷診断の実際のプロセスです。緊急性の極めて高い出血性ショックの患者さんに対し、短時間で診断、治療方針を決定し、実際に治療を進めていく過程で、医師が何を考えておられるのかという点も聞くことができ、大変勉強になりました。医療機器を開発する上で現場を知ることは大切だと思いますが、救命医療のような緊急性の高い現場に直接足を運んで見ることは難しいと思います。講義の中では不安定な状態の患者さんを移動させる際に神経を使うというようなお話もありました。開発に従事する者も現場のリアルな姿を目の当たりにした上で議論することが、新たな医療機器開発には必要なのではないかと感じました。(Written by ai)
 救急医療は1秒を争う現場であり、それに対応するため、近年はシミュレーション教育にも注力されており、シミュレーション機器のニーズも高まっていること、そしてドクターヘリのようにスペースが限られ、かつ高温など過酷な環境で使用される機器には、小型化や耐久性がより一層求められていることを教えていただきました。また、常に緊迫している現場で多くのアラーム音が鳴っていることが医療従事者の負担にもなっていることを知りました。いかに重要なアラームを聞き逃さないようにできるかがポイントのようでした。このお話を聞きながら、医療従事者の働く環境を整える機器を作るのもエンジニアの果たす役割の一つなのだと感じました。(Written by ToShi)

 


4限目は大阪大学大学院医学系研究科 精神医学教室より畑 真弘 先生をお招きして、「臨床精神医学と医療機器~臨床神経生理学の認知症疾患への応用~」と題してご講義いただきました。
 臨床精神医学領域の疾患として統合失調症、うつ病、認知症についてその診断法と治療法についてお話しいただきました。高齢化社会において増加している認知症、アルツハイマー病はできるだけ早い段階で低侵襲な方法で診断することが重要とのことでした。私は大学院で代謝物の解析をしているので、アルツハイマー病のバイオマーカーのお話はとても興味深かったです。これまでは採取時の侵襲性が高い脳脊髄液がアルツハイマー病の診断で使用されてきたそうですが、近年はそれに代わり、血液中に含まれるアミロイドβ1-42(アルツハイマー病のバイオマーカー)を免疫沈降及び質量分析計を用いて測定する手法が低侵襲な早期診断法として注目されています。血液中に漏出するアミロイドβ1-42は微量であるため、より高感度な分析法が開発されれば診断精度も更に向上すると思いました。一方で、アルツハイマー病の根治療法は研究段階とのことです。低侵襲な早期診断法の技術が発展し、根治療法の開発にもつながっていくことを願っています。(Written by ai)
 疫学的にみて精神疾患の総患者数は増加傾向にあるそうです。身体に影響がある状態は疾患として思い浮かべやすいですが、心の問題を疾患としてどのように理解すればよいのかは、漠然とではありますが難しいと感じていました。しかし、今回のコロナ禍で、人との関わりが希薄になったり、生活様式が変わることでとまどったりといった経験をしていた中でのご講義でしたので、心の疾患について、学問として専門的な内容を学ぶことができ、とてもよい経験になりました。(Written by ToShi)

 

【MDDリレーメッセージ】講師の先生からのメッセージはこちら

本日でModule1~医療機器開発のための臨床医学~が終了しました。

来週からはModule2~医療機器開発のマネジメント~が始まります。後半にはグループワークも予定しております。皆様と楽しみながら学ぶことができればと思っております。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

 

2020.6.27

MDD Diary 2020

 

Writers:

ai -分析化学、代謝物の解析に従事する背が高めの大学院生,

ToShi -歯学用の医療機器開発をしている大学院生

 

Editors:

ChiCo & MDD brain KEI2