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  • 【MDD】MDD Diary 2017 #15 (2017/10/14) 2017-10-14

    【メディカルデバイスデザインコース】
     第15日目は『医療機器開発の実践3』です。今回のテーマは『医療機器ビジネスの現実』です。山科精器(株) 保坂誠 先生から医療機器開発ビジネス立ち上げで見えた課題、(株)ケイエスピー 栗田秀臣 先生から医療機器開発ベンチャーの資金調達と出口戦略とその実態、そして、ジーニアルライト(株) 和田英孝 先生からはTACE(肝動脈化学塞栓術)におけるデバイスの開発、本学未来医療開発部 真田昌爾 先生からは診療と研究の境界線・先進医療と治験・評価療養の概略とその利用戦略についてご講義いただきました。



     公的資金によるプロジェクトについて、計画を公開することで、社内の事情で開発計画の遅れが出るリスクを減らし、さらに、ステージゲートがあることで、言い訳がしにくくなり、社内的にも目標を一にできるという利点をご紹介いただきました。医療機器開発においては、ニーズの確認、世の中的な技術の進歩も確認しながら進めなければなりません。できた頃にはニーズがなくなっていた、上市する頃には新しい技術が開発されてやり方自体が変わっていたなどさまざまなことが起こりえます。また、産学連携においては、学術的評価と臨床的評価を分けて考える必要があり、学問的には面白いが臨床的には使われないという製品ができてしまうのを防ぐことも必要です。さまざまな方のアドバイスも得る一方で、それを鵜呑みにするのではなく、必ず自社の状況と照らし合わせて咀嚼した上で取り入れるということが重要であることがわかりました。また、メディアや会社見学などを通して会社としてのブランディングを行い、社内の他部門の理解を得つつ、開発チームメンバーのモチベーションをいかに保つかがプロジェクトマネージャーの仕事であるというのは、まさしく新規参入で医療機器開発部門を率いてこられた方だからこそ発せられる教えでした。


     VCとしての立場、そして、長年多くのベンチャー企業のインキュベーターをやってこられたご経験から、実例を交えてポイントをご講義いただきました。事業計画を作るのは対話であり、事業ドメインの設定を行うことでその事業をやる必然性がわかるというお話から、ただ流行りだから医療関連ビジネスをやるというのではなく、なぜ医療領域をやるのかということをよく考えなければならないということがよくわかりました。資金調達については、お金にも種類があり、どの資金を何に使うかが重要である、そして、どれぐらいの資金が実際に必要か、誰からいつのタイミングでいくら調達するか、いいときも悪いときもあるので、出資メンバーはよく検討する必要があるということを解説いただきました。医療機器、創薬ベンチャーがうまくいかない理由の多くが資金調達の不調によるものであるため、創業当初からR&Dと同じ重要度で人材面の準備が必要です。さらに、出口戦略として事業売却を考える場合は、開発までか、治験までか、承認取得までかなど、自社の規模や能力に応じてどこまでやるかをよく考える必要があります。ステルス方式でやる戦略もあるが、ベンチャーでリソースが少ない場合は、さまざまな場所で考えをアピールし、共感してくれる人を集めるのも必要であるということをご講義いただきました。


     TACE(Transcatheter Chemoembolization)の治療手技の発展と、マイクロカテーテル、塞栓材の開発の歴史について、心臓の冠動脈のインターベンション治療:PCI(PTCA)と比較しながら解説いただきました。TACEの前身であるTAEは、1970年代に大阪市立大学の山田先生らのチームによって生まれた日本発の治療法です。因みにPCI(PTCA)は同時期にスイスのチューリッヒ大学で生まれています。これらに必要なマイクロカテーテルを製造するベンチャー企業を興し、研究開発と経営を率いてこられた中での課題についてお話いただきました。新規治療法における医療機器の開発は、工場ラインや製造販売の体制などすべてを整えた状態で治験という流れになるため、ベンチャーで最終段階までやるとするとかなりの資金が必要となるというのは、栗田先生のビジネススキームの構築、出口戦略のお話とも通ずる点がありました。


     新しい医療機器の開発は、患者さんが少しでもよくなるためにという思いでなされると思いますが、やり方を間違えると、熱い思いで始まった研究開発も非難に晒されることがあるということを、事例を交えてご紹介いただきました。「研究」と「診療」を意図モデルと承認モデルの判断軸から分ける基本的な考え方、革新的医療におけるヘルシンキ宣言をもとにした考え方、これらをまとめた研究倫理についてご紹介いただきました。臨床研究と治験の違い、そして、治験は薬事承認に向けて薬機法の下に行われる臨床試験、先進医療は保険収載に向け、医学系研究に関する倫理指針の下に行われる臨床研究であるという大きなくくりでの違いについて解説いただきました。未承認医療機器の保険収載へのロードマップを、1.治験コース、2.先進医療コース、3.先進医療→治験コースにわけ、コストやかかる期間、目的など、どのような場合にどのコースを検討すべきかについてご教示いただきました。

     次回10月21日はいよいよレギュラープログラム最終日となります。血管内治療用医療機器開発現場の挑戦、人工網膜の研究開発、医師のためのクラウドサービスソフトの開発、磁気刺激医療機器の開発、ウエアラブル心電計の開発についての講義を予定しています。
     尚、当日はカルビー(株) 松本晃先生をお招きして、特別企画 『MDD2017ファイアサイドセミナー』を開催いたします。

     モジュール4医療機器開発の実践スケジュール

  • 【MDD】MDD Diary 2017 #14 (2017/09/30) 2017-09-30

    【メディカルデバイスデザインコース】
     第14日目は『医療機器開発の実践2』です。今回のテーマは『新たな価値の創造』です。マイクロソニック株式会社 松崎正史 先生からエコーのパラダイムシフトについて、医療機器センター附属医療機器産業研究所 高山修一 先生から内視鏡機器開発の歴史から将来の展望、そして、大阪工業大学 本田幸夫 先生からはNormalizationを支援するロボット介護機器の開発、大阪ガス株式会社 松波晴人 先生からは新たな価値を創る方法論としてのForesight Creationについてご講義いただきました。


     骨の中は超音波では見えないという常識を覆す研究に始まり、レントゲンやMRIのように、エコーでの乳がん検診も検査者の手技によらず一定の診断ができる形を目指して、半自動的に超音波画像データを取得するシステムを開発するなど、既存の超音波診断機器の発想と違った視点での開発事例についてご紹介いただきました。国が地域包括ケアシステムの確立を目指す中で、これまで病院が支えてきた医療の軸足が地域に移るという考え方のもと、『たくさんの高齢者に安価な医療を提供する』をコンセプトに機器開発を行うという考え方についてもお話いただきました。この実践例として、往診現場での体液管理を目的とし、あえて機能を絞り込むことで、普通のタブレットにプローブを装着すると超音波診断装置に変わるというシンプルさを実現したmiruco(ミルコ)のご紹介をしていただきました。まさしく、『その場でちょっと見たい』という現場のニーズを形にした機器です。講義ではシミュレーターを用いて、実際に機器操作を体験していただきました。


     胃がんを撲滅したいという共通の目標のために、医工連携で開発された内視鏡(胃カメラ)についてご講義いただきました。今では想像もつきませんが、なんと社内ベンチャーで開発が進められたということです。医師の目と手を体の中に運ぶ手段であるというコンセプトのもと、医師と技術者が手を組んで、少しでも患者さんに優しく、少しでも現場の医師が使いやすい機器を目指して一緒に開発してきた歴史がよくわかりました。技術開発を率いられる中で、試作にとどまったたくさんの事例についてもお話いただきました。しかしながら、こういった製品化には至らなかった開発過程から、製品化に至るものの基礎となる技術が発達したということが伺われました。医師とコミュニケーションできる医学知識、医師と共有できる目標、医師の要望を具現化できる技術力、そして10年以上利益がなくても続けるという努力が、世界に誇れる内視鏡を実現したということがよくわかりました。


     コンピューターやロボットにおける技術革新の可能性、これらの技術で高齢化をはじめとする、日本が抱える社会問題をどのように解決するかについてお話いただきました。安全なロボットとは何か、ここでもリスクマネージメントの話が登場しました。ISO13482 生活支援ロボットの安全規格、ISO12100機械類の安全性を確保するための国際標準規格についてもご紹介いただきましたが、基礎的な部分は医療機器の場合と同じであることがわかりました。現在国の事業などを中心に、ロボット介護機器における設計品質の確立についての基礎ができた状態ですが、今後はロボットを現場で使用することで、現場の負担が減り、普及するフェーズへの移行が必要であるというお話がありました。介護ロボットをビジネスとして考えるとRehabilitation (リハビリ)からNormalization(在宅)へのシフトを進め、「技術はあっても商売で負ける」という残念なパターンにならないよう、どのような戦略を立てていくのかが重要です。安心安全のキーワードは外せませんが、ハードルを上げすぎて開発やビジネス化が進まないという事態にならないよう、バランスが必要だということですね。


     日本のモノづくりの特徴のひとつとして、改善改良が得意という点があると思います。一方、医療機器の分野において、今後は世界にないものを日本で創ることが求められています。この講義では『ないところから新しい価値を創る』ことをキーワードに、Foresight Creation(=新たな価値を生むこと)についてご講義いただきました。効率的に最短距離で解を求めるリニア思考から、観察を通して得た気づきにより意外な真相=Insightをつきとめるリフレーム思考への転換、そして収束思考からさまざまなアイデアを生み出す発散思考への転換についてお話いただきました。Creativityとは異質なものを結びつけて新たな価値をつくる統合とリフレームであるという考え方、そして、顧客ニーズを理解し、潜在機会は何かを考えつつ、こういう世の中にしたいという強い意思が、イノベーションを目利きし評価する能力、すなわち「先見力」を生むということを、本田宗一郎やスティーブ・ジョブズの例を挙げてご説明いただきました。どのように新しい価値を発想し、それをどのように意思決定するかが、新しい医療機器を開発する肝になる訳ですね。

    大阪会場のある中之島周辺は絶好の秋晴れでした。
    コース開始から5ヶ月目に入り、朝晩は少し肌寒さを感じる季節となりました。
    受講生の皆様におかれましては体調をくずされないようご自愛ください。




     次回10月14日は医工連携の事例、医療機器開発企業の資金調達と出口戦略、肝動脈化学塞栓療法、診療と研究の境界線・先進医療と治験の講義を予定しています。

     モジュール4医療機器開発の実践スケジュール

  • 【MDD】MDD Diary 2017 #13 (2017/09/16) 2017-09-16

    【メディカルデバイスデザインコース】
     第13日目は『医療機器開発の実践1』です。このモジュールでは、実際に医療機器開発に携わる先生方から機器開発の現場と現実を学びます。午前は妙中義之先生より我が国の医療機器開発環境の現況と近未来、シスメックス(株)浅野 薫先生より体外診断用機器と試薬の開発についてお話いただきました。午後からは(株)アドメテック中住慎一先生よりハイパーサーミア機器の開発事例、新久喜総合病院の澤海綾子先生、(株)丸井商事 井木英之先生より橈骨動脈穿刺用手台(らでぃ丸)の開発事例、最後に東京大学 田倉智之教授より医療機器の価値評価の方法と実践についてご講義いただきました。


     国の医療機器開発に対する取り組みに始まり、医工連携のあり方、さまざまな得意分野を有する組織が手を組んで、コンソーシアム形式で開発を行うシステムについてお話いただきました。先生が長年取り組んでこられた、臨床現場のニーズから開発をスタートさせるコンセプトについてもご紹介いただきました。さらに、実例として、国立循環器病研究センターにて開発を主導された高性能人工肺、それを発展させたポータブル人工肺の開発プロセスについてもお話いただきました。


     3人の技術者から社内プロジェクトとしてスタートし、血球測定機器の開発を機に独立、ハードウェアの開発のみならず、検査用試薬の開発への展開を行い、医療機器メーカーとしての成長についてご紹介いただきました。開発事例として、臨床医との偶然の出会いから始まったOSNAの開発についてお話いただきました。プロジェクト開始から約10年を経て、さまざまな場所で活用されるようになっているとのことでした。また、2015年の米オバマ大統領の演説にも登場した、遺伝子情報、生活環境やライフスタイルにおける個々人の違いを考慮して疾病予防や治療を行うPrecision Medicine への取り組みについてもご紹介いただきました。現在でも一部の分野では応用されていますが、さらに患者さんごとの遺伝子変異を調べることで、最適な抗がん剤の選択ができる日も近いかもしれません。最後にオープンイノベーションについて日本発のロボット支援手術機器プロジェクトについてもご紹介いただきました。まさしく『ひとつの製品は世の中を変えうる』というメッセージにふさわしいご講義でした。


     ベンチャー企業にあるものとないものというタイトルにふさわしく、実際にベンチャーを興してトップとして機器開発を主導されている方でなければ語れない、まさしく現実のお話をご提供いただきました。未熟でも構わない、バカや勘違い大いに結構、諦めるのは一瞬でできるなど、学生や若い受講生の方に訴えかけるメッセージが多々織り込まれていたと思います。1限目のご講義でもありましたが、シーズオリエンティッドではなくニーズオリエンティッドであるべきという言葉は、今回のコースを通じて何度も登場する共通の原則です。実際に事業として持続していくために、動物をターゲットとした治療への参入も行うなど、幅広く展開しつつ、治験も行うという粘り強さが開発を継続できる源だと感じるプレゼンテーションでした。


     カテ看(カテーテル室の専門看護師)として、医師のカテーテル手術に立会う中で感じたニーズを形にすべく、ものづくり側(メーカー)のパートナーを見つけ、医療機器として製品化まで漕ぎ着けた経緯についてお話いただきました。メーカー側でも姿勢制御用のクッションの開発を進めていたこともあり、まさにニーズとシーズがマッチした看工連携のスキームです。心臓カテーテルからその他の領域にも視野を拡げ、見据えるのは海外市場というビジョンは、本コースのテーマでもある、日本からめざす医療機器開発そのものですね。短期間で製造業から製販業の業許可取得も行い、さらに、阻害要因は後まで残さない、継続は力なりというメッセージは、現場のニーズを形にしたいという熱意を表していると思います。


     財政均衡を保つため、価格水準の適正化のみならず、資源配分の円滑化にかかわる議論が増えているということをお話いただきました。ある診療分野のみが利益が出やすい、逆に利益が出にくい診療分野があるとなると、新しい機器の開発が進まなくなったりします。こういった観点から、偏りの少ない資源の配分を進めるとともに、革新性を評価する必要がありますが、その一方で、使用数や技術の陳腐化などいわゆる経済原理の面も考慮しなければならないのが現実です。新しい医療機器の開発促進のためには、開発側にも魅力のある公定価格がつくのが望ましいですが、他方、医療費の増大抑制はまったなしという議論もあります。費用効用分析の考え方、諸外国における費用対効果評価方法、QALYの概念についてもご紹介いただき、イノベーションと公的資源投入のバランスを勘案した公定価の決定を目指して、当局では議論が行われているということがよくわかりました。大変難しい内容ではありますが、医療機器開発を進める上で避けては通れない価格決定のプロセスについて、大変わかりやすく解説いただきました。


     次回9月30日はポケットエコー、内視鏡開発、ロボット介護機器、そしてForesight Creationの講義を予定しています。

     モジュール4医療機器開発の実践スケジュール

  •  次世代内視鏡治療学共同研究部門 中島清一特任教授(常勤)が腹腔鏡手術用 世界最細綿棒を共同開発 2017-09-13

    当センター 次世代内視鏡治療学共同研究部門 中島清一特任教授(常勤)らと株式会社山洋が腹腔鏡手術用世界最細綿棒を共同開発しました。記者会見の模様は9月11日18時13分NHK総合 首都圏ネットワーク、9月12日 日刊工業新聞(朝刊16面)、9月13日 読売新聞(夕刊12面)にて、紹介されました。
    詳細はこちら http://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2017/20170911_1


  • 【MDD】MDD Diary 2017 #12 (2017/09/09) 2017-09-9

    【メディカルデバイスデザインコース】
     第12日目は『医療機器開発のための機器実習4』です。午前はニプロ株式会社、オリンパスメディカルサイエンス販売株式会社のご協力を得て、血液透析機器、内視鏡機器、鏡視下手術機器について実習を行いました。午後からは、RTワークス株式会社、富士フィルムメディカル株式会社、川村義肢株式会社のご協力のもと、自動制御機能付き歩行器、3次元画像解析システム(画像診断ワークステーション)、義肢装具について実習を行いました。


     先週の腹膜透析機器に続き、血液透析機器についてご紹介いただきました。かつては透析回路を機器にセットし、患者さんの血管内に空気が入らないよう、回路内に液を満たしてエアー抜きを行っていくという作業(プライミング)を毎日早朝から行っていましたが、現在では前日の夜にセットしておくことで、夜中のうちに機械がオートプライミングを行っています。実習では、実際の機器を見ながら血液透析医療の背景、そして機器がどのように進化してきたか、災害時など万一の場合の対策などについて説明いただきました。


     内視鏡の実習では、気管支鏡、上部消化管内視鏡(胃カメラ)、下部消化管内視鏡(大腸ファイバー)に至るまでをご用意いただき、実際に胃カメラの挿入を体験しました。軽鼻内視鏡などの細径化を始め、手技中にファイバー部分の硬さを調節する技術やNBI(Narrow Band Imaging狭帯域光観察)など、少しでも検査が効率的で患者さんにとっても楽になるよう日々進歩していることがわかりました。また、2002年ごろより実用化が始まったIT Knife、そしてそれを用いた治療、すなわちESD(Endoscopic submucosal dissection内視鏡的粘膜下層剥離術)の発展についてもご紹介いただきました。モジュール4ではこの開発を率いられたひとりである高山先生をお招きし、さらに日本が世界に誇る内視鏡の開発の発展について学習したいと思います。


     鏡視下手術機器の実習では、スコピスト(カメラの持ち役)と術者のふたり一組になり、ラパロトレーナーを用いて腹腔鏡手術シミュレーションを体験しました。3Dメガネをかけて立体視での操作を行った後、2Dと3Dでの操作感の比較を体験しました。立体視の方式の違いや、軟性鏡、硬性鏡、先端フレキシブル硬性鏡の違いについても解説いただきました。体内の環境で実際に針をかけ、糸を結ぶ操作は想像以上に難しいことが体験できました。


     高齢化の課題を抱える日本においてますます重要となる介護福祉機器として、自動制御機能付き歩行器の実習を行いました。もともとエレクトロニクスメーカーからスピンアウトしたメーカーが開発しているとあり、データ通信機能、センサー制御技術が搭載されている一歩進んだ歩行器を体験しました。データ通信が行えることで、機器の稼働状況がわかり、使用している高齢者に何か起こっていないかを間接的にモニターすることも可能であることがわかりました。


     DICOM、PACSなどの用語説明から、CTやMRIといった画像診断機器とこれらのデータを統合する画像データサーバーの役割と立ち位置に始まり、3次元画像解析システムがどのような局面で臨床に貢献しているか、そして自動抽出機能を用いたいわゆるCAD(Computer-aided Diagnosisコンピュータ支援画像診断)についてもご紹介いただきました。実習では肺腫瘍の抽出から、気管支と血管、腫瘍の位置関係がどのように把握できるのかなどについて、実際にワークステーションのデータを操作しながら体験しました。AIを利用した自動診断がいつ実現するのかはわかりませんが、そう遠くないようにも思われます。これまで、人海戦術で行っていた術前画像の作成も、自動化が相当進んでいることがわかりました。


     義肢装具はいわゆる病院で使用する医療機器のような保険償還システムとは異なり、『療養費払い』という制度により、患者さんに還付される形で費用の支給がなされています。この制度についての説明、義肢装具士の役割、さらに、どのような患者さんに義肢装具が使用されるか、リハビリロボットと義肢装具の立ち位置の違い、日本と諸外国の違いについても解説いただきました。実習では、筋電義手や下肢の義肢などを実際に体験しました。タブレットの制御で動作モードの変更ができるものもあり、技術の進歩がここにも反映されていることがわかりました。


     講義終了後は講師を務めていただきました谷岡先生、長澤先生、長谷川先生にもご出席いただき、MDDイブニングネットワーキングが開催されました。


     長澤先生からはリスクマネージメント大賞、優秀賞の表彰、長谷川先生からは知財実習大賞、優秀賞の表彰がありました。この日は東京会場の受講生もほとんど大阪会場で受講いただきました。東京会場と大阪会場の受講生の交流が深まっていれば幸いです。

     来週からはモジュール4『医療機器開発の実践』が始まります。

     モジュール4医療機器開発の実践スケジュール

  • 【MDD】MDD Diary 2017 #9 (2017/08/05) 2017-08-5

    【メディカルデバイスデザインコース】
     いよいよ機器実習が始まりました。第9日目は『医療機器開発のための機器実習1』です。午前は愛媛大学の石原謙先生によるこれまで手がけられた開発プロジェクトの紹介と日本の医療機器開発の現状についてのご講義で始まりました。続いて当院臨床工学部より丸山雄一先生、楠本繁崇先生にご登壇いただき、臨床工学技師の役割と医療機器にまつわる事例、漏れ電流・EPRの予備知識について学びました。午後からは、楠本先生、丸山先生より漏れ電流・EPR実習、そして、日本光電工業株式会社にご協力いただき、除細動器とAED、パルスオキシメーター・血圧計の各実習を行いました。

     石原先生からは100件以上に上る特許を出願された機器開発のご経験の中で、ORCAプロジェクト(日医標準レセプトソフト)の初代責任者として開発を率いられたお話、さらに、血液を採取することなくヘモグロビン濃度の測定ができる装置の開発(シスメックス株式会社よりASTRIM として販売)などをご紹介いただきました。また、3-4限目の漏れ電流・EPRの講義・実習にもつながるマクロショックとミクロショックについてもご解説いただきました。ご自身が研究開発された中で、製品化にいたらなかった歯がゆいご経験も含めて、これからの日本がどのように医療機器産業を捉えていくべきかの示唆に富むご講義でした。

     2限目の丸山先生からは、臨床工学技師としての病院内での仕事、そして、そのご経験を元に病院内で起こるさまざまな事例についてご紹介いただきました。機器の使い方を誤ったために起こった事例、使い方を十分に知らなかったために起こった事例、勘違いや見間違いにより起こった事例など、いわゆるヒューマンエラー、ヒューマンファクターによる事例についてご提示いただく一方で、機器のユーザビリティ向上により防げた事例、あるいは、今後防ぎ得る事例などについても考察いただきました。事例をメーカーや開発者と共有することでより良い機器の開発、運用につながり、アクシデントやインシデントをさらに軽減できるというメッセージをいただきました。

     楠本先生からは、電撃と人体反応、病院電気設備・医用電気機器の漏れ電流対策、そして、午後の実習につながる漏れ電流測定の概要についてご講義いただきました。何気なく病院で使用されている医療機器や設備ですが、ひとたび管理を怠ると、重大なリスクがあるということがよくわかりました。また、ご講義の中で医用電気機器のJIS規格についてもご紹介いただきましたが、ともすれば規格の数値を守ることに執心しがちな機器開発において、なぜこのような規格があるのか、もし規格外だとどうなるのかということがよくわかる授業だったと思います。規格内におさめるのは大変な作業ですが、その理由まで熟知し、患者さんの安全のためにと思いながら開発すれば、さらに前向きに取り組むことができそうです。

     午後からは、グループローテーション方式で、漏れ電流・EPR実習、除細動器とAED、パルスオキシメーター・血圧計について実習を行いました。電気安全については、モジュール2で萩原先生よりご講義がありましたが、漏れ電流の測定は機器の開発シーンにおいても繰り返し行われます。そして、機器が病院に導入された後も、このようにメンテナンスが継続され、患者さんの安全が守られていることがよくわかりました。単一故障条件などさまざまな設定で、マニュアルの測定方法と自動測定の両方を経験できたことで、さらに理解が深まったと思います。


     パルスオキシメーターは酸素飽和度を非侵襲的に測定する機器ですが、かの青柳先生が原理を開発された機器としても知られています。今や国際的なガイドラインでも手術中の装着が謳われる機器の原理を日本人が開発したということをあらためて誇りに思います。
     血圧計は主に、収縮期血圧(いわゆる上の血圧)よりも上回る圧力で腕を締め、圧を下げていくときに発生する音(コロトコフ音)を測定する方法が一般的でしたが、日本光電工業株式会社からは加圧しながら血圧を測定するタイプの血圧測定機器をご紹介いただきました。従来よりも短時間で測定できることが利点とのことですが、登場からかなりの年月が経つ機器であっても、少しでも使いやすくなるようさまざまな工夫が続けられていることがよくわかりました。健康診断のときの結果と違ってびっくりした方も、あらためて病院に行く気になった方もおられるかもしれません。

     除細動器とAEDとの違いが意外とわかりにくいのですが、今回ならべて体験したことで、違いがよくわかったと思います。医療従事者でない方の場合、実際にはAEDを使用いただくことになりますが、今回は除細動器の使用も体験いただきました。米ドラマERなどでもよく出てくる「クリア」という掛け声の元「ドーン」とショックがかかるシーンです。今回は「ドーン」というショックは伝わらなかったかもしれませんが、ちょっとした緊張感は味わっていただけたかと思います。AEDの普及により、これまでは助からなかった方が通りがかった方の救命処置で助かる事例が増えてきています。機器の進歩と人々の関心が高まることでこういった傾向が進むといいですね。

     この日、講義終了後の大阪会場の近くからは2万発を誇る『なにわ淀川花火大会』がきれいに見えました。

     来週は夏休みです。MDDコースも後半のプログラムに入っておりますが、夏の疲れが出ないようお気をつけください。
    夏休み明けはリスクマネージメントと知財の実習です。

     モジュール3医療機器開発のための機器実習スケジュール

  • 【MDD】MDD Diary 2017 #8 (2017/07/29) 2017-07-29

    【メディカルデバイスデザインコース】
     第8日目は『医療機器開発のためのマネージメント4』です。午前はテュフズードジャパン株式会社の村山靖先生より、欧州・米国の医療機器規制の実務について、さらに、医療機器安全研究所より萩原敏彦先生をお招きして、ユーザビリティとIEC 62366-1:2015についてご講義いただきました。午後からは医療機器開発と材料調達について城風 淳一先生より、そして、医療機器における臨床評価のポイントについて京セラ株式会社 谷岡寛子先生にご講義いただきました。


     先日PMDAの村上先生から新興国を含めた世界的な医療機器規制の取り組みについてご紹介いただきましたが、今回は、現時点における最大の海外マーケットである欧米で、日本の医療機器展開するにあたって知っておくべき実務の流れについてお話いただきました。日本の医薬品医療機器等法に基づく制度の復習から始まり、日本と対比する形で、EU加盟各国とEFTA加盟国の32カ国が対象国となる、欧州医療機器指令(EU指令)についてお話いただきました。日本では低リスクの機器を除き、基本的に厚生労働大臣の承認が必要となる一方で、欧州では基本要件を満たすことを確認し技術文書を作成、品質システムを構築し(EC認証書)、ノーティファイドボディの審査を経て、メーカーが適合宣言を行いCEマークを添付するという大きな違いがあります。他方、米国については、ISO13485ならびに基本要件不採用であること、 Substantial Equivalence Discussion、510(k)申請とPMA申請の違い、QSRの査察などについて解説いただきました。今回、欧州では医療機器規則(MD Regulation)への変更が実施され、非通知での監査が実施されるようになるなど、これまで比較的ハードルが低いとされていたCEマークをとりまく状況も変化しつつあるということがわかりました。


     機器の誤使用に伴うたくさんの事例を紹介いただきました。まさしくTo err is humanですね。重大な事故につながる製品に関しては、ある程度規格の統一が必要だというお話もありました。新規開発を阻害しないように、また特定の製造者だけが有利にならないように規格統一をすることが重要かもしれません。マニュアルどおり使用しなかったからユーザーが悪いと考えてしまえば簡単ですが、実際の現場でどのような使い方がなされるかを予測し、『わかりやすいものづくりをする』というのが、医療機器を開発する側としての義務であるというメッセージがよく伝わりました。また、形成的評価、総括的評価、そしてusability engineeringの考え方は、リスクマネージメントの一環として非常に重要であることがわかりました。製造側にとっては1事例であっても、当の患者さんや家族にとっては100%になる、医療機器に関連する事故はなくすことはできないが、あらゆる方法を駆使して減らす努力をしなければならないというのはメーカーでものづくりを経験された方ならではの思いだと感じます。海外で撮影された写真も多く、規格作りのために世界を飛び回っておられたことがよく分かるスライドでした。


     製造販売業許可の取得、GLP、GCP、QMS、GVPに沿った体制を整えるタイミングについて解説いただきました。医療機器と製造物責任法(PL法)の関連についてもお話いただき、米国での医療機器メーカーと部材供給企業が関連したPL裁判の事例もご紹介いただきました。PL法の免責事由、医療機器と部品・部材は異なること、汎用品、受託生産品、共同開発品の線引きについても詳しく説明いただき、『医療機器に使用するもの』を供給するというだけで、必要以上に恐れる必要はないということがよくわかりました。


     市販後臨床評価(Post Market Clinical Evaluation)、市販後リスクマネジメントとPDCAサイクル、既存の文献などによって評価可能であることを示す臨床評価報告書などについて、お話いただきました。臨床試験の要否については永遠の課題ですね。昨今の傾向として、FDA、PMDAともにリアルワールドのデータにも注目していることが伺われます。臨床研究法の施行、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針、個人情報保護法改正など医療機器開発に影響するファクターが多々ありますが、当コースとしても注視していきたいと思います。
     後半、講義を受講された方のみ聴けた貴重なお話もありました。まさしく『日本からめざす医療機器開発のスペシャリスト』の趣旨を反映したご講義でした。

     MDDコースも本日で折り返しとなりました。来週からは機器実習が始まります。
     モジュール3医療機器開発のための機器実習スケジュール



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