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講義詳細

EMC(電磁両立性)の実際(芝田 侯生)

講義概要 医療機器の開発プロセスの中におけるEMCの位置付け、制度との関わりを、規格ベースで解説し理解する事を目的とします。
又、これからのものづくりにおいて必要とされる注意点について、EMCの観点から解説します。

チーム編成と組織マネージメント(宮坂 強)

講義概要 医療機器開発に必要な様々な機能や必要な環境について「チーム編成と組織マネージメント」の視点から考えます。
 1.世界の医療機器市場の凡そ50パーセントを米国系医療機器企業が占める現状と加速する企業再編の中で、日本の医療機器企業の位置づけを確認
 2.米国系企業の組織について紹介、その特徴を提示し「強いメーカの謎」について分析
   ◆米系グローバル企業の組織的な特徴を生かした「製品・市場構築」の例を提示
 3.日本の医療機器開発の特徴と問題点について考えます
 4.開発に必要な「チーム編成」を行う上で「考えておかねばならない」ポイントを議論
   ◆必要な機能・組織、
   ◆開発のプロセスに対する理解とポイント
   ◆所有する技術の位置付、特許、目指す事業形態
   ◆異業種からの参入事例の提示と成功のポイント
   ◆ネットワーク構築のための様々な体制
 5.組織マネージメント
   ◆米国における医療機器開発のマネージメント
   ◆組織マネージメントは誰が行うか?
   ◆開発のプロセスマネージメントと組織マネーにメントのポイント

開発資金と出口戦略(宮坂 強)

講義概要 医療機器開発に必要な資金の確保と将来の事業化に向けての出口戦略は、開発の早い段階で検討する必要があります。
 1.医療機器開発・事業化を待ち受ける難関や必要とされる資金など、開発のプロセスの重要なポイントを確認しながら、その課題について議論します。
 2.開発を行おうとする組織のタイプ等から、医療機器開発の「資金調達」の方法について考えます。
   ◆自己資金、や提携先、顧客企業とのタイアップ開発と資金
   ◆公的資金の活用、ベンチャーキャピタルの様な民間資金
 3.出口戦略は開発の早い段階から、また関門に直面した際にも検討が必要です。医療機器開発をする企業のタイプによっても「出口戦略」は異なります。
   ◆医療機器メーカの場合
   ◆異業種からの参入事例と出口戦略を検証します
 4.まとめ
   ◆出口戦略を考える上でのポイントを整理します
   ◆グローバルな視点、?出口戦略を考えるタイミング、?市場分析と自社内経営資源分析の重要性、?臨床ニーズと対象顧客の認識、?経験者、他社との交流

ビジネスとしての分析(SWOT分析・5FORCES)(津嶋 誠)

講義概要 ◆リアルビジネスでは、ベンチャーの起業や新規事業開発の際に、必ず事業計画/ビジネスプランを作成します
◆このスタータッププランニングの内容が、資金調達の成功率や新しいビジネスの生き残る確率に大きく影響します(Bloomberg)
◆プランニングには、ビジネス、マーケティング、セールスなどがあり、多くのファクターを色々な角度から分析をして、ビジネスに影響する要素を明確にしていきます
◆代表的な分析方法を説明しながら、幾つかのリアルビジネスをケーススタディーとして紹介します

QMSとISO13485(長澤 良樹)

講義概要 医療機器の開発〜製造・販売に必須である品質マネジメントシステムの要求事項について,設計開発およびリスクマネジメントに力点をおいて概説する。

医療機器開発と販売(山口 幸宏)

講義概要  本講義では、基本的な医療機器の概要を説明し、医療機器を開発にするにあたりどのようなことを行って、市場に出していくのか概説する。
 また本講義の中心ともなる、医療機器販売業について、医療機器の開発を終え、承認・認証・届出で行い、認められた後市場に投入される。その医療機器は、医療機器販売業を経由し、使用者のもとに届く。その医療機器販売業の意味、業を得るために何をしなければならないのか、業を取得した後の遵守事項、販売に際し注意すべき点など、様々な点から、医療機器販売業を見ていきます。また業界活動で得た情報を盛込みながら説明をしていきます。

医療機器における臨床評価のポイント(谷岡 寛子)

講義概要 医療機器の開発における臨床評価について解説する。
医療機器の開発プロセス全体のフローを示し、臨床評価とは何か、いつ、どのように実施するのかを説明する。
また、臨床評価と日本での承認申請との関係を示すとともに、臨床評価結果の利用事例を一部紹介する。

ワークショップ1 ミニプロジェクト体験(今野 浩一)

講義概要 プロジェクトとは、独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施する有期性(実施する期間が決まっている)のある業務です。この定義を満たす活動は、ビルや橋梁の建設、ITシステム開発、医薬品開発、医療機関での臨床研究など日常の中にあふれています。本講義では、医療機関で小規模の臨床研究を計画・実行する場合などの具体的な事例について、プロジェクトを成功に導く要素、失敗の原因となる要素について体験をもとに学習します。
また、プロジェクトマネジメントの5つのプロセス群において、どのような視点と行動が必要かを整理し、各プロセスでの受講者の学習目標を明確にします。

講義内容
○プロジェクトスコープマネジメント5つのプロセス
○発散・収束プロセスに関するミーティングファシリテーション
○経験から学ぶ、Lessons learned (After action review)

達成項目
○プロジェクトマネジメントの5つのプロセスを理解し、それぞれのプロセスを意識して活動ができるようになる
○プロジェクトチームミーティングのポイントを学び、効果的なコミュニケーションができるようになる
○プロジェクトの教訓を次の機会に活かす意識を持ち、適切に振り返るためのスキルを身に着ける

プロジェクト概論(岩崎 幸司)

講義概要 最近ではビジネスの世界で日常的に使われている言葉ですが、あらためて「プロジェクトって何ですか?」と問われたら何と答えますか?ビジネスは複数の人達が協力して実行されているので、メンバーが共通の認識や理解を持っていることが重要です。そこで「プロジェクト」に関する定義についてプロジェクトマネジメント(PM)の標準ガイドブック(PMBOK)の最新版(第5版)をみてみると「プロジェクトとは独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施する有期性のある業務である」とあります。この「有期性のある業務」すなわち「実施する期間が決まっている仕事」をうまく進めるためにPMが用いられており、「PMとは、プロジェクトの要求事項を満足させるために、知識、ツール及び技法をプロジェクト活動へと適用することである」定義されています。
PMBOKは、米国のPMI(Project Management Institute)がまとめたPM知識体系(A Guide to the Project Management Body of Knowledge)の略称であり、PMの共通概念や用語の定義が記載されています。実際の仕事(業務、プロジェクトなど)は多岐にわたりますが、いずれの仕事にも適用できるように記載されているので、医薬品の開発業務や医療機関での臨床研究等の具体的な仕事に当てはめるにはコツが必要です。
本講義では、プロジェクト、プロジェクトマネジメントの概念や定義を確認しながら、プロジェクトを構成する組織及びプロジェクトを進めるプロセス(PMプロセス)について、臨床研究の計画・運営等の具体的な事例を検討することにより習得します。

講義内容
○プロジェクト概論
○プロジェクト組織
○プロジェクトマネジメント概論
○PMBOKとPMプロセス

達成項目
○「プロジェクトって何ですか?」と問われた、簡潔の答えられるようになる
○プロジェクト組織構造、PMオフィス(PMO)、プロジェクトマネジャの資質について理解する
○PMの概念をおおまかに把握する

プロジェクト統合マネジメント(岩崎 幸司)

講義概要 プロジェクトは「立ち上げ」⇒「計画」⇒「実行」⇒「監視・コントロール」⇒「終結」の5つのプロセスで進んでいきます。これらの一連のプロセスを含むプロジェクト全体を調整することによりプロジェクトを全体として最適な状態にすることが「プロジェクト統合マネジメント」です。すなわち、プロジェクトの各プロセスでプロジェクト全体を最適化するために必要な知識、ツールや手順について理解を深めることが重要です。
また、ひとつのプロジェクトの最適化に加えて、複数のプロジェクトの成果をあわせて、さらに大きな価値を創造する「プログラムマネジメント」についても、その概略を理解します。そのことにより、プログラムにおける個々のプロジェクトの位置付けや重要性を認識できるようになります。
本講義では、製薬企業における新医薬品開発プロジェクトや医療(研究)機関における臨床研究プロジェクトの最適化に関する事例を紹介しながら、プロジェクト統合マネジメントについての理解を深めます。

講義内容
○プロジェクト統合マネジメントとは何か?
○プロジェクトの各プロセスにおける知識、ツールの活用
○プログラムマネジメントとは何か?

達成項目
○ひとつのプロジェクトの最適化を意識した活動ができるようになる
○プログラムの概念を理解し、プロジェクトとプログラムの関係を理解し、プログラムの全体最適を意識したプロジェクト運営を意識した活動ができるようになる

プロジェクト「スコープ」マネジメント(原田 桂一)

講義概要 新しくプロジェクトを立ち上げる際にまずしなければならないことは何でしょうか。プロジェクトは種々のバックグラウンドを有する「寄せ集めメンバー」の状態から始まります。例えば、医療機関で臨床研究を実施するような事例では、診療科の他にも看護部、検査部、薬剤部、事務部など専門性や日常の業務の進め方が異なるメンバーの協力を得て実施する場合が多いでしょう。このようなメンバーで構成されるプロジェクトが最終的に成功するためには、最初の段階で、「何のために我々は集まっているのか」、「何を達成したらこのプロジェクトは成功といえるのか」というプロジェクトの目的・目標をしっかり共有していることが非常に重要です。つまりプロジェクトの成功のためにはどんな成果物が必要で、そのためにどんな作業をするのか。これらを洗い出し、このプロジェクトにおいて何が必要で何が不必要なのかを定義してから進めることがポイントです。ここが曖昧なままスタートしてしまうと、あとになって混乱を来たし、場合によってはプロジェクト自体が崩壊してしまうことも決して少なくありません。本講義では、医薬品開発や臨床研究の現場での具体的な事例を紹介しながら、プロジェクトのスコープに関するマネジメントについて習得します。

講義内容
○プロジェクト・スコープ・マネジメント概要
○プロジェクト計画プロセスにおけるスコープマネジメント
「スコープマネジメント計画書」「スコープ定義」「作業分解図(WBS)」
○プロジェクト監視プロセスにおけるスコープマネジメント
「スコープ妥当性確認」「スコープコントロール」について

達成項目
○計画段階におけるスコープマネジメントについて理解し、プロジェクト立ち上げ時に必要な、スコープ定義、プロジェクト計画の具体化が出来る様になる
○プロジェクト監視段階におけるスコープマネジメントについて理解し、実行時における確認、コントロールが適切に実施することが出来る。

プロジェクトタイムマネジメント(佐藤 隆)

講義概要 プロジェクトは「有期性のある(期間が決まっている)業務」なので、プロジェクト計画を作成し、その計画に従ってプロジェクトを開始し、かつ完了させなければなりません。
プロジェクトの計画段階では、アクティビティを適切に設定し、必要な人員、コスト及び期間を正確に見積り、制約条件を考慮して実行可能性の高い計画を立案する必要があります。さらに実現可能性の高いプロジェクト計画を立案しても、実行段階での状況変化により計画の変更を余儀なくされることもあります。これらに、適時適切に対応できることは、プロジェクト運営には欠かせないスキルのひとつです。
また、「自分の時間」をマネジメントすることにより「自分の仕事」をマネジメントできるようになり、「自分の仕事」をマネジメントできて初めてプロジェクトをマネジメントできるといわれています。
本講義では、医療機関で臨床研究を計画・実行する場合等を事例として、プロジェクト計画の立案方法を理解することにより、実行可能性のプロジェクト計画の立案を目指します。また、プロジェクトに実行、監視・コントロールにおいて適時適切にプロジェクト計画を変更管理できるようになることを目指します。

講義内容
○プロジェクト・タイム・マネジメントとは何か?
○プロジェクトの各プロセスにおける知識、ツールの活用
○自分の時間のマネジメントからプロジェクトマネジメントまで

達成項目
○実行可能性の高いプロジェクト計画の立案を意識した活動ができるようになる
○自分の時間のマネジメントを意識した活動ができるようになる

プロジェクト「コスト」マネジメント,プロジェクト「調達」マネジメント(今野 浩一)

講義概要 プロジェクトを運営する際には,(1)スコープ・品質,(2)時間,(3)資源(ヒト・モノ・カネ)の3つの要素を管理することが重要です。これらは,プロジェクトの3大制約要素と呼ばれており,相互に影響し合うものです。このうち,(3)資源を管理するプロセスが,「プロジェクト・コスト・マネジメント」になります。コストは計画段階でアクティビティごとに見積りを行い,時間軸に沿って集約したものがコストベースラインになります。コストを「費用」としてのみ見るのではなく,(1)スコープ・品質や(2)時間に影響を及ぼす「投資」として捉えることも重要です。一方,「プロジェクト・調達・マネジメント」は,コストベースラインに沿って,必要なタイミングで利用可能な資源を効率的に獲得するプロセスになります。資源が限られている以上,コストを適切に見積り,アクティビティの進行状況に応じて調達のタイミングをコントロールしないと,効率的なプロジェクト進行の妨げとなる場合があります。本講義では、医薬品開発や医療機関での臨床研究等の具体的な事例を参考にして、プロジェクトのコストと調達に関するマネジメントについて習得します。

講義内容
○プロジェクト・コスト・マネジメント概要
○プロジェクト・調達・マネジメント概要
○プロジェクト計画プロセスにおけるコストマネジメントと調達マネジメント
「コストマネジメント計画書」「コスト見積り」「コストベースライン」
「調達マネジメント計画書」「調達作業範囲記述書」「調達文書」「発注先選定基準」
○プロジェクト実行プロセスにおける調達マネジメント
「選定納入者」「合意書」
○プロジェクト監視・コントロールプロセスにおけるコストマネジメントと調達マネジメント
「作業パフォーマンス情報」「コスト予測」「プロジェクトマネジメント計画書(更新版)」
○プロジェクト終結プロセスにおける調達マネジメント
「完了済み調達」「組織のプロセス資産(更新版)」

達成項目
○計画段階におけるコストマネジメントと調達マネジメントについて理解し、プロジェクト立ち上げ時に必要な、「コストマネジメント計画書」「コストベースライン」「調達マネジメント計画書」「発注先選定基準」の具体化が出来る様になる。
○プロジェクト監視・コントロール段階におけるコストマネジメントと調達マネジメントについて理解し、実行時における確認、コントロールが適切に実施することが出来る。

ワークショップ2 タイムマネジメント(佐藤 隆)

講義概要 プロジェクト・タイム・マネジメントでは、プロジェクトを計画する方法、計画したプロジェクトの進捗をマネジメントする方法および自分とチームの時間をマネジメントする方法等について解説しています。
本講義では、医薬品開発や臨床研究の事例をプロジェクト活動のモデルとして、実際にプロジェクト計画を立案することを体験します。また、立案したプロジェクト計画の進捗状況に応じたプロジェクト計画の変更方法等についても検討する予定です。
また、これらのワークを通じてプロジェクト計画の立案方法、プロジェクト実行中の進捗管理や変更管理に関するスキルを身につけることを目指します。

講義内容
○プロジェクト計画の立案
○プロジェクトの進捗管理
○プロジェクト計画の変更管理

達成項目
○プロジェクトの実行計画を立案するための基礎的なスキルを身につける
○プロジェクトの進捗管理の手法を身につける
○プロジェクト計画の変更管理の基礎的なスキルを身につける

プロジェクト「品質」マネジメント(住田 秀司)

講義概要 プロジェクトを運営する際には,(1)スコープ・品質,(2)時間,(3)資源(ヒト・モノ・カネ)の3つの要素を管理することが重要です。これらは,プロジェクトの3大制約要素と呼ばれており,相互に影響し合うものです。このうち,(1)品質を管理するプロセスが,「プロジェクト・品質・マネジメント」になります。品質は計画段階で品質方針,品質目標および責任者を定め,それらを達成するためのプロセスです。品質マネジメントの基本は,品質管理の国際標準モデルであるISO9001と整合が図られ,顧客満足,検査より予防,継続的改善,経営者の責任を重要と位置付けています。
一方、近年では臨床研究や医薬品開発の品質について、基本に立ち返って問い直さなければならないような事例があります。本講義では、医療機関で臨床研究を実施する場合や医薬品開発を進める場合などの事例を検討しながら、プロジェクトの品質に関するマネジメントについて習得します。

講義内容
○プロジェクト・品質・マネジメント概要
○プロジェクト計画プロセスにおける品質マネジメント
「品質マネジメント計画書」「プロセス改善計画書」「品質尺度」「品質チェックリスト」
○プロジェクト実行プロセスにおける品質マネジメント
「プロジェクトマネジメント計画書(更新版)」「プロジェクト文書(更新版)」
○プロジェクト監視・コントロールプロセスにおける品質マネジメント
「品質管理測定結果」「妥当性確認済み変更」「検査済み要素成果物」

達成項目
○計画段階における品質マネジメントについて理解し、プロジェクト立ち上げ時に必要な、品質マネジメント計画やプロセス改善計画の具体化が出来る様になる
○プロジェクト実行段階における品質マネジメントについて理解し、品質検査結果に基づく、
プロジェクトマネジメント計画書やプロジェクト文書の変更を実施できるようになる
○プロジェクト監視・コントロール段階における品質マネジメントについて理解し、実行時における確認、コントロールが適切に実施することが出来る。

プロジェクト「ステークホルダー」マネジメント(今野 浩一)

講義概要 プロジェクトには多くの利害関係者(ステークホルダー)がそれぞれの役割・期待をもって参加します。そして、ステークホルダーの所属・立場や利害・関心が多種多様であるほど、プロジェクトは複雑化し、意思決定や問題解決は困難になります。プロジェクトの成功には、ステークホルダーの期待とプロジェクトへの影響力を分析し、ステークホルダーがプロジェクトの意思決定や実行に効果的に関与できるようなマネジメント戦略を策定することが非常に重要です。
また、課題が発生した場合はそれに対処し、相反する利害を適切にマネジメントすることによってステークホルダーとの継続的なコミュニケーションを維持することが重要です。
医薬品開発や臨床研究においても、患者さんをはじめとして、患者さんの家族、医師、看護師、検査技師、薬剤師、IRB委員、製薬企業、CRO、規制当局(PMDA)等の多数のステークホルダーが関係しています。本講義では、プロジェクト活動におけるこれらのステークホルダーとの関係性の構築と維持に関するマネジメントについて学習します。

講義内容
○プロジェクト・ステークホルダー・マネジメント概要
○プロジェクト立ち上げプロセスにおけるステークホルダーマネジメント
  ステークホルダー特定
  ステークホルダーマネジメント計画
○プロジェクト計画プロセスにおけるステークホルダーマネジメント
  コミュニケーション計画への反映
○プロジェクト監視プロセスにおけるステークホルダーマネジメント
  ステークホルダー・エンゲージメント・マネジメント
  ステークホルダー・エンゲージメント・コントロール

達成項目
○立ち上げ段階におけるステークホルダーマネジメントについて理解し、プロジェクト立ち上げ時に必要な、ステークホルダー特定、分析を行い、ステークホルダーに対する関係構築計画の立案が出来るようになる
○プロジェクト監視段階におけるステークホルダーマネジメントについて理解し、実行時におけるステークホルダーとの関係の維持ができるようになる

プロジェクト「人的資源」マネジメント(塚本 淳)

講義概要 プロジェクト・人的資源・マネジメントはプロジェクトチームを組織化し、マネジメントするプロセスです。
人的資源マネジメントは、人的資源マネジメント計画、プロジェクトチーム編成、プロジェクトチーム育成、プロジェクトチームマネジメントの、4つのプロセスがあります。
プロジェクトマネジャーは、プロジェクトを成功させるために必要な人員とスキルを見積もり、母体組織や外部から必要な人員を調達します。 また、人員に必要なスキルがない場合は育成することもあります。
本講義では、医薬品開発や臨床研究の計画・実行等をプロジェクト活動の事例として検討しながら、人的資源マネジメントの基本プロセスについて学習します。

講義内容
○プロジェクト・人的資源・マネジメント概要
○プロジェクト計画プロセスにおける人的資源マネジメント
  人的資源マネジメント計画の立案
  プロジェクト要員の任命
○プロジェクト監視プロセスにおける人的資源マネジメント
  プロジェクトチーム育成
  プロジェクトチームマネジメント

達成項目
○計画段階における人的資源マネジメントについて理解し、プロジェクト立ち上げ時に必要な、人的資源計画を作成できるようになる。
○チーム育成とマネジメントの基本プロセスについて理解し、その一部を実際のチーム活動において実践出来るようになる

プロジェクト「コミュニケーション」マネジメント(佐藤 隆)

講義概要 プロジェクト・コミュニケーション・マネジメントはプロジェクトを成功させるために、人と情報を結びつけるマネジメントプロセスです。チーム内の会議をどのような頻度で実施するか、参加メンバーは誰なのか、他の関連組織にはどのような情報をどのような形で提供するのかなどを、効果性と資源配分の側面から規定します。また、すべてのステークホルダーに対しても連絡調整を行い、メッセージを誰に、どのくらいの頻度で発信すべきかを決定し、順守することが重要です。

本講義では、医薬品開発や臨床研究の現場で身近にある場面を事例として、プロジェクト活動におけるコミュニケーションマネジメントの基本プロセスについて学習します。

講義内容
○プロジェクト・コミュニケーション・マネジメント概要
○プロジェクト計画プロセスにおけるコミュニケーションマネジメント
  コミュニケーションマネジメント計画の立案
○プロジェクト監視プロセスにおけるコミュニケーションマネジメント
  コミュニケーション・マネジメント
  コミュニケーション・コントロール

達成項目
○計画段階におけるコミュニケーション・マネジメントについて理解し、プロジェクト立ち上げ時に必要な、コミュニケーション要求事項を分析し、ステークホルダーに対するコミュニケーション計画の立案が出来るようになる
○プロジェクト監視段階におけるコミュニケーションマネジメントについて理解し、実行時におけるステークホルダーとのコミュニケーションの維持ができるようになる

Global Communication in Drug Development(塚本 淳)

講義概要 医薬品開発における「グローバル化」は目を見張るものがあり、従来の欧米先行型開発から世界同時開発に大きく舵を切っているのは周知の通りです。このような環境下では、「いかにしてある特定の地域の利益を優先するか」といった考え方は通用せず、「いかにしてそれぞれの構成要素が全体最適に貢献するか」の視点が重要です。また、グローバルであることは多様な環境下で仕事をすることになりますが、多様であることはさまざまな可能性がある一方で、ほっておくとやはり非効率化の原因となります。この講義では、グローバルで仕事をし、その環境下で目的を達成するために何が必要かを理解します。

講義内容
○グローバルで仕事をするとは?
○コミュニケーションのワナ
○マインドセット
○多様な価値観
○医薬品開発で特に留意すべきこと

達成目標
○グローバルで業務をする際に日本人が陥りやすいポイントについて理解し、それを避けることで効率的に業務を遂行することが出来るようになる。
○日本人の強みについて理解し、それを活用することが出来る様になる。
○多様性の高い集団で留意すべきすることを理解し、それを活用することで効果的にグローバルプロジェクトを遂行することが出来る様になる。

プロジェクト「リスク」マネジメント(原田 桂一)

講義概要 プロジェクト・リスク・マネジメントは、プロジェクトに関するリスクのマネジメントの計画、特定、分析、対応、コントロールなどの実施に関するプロセスです。
プロジェクト・リスク・マネジメントの目標は、プロジェクトにおけるプラスとなる事象の発生可能性と影響度を増加させ、マイナスとなる事象の発生可能性と影響度を減少させることです。

本講義では、医薬品開発や臨床研究の計画・運営をプロジェクト活動のひとつとして捉えて検討しながら、リスクマネジメントの基本プロセスについて学習します。

講義内容
○プロジェクト・リスク・マネジメント概要
○プロジェクト計画プロセスにおけるリスクマネジメント
  リスク特定
  定性的リスク分析
  定量的リスク分析
  リスク対応計画
○プロジェクト監視プロセスにおけるリスクマネジメント
  リスクコントロール

達成項目
○計画段階におけるリスクマネジメントについて理解し、プロジェクト立ち上げ時に必要な、リスクマネジメント計画を作成できるようになる。
○定性的リスク分析、リスク対応計画の作成プロセスについて理解し、実際のプロジェクト活動において実践出来るようになる

ワークショップ3 プロジェクトチャーター作成(岩崎 幸司・今野 浩一・塚本 淳)

講義概要 プロジェクトの詳細計画を立案する前に、プロジェクト計画の重要な要件を明確にするプロジェクトチャーターを作成する必要があります。
本講義では、これまで学習した内容を振り返りながら、医療機関における臨床研究の計画・実施をプロジェクト活動のモデル事例としてプロジェクトチャーター(プロジェクトの全体像を示すもの)を実際に作成することにより、PMツールを活用できるようになることを目指します。

実施要領
5〜6名のグループに分かれ以下の成果物を作成し、それらの情報を統合して、プロジェクトチャーターを作成します。また、作成終了後に、各チームの成果を発表し、種々の考え方を共有します。
○プロジェクトチャーター
○スケジュール
  ネットワークダイアグラム
○リスク分析
○コミュニケーション計画

達成項目
○プロジェクト立ち上げ時に必要な、プロジェクトチャーターと付属資料を作成できるようになる。
○プロジェクト計画における、主要問題点や重要なリスクを特定し、対策を講じることができるようになる。

医療情報から得られるデータ(松村 泰志)

講義概要  ビッグデータというキーワードが注目されるようになり、医療においてもビッグデータへの期待感が高まっている。本講義では、医療におけるビッグデータとは具体的に何を指すのか、そのデータを活用することでどのような可能性があるのか、現状の課題は何かについて概説する。
 医療情報の電子化は、医療へのコンピュータ利用と並行して進んできた。1970年代の医事会計システムの開発から端を発し、1980年代にはオーダエントリシステム、1990年代にはPACS、2000年代から電子カルテが開発導入されるようになった。病院における医療情報は、伝票類、医用画像、診療記録に大別できるが、これら全てをコンピュータ管理する体制をとる病院が増えている。我が国では、医療施設内のシステム化は、大規模病院が牽引してきたが、中小病院、診療所でも同様の流れが進みつつある。また、健診、人間ドックの機関においても、健診記録結果は、どの施設でもコンピュータ管理されている。介護施設は、他と比べるとやや遅れているが、システム化へのニーズは大きく、徐々にコンピュータ利用が浸透してきている。こうした各医療施設でのシステム化は、その施設において業務を効率化させることを主目的としているが、結果的に、医療データはデータベースで管理されることとなった。
 電子化されている医療情報は、病院では、医事会計データ、処方、検査等のオーダデータ、実施記録、検査レポート、医用画像、初診時記録・経過記録、退院時サマリ、手術記録、看護記録等である。健診施設では、検査結果、医用画像が、介護施設では、介護記録が主なデータとなる。
 最近注目を集めているゲノム情報は、基本的にはこの中には含まれない。各個人のゲノム解析データは、研究として実施されており、匿名化されて、どの個人のものか分からない状態で管理されている。しかし、ゲノム情報と臨床データとの連携は、ゲノム研究では必須であり、臨床データをどのようにゲノム情報と連結させるかは、重要な課題となっている。
 こうした医療情報が電子化され蓄積されるようになり、これを解析することで、医療の実態評価や各治療法の評価ができ、過去データを学習することで、診断や精度の高い予後予測が可能になると期待されている。薬については、現実の医療における有効性、各種副作用の発生率の評価が可能となり、探索的研究により、未知な効果を発見することにも期待が寄せられている。ゲノム解析との連結により、有効性、副作用発生の個体差を説明する因子の発見、個人に合った医療を選択する個別化医療に対し期待が寄せられている。
 一方、現状では、医療データの解析には様々な課題がある。レセプトデータ、DPCデータ以外は、各施設に蓄積されるデータを集約して管理する組織体制が確立されていない。各施設のデータは、データ構造、コード体系が異なるので、これを標準形式に変換して収集する必要があるが、まだ、その方法が確立できていない。また、医療機関毎に個人識別IDが発番されるので、データを集約しても同一個人と認識できない課題がある。また、同じ疾患群でも、収集しているデータ項目、タイミングが異なっており、観察研究には耐えられる品質の高いデータセットとならない問題もある。こうした課題が解決されると、本来の期待されるビッグデータとなる。現状では、プロジェクト毎に必要な課題を解決させて、データ利用を進めている。

遺伝統計学に基づいたゲノム創薬(岡田 随象)

講義概要 遺伝統計学とは、遺伝情報と形質情報の関わりを統計学の観点から研究する学問分野である。ゲノム配列解読技術の著しい発達により、膨大なゲノムムデータが得られる時代が到来している。一方で、一次的に処理されたゲノム情報を適切に解釈し、社会還元するためのデータ解析学問へのニーズが高まっており、遺伝統計学の重要性が認識されている。

がんゲノムシークエンス解析(藤本 明洋)

講義概要 近年のDNAシークエンス技術の著しい発展により、全ゲノムや全エクソンを対象とした変異探索が可能となった。ゲノム変異により引き起こされる疾患である、がんについても、発がんメカニズム解明と治療標的の発見を目指した網羅的変異解析が行われている。本講義では、ゲノムシークエンスデータの解析のバイオインフォマティックスについて、基礎から最新の知見を紹介する。

血圧管理におけるPHR(在宅計測データ)の重要性と将来展望(志賀 利一)

講義概要 今後の少子高齢化社会において脳卒中・心筋梗塞などの脳・心血管イベントにともなう重度の寝たきり・介護の問題は、経済的かつ精神的負担が極めて大きいことから重要かつ喫緊の課題である。この対策のために最も重要なのが高血圧対策であることは近年の様々なエビデンスが示す通りである。血圧は運動・睡眠・栄養などの生活習慣に加え、気温・ストレスといった様々な要因により変化する。そのため日常的に血圧を計測することが何よりも重要となる。
本講では血圧を中心として日常的な計測の重要性またそれを生かしてどう高血圧を対策していくかなど将来の展望についても述べたい。

DPCデータからの解析(中村 正樹)

講義概要 DPCデータの内容、DPCデータを用いた分析事例として、病院側での経営支援における活用状況や、製薬企業におけるデータ分析事例について実例を用いて説明します。

モバイルヘルスの臨床試験分野への応用(山本 武)

講義概要 健康、医療の分野において通信・連携が可能なウェアラブルデバイスの利用が急速に広がる中で、それらは個人の健康管理や医療機関での活用のみならず、製薬企業や医療機器の開発の分野においても応用が進んでいる。
睡眠状態や痛み等の患者の曖昧な記憶や主観的な判断に依存せざるを得なかった検査が、ウェアルブデバイスから生成されるデータに置き換わることで、有効性や安全生が客観的で確からしいデータにより評価されるようになる等、患者が身につけるウェアラブルデバイスが生成するビッグデータが新薬や新医療機器の開発を大きく革新させ始めた。本講義では、今後も更なる発展的な活用が期待されるウェアラブルデバイスを用いた臨床試験の将来像等を具体的な事例を用いながら解説する。

副作用データベースからのシグナル検出(相馬 聡)

講義概要 医薬品と因果関係が疑われる副作用を検出する手法の一つにシグナル検出がある。2005年にICH E2E(医薬品安全性監視計画)で手法として紹介され、2012年にはGVP module IX(Signal management)というガイダンスが公開された。FDA、MRHAなどの海外規制当局ではこういった手法を用いて副作用データベースを検索し重大な健康被害を引き起こす恐れのある副作用が適切に添付文書に反映されているか監視を行っている。この講義では、海外での規制の動向およびFDA、MHRAなどの海外規制当局で使われているツールを中心に解説する。

規制当局における電子診療情報の活用−市販後の医薬品安全対策における取り組みの紹介−(駒嶺 真希)

講義概要 本講義では、電子診療情報を用いた医薬品の市販後安全対策の概要・役割・意義を理解することを目的とする。
日本の規制当局における活用事例を紹介すると共に、薬剤疫学手法の概要やデータソースの特徴、また、PMDAが行っている医療情報DB基盤整備事業についても説明する。

メディカルアフェアーズ(MA)とは ①MAの業務とは(ダニエル・ルジチカ)

講義概要 This lecture will give a brief introduction to the Medical Affairs department in general. Topics include the history of Medical Affairs, Definition of Medical Affairs and why it is needed in modern pharmaceutical companies. Also many companies have slightly different setups, and roles and responsibilities might differ a little. In the end there will be a short discussion around the future outlook of Medical Affairs.

メディカルアフェアーズ(MA)とは ②製薬企業におけるMAの位置付け(三原 華子)

講義概要 昨今、本邦においてメディカルアフェアーズ(MA)部門を設置する製薬企業が増加している。MAの主要な役割は医学/科学的な観点からの製品価値の至適化であり、その業務の範囲は、Medical Planの策定、実施、コールセンター対応などのメディカルインフォーメション業務、販促資材、講演スライドのレビュー、KOLマネジメント、研究者主導臨床研究に関する業務等、多岐に渡る。また、MAは企業の研究開発とアカデミア及び臨床現場の間の橋渡しを行う重要な役割をも担う。中でも、高度な医学/科学知識を基に医師と意見交換を行うメディカルサイエンスリエゾン(MSL)はその“橋渡し”を主業務とし、近年注目されている職種である。
本講では、製薬企業におけるMAの位置付けに関して議論したい。

メディカルアフェアーズ(MA)とは ③MAの社内外での役割(岩本 和也)

講義概要 昨今、本邦においてメディカルアフェアーズ(MA)部門を設置する製薬企業が増加している。MAの主要な役割は医学/科学的な観点からの製品価値の至適化であり、その業務の範囲は、Medical Planの策定、実施、コールセンター対応などのメディカルインフォーメション業務、販促資材、講演スライドのレビュー、KOLマネジメント、、研究者主導臨床研究に関する業務等、多岐に渡る。また、MAは企業の研究開発とアカデミア及び臨床現場の間の橋渡しを行う重要な役割をも担う。中でも、高度な医学/科学知識を基に医師と意見交換を行うメディカルサイエンスリエゾン(MSL)はその“橋渡し”を主業務とし、近年注目されている職種である。
本講では、医薬品のライフサイクルマネジメントにおいて、社内および社外の双方においてMAに求められている役割に関して議論したい。

グループワーク(岩本 和也・岩崎 幸司・冨安 美千子)

講義概要 本講では、製薬企業においてメディカルアフェアーズが存在する意義、役割に関してグループワークを通して学習する。

MAの誕生(井上 陽一)

講義概要 メディカル・アフェアーズの活動については10月15日の講義で説明した。
メディカル・アフェアーズによる活動が海外で必要となった背景を理解することで、メディカル・アフェアーズに対する理解を深める。

COI & Compliance(井上 陽一)

講義概要 メディカル・アフェアーズの活動が、製薬企業のみならず、医療従事者からも必要とされる理由を利益相反(Conflict of Interest)や法令遵守(Compliance)を通じつつ解説する。

アドバイザリーボード(井上 陽一)

講義概要 メディカル・アフェアーズの主要な活動の一つであるアドバイザリーボードミーティングの実践を学ぶ。そして、メディカル・アフェアーズ活動が守るべきルールやその背景を理解し、他のメディカル・アフェアーズの活動のあるべき姿も理解できるようにする。

グループワーク(井上 陽一)

講義概要 実際に、アドバイザリーボードを与えられたテーマで各グループごとに企画していく。そのなかで生じる様々な問題に対して対処策を検討し、メディカル・アフェアーズについての理解を深め、実践につなげていく。

Data Generation & Communication(臨床でのエビデンス創出)(岩崎 幸司 / 松山 琴音)

講義概要 メディカルアフェアーズ(MA)が担当する業務は多岐にわたりますが、臨床的なエビデンスの創出とそれらのエビデンスに基づく医科学的な情報交換についても重要なMA機能のひとつです。
医療用医薬品は、薬機法上の製造販売承認を取得してからより多くの患者さんに適用されるようになり、これに伴って多くの安全性及び有効性に関する情報が集積されていきます。このように日常診療下で集積される情報も大切ですが、臨床研究という手法を活用して、これらの事象を一般化して広く説明可能な情報とすることも重要です。
本講義では、臨床研究概論において、臨床研究を取り巻く環境、MA機能のひとつとしての臨床研究の位置付け、規制要件、臨床研究の種類及び分類等について概説したのち、臨床研究各論において、日常臨床における素朴な疑問(クリニカルクエスチョン;CQ)を構造化して、リサーチクエスチョン(RQ)を作成し、RQに答えるための臨床研究計画(プロトコル;PRT)骨子作成までの一連のプロセスを解説するとともに、立案した臨床研究の実施上の留意点、特に臨床研究としての「質」のマネジメント、実施上のリスクのマネジメントについても解説します。また、臨床研究を立案する際に重要な「出口戦略」、論文化に関連するルール及び臨床研究を批判的に吟味する手法に加えて、創生したエビデンスに基づく医科学的情報の交換についても解説します。その上で、CQからRQを作成し、仮説を検証する手法としての臨床研究計画の立案について、演習により具体的な手法を習得することを目指します。

講義内容
○臨床研究概論
 −臨床研究を取り巻く環境とMA機能におけるエビデンス構築の位置づけ
 −臨床研究の分類、臨床研究に関する規制要件、ガイドライン
○臨床研究計画の立案
 −クリニカルクエスチョン(CQ)からリサーチクエスチョン(RQ)、臨床研究計画(PRT)の
  作成
○臨床研究のオペレーション
 −臨床研究の「質」の確保、臨床研究の実施におけるリスクのマネジメント
○臨床研究の「出口戦略」
 −Publication Ethics、Publication Strategy
○医科学的情報の交換
 −Continuous Medical Education

達成項目
○医科学的エビデンスの創出をMAが担う意義を説明できるようになる
○臨床研究を立案、実施し、結果を論文化するためのプロセスを理解する
○エビデンスに基づく医科学的情報の交換について理解する

Medical scientific liason (MSL) ①MSLの活動(向井 陽美)

講義概要 近年メディカルアフェアーズ(MA)部門の職種としてMedical Scientific Liaison(MSL)が注目され配属人数も増加してきている。一方でMSLの認知度はあまり高くなく、医薬情報担当者(Medical Represenatative; MR)との違いを明確に理解されていない状況におかれている。
ユニークな作用機序の分子標的薬や生物製剤が増加する中で、高い医科学的な専門性を持つMSLへのニーズは今後も増えるであろう。また、自社製品の販売高で評価されていたMRと違い、他社製品への理解、治療域全体の研究動向や開発動向、安全性に関する知識を持ち、医療従事者と十分な議論ができるMSLは自社だけでなく、広く医学に貢献していくものと期待される。
本講義では、MSLとは何か、求められるrole and responsibility、MA部門におけるMSL、MRとは何が違うのかを中心に解説する。

講義内容
 1)MSLとは何か
 2)MA部門の業務とMSLの関係
 3)MRとの違い
 4)海外のMSLと日本のMSL
 5)MSLに求められるもの

達成項目
 ◯ MSLの役割が説明できるようになる
 ◯ MRとの違いを理解する
 ◯ MSLの主たる業務を理解する

Medical scientific liason (MSL) ②MSLの活動・求められる要件や専門性(冨安 美千子)

講義概要 Medical scientific liason (MSL)?MSLの活動・求められる要件や専門性
TL Engagement 、Insight・UMNsとは
MSLの教育プランの策定概要

先の講義までに製薬企業の中でのメディカルアフェアーズ(MA)の位置づけや役割、その業務について一通り学習されたと思います。
MA部門にはメディカルサイエンスリエゾン(MSL)と呼ばれる職種があります。最近注目されている職種でもありますが、MSLは主に社外での医学専門家、研究者等との医学的・科学的な議論を通じてMA部門の業務に大いに貢献しています。
本講義ではそのMSLがMAの中で実際にどのような活動を行っているか、それらがどうMA部門の業務達成に貢献しているか、またMSLとして必要な要件や専門スキルとはどのようなものかを理解していきます。更に各社で始められているMSL認定カリキュラムについて考えていきます。

・ノンプロモーショナルスタンスでのMSL活動
・MSLに必要な要件・専門知識
・MSLが外部の医学専門家から収集するMedical Insight及びUnmet Medical Needsとは、
 また収集方法基本
・MSLの教育プラン作成概要

Medical scientific liason (MSL) ③MSL認定 MSL第三者認証経験をふまえて(柴 英幸)

講義概要 ・MSLの人材・専門性を担保するための認定制度とは
・MSL認定のプログラムとそのプロジェクトマネージングについて
・第三者認証の重要性、社内でのコンセンサス

グループワーク

講義概要 ・各グループ毎に与えられた疾患領域と条件、周辺環境を基にMedical Planを作ってみる 

ワークショップ:臨床薬理試験のプロトコールを書いてみよう!(Day 1)(中野 真子)

講義概要 (概要)
これまでに学んだ臨床薬理試験についての知識を使って、臨床薬理試験をデザインし、プロトコールを書いてみましょう。2日間で、臨床薬理試験の細かいところまで踏み入ります。

臨床薬理試験の例:
A.製剤間をつなぐ試験
B.海外Phase 1試験終了後の日本のPhase 1試験
C.FIH (first in human)試験

実際の薬剤又は架空の薬剤シナリオを提供します。グループに分かれ、その情報を使って実際に臨床薬理試験をデザインし、プロトコールの主な部分を書きます。
ワークショップは3つテーマに分けて実施します。それぞれ、ミニ講義の後、グループに分かれて作業し、グループ発表と議論をします。質問や議論をする中で、実践的な面を含めて更に臨床薬理について学びますが、多くのポイントは後期相試験でも役に立つでしょう。

ワークショップの3つテーマ:
ワークショップ1: 治験の目的と大まかなデザイン
試験の目的を書きあげ、試験の大まかなデザインを決めます。プロトコールに挿入する試験デザインの図を作り、試験デザインの説明を書きます。評価項目の詳細については、ワークショップ2で扱います。

ワークショップ2: 治験の評価項目とスケジュール
臨床薬理試験の具体的なデザインの根幹になる、評価項目のスケジュール表を作ります。この過程で、どのような評価項目を含めるべきか、評価項目実施のスケジュール、評価項目間の調整(タイムマッチ、同じ時点で実施する複数の項目をどのように実施するか)なども学びます。

ワークショップ3: 対象集団
臨床薬理試験特有の対象集団について理解し、選択基準・除外基準を具体的に書いていきます。それぞれの基準についての目的や考え方を議論します。

Day 1ではワークショップ2の途中まで実施し、残りはDay 2で実施する予定です。

【11/19】1-4限分(山口 拓洋/林 千尋/鷲見 菜月/小居 秀紀)

講義概要 (概要)
市販後のエビデンス創出につながる臨床試験の実施計画書(概要)を模擬的に作成することを通して、実施計画書作成のプロセスや実施計画書上の目的・実施意義、それぞれの記載項目の関係の理解を深めることを目指します。さらに、その前提、背景となる市販後に実施する臨床試験の必要性、実施意義の理解を目指します。

(講義内容)
○市販後に実施する臨床試験の必要性、実施意義
○実施計画書作成のプロセス
○実施計画書の各記載項目の関係

(達成項目)
○市販後に実施する臨床試験の必要性、実施意義を説明できる
○実施計画書作成のプロセスを説明できる
○実施計画書の各記載項目の関係を理解する

ワークショップ:臨床薬理試験のプロトコールを書いてみよう!(Day 2)(中野 真子)

講義概要 (概要)
これまでに学んだ臨床薬理試験についての知識を使って、臨床薬理試験をデザインし、プロトコールを書いてみましょう。2日間で、臨床薬理試験の細かいところまで踏み入ります。

臨床薬理試験の例:
A.製剤間をつなぐ試験
B.海外Phase 1試験終了後の日本のPhase 1試験
C.FIH (first in human)試験

実際の薬剤又は架空の薬剤シナリオを提供します。グループに分かれ、その情報を使って実際に臨床薬理試験をデザインし、プロトコールの主な部分を書きます。
ワークショップは3つテーマに分けて実施します。それぞれ、ミニ講義の後、グループに分かれて作業し、グループ発表と議論をします。質問や議論をする中で、実践的な面を含めて更に臨床薬理について学びますが、多くのポイントは後期相試験でも役に立つでしょう。

ワークショップの3つテーマ:
ワークショップ1: 治験の目的と大まかなデザイン
試験の目的を書きあげ、試験の大まかなデザインを決めます。プロトコールに挿入する試験デザインの図を作り、試験デザインの説明を書きます。評価項目の詳細については、ワークショップ2で扱います。

ワークショップ2: 治験の評価項目とスケジュール
臨床薬理試験の具体的なデザインの根幹になる、評価項目のスケジュール表を作ります。この過程で、どのような評価項目を含めるべきか、評価項目実施のスケジュール、評価項目間の調整(タイムマッチ、同じ時点で実施する複数の項目をどのように実施するか)なども学びます。

ワークショップ3: 対象集団
臨床薬理試験特有の対象集団について理解し、選択基準・除外基準を具体的に書いていきます。それぞれの基準についての目的や考え方を議論します。

Day 2では、Day 1の続きからワークショップ2を実施する予定です。時間があれば、ワークショップ1〜3で取り上げなかった、プロトコールのその他の部分についても議論をします。

【12/3】1-4限分(鷲見 菜月/小居 秀紀)

講義概要 (概要)
臨床試験の実施と管理に必要なデータの収集と記録の方法、症例/データの取り扱いの概要の理解を目指します。さらに、市販後に実施する臨床試験全体を通して、必要とされる信頼性の確保と適切な進捗管理の両面を実現した臨床試験を実施・運営できるような知識と技術の習得を目指します。

(講義内容)
○データの収集と記録の方法、症例/データの取り扱い
○市販後に実施する臨床試験の実施と運営

(達成項目)
○データの収集と記録の方法、症例/データの取り扱いを理解する
○市販後に実施する臨床試験を実施・運営できる/臨床試験の実施・運営を支援できる

新難病制度について(金谷 泰宏)

講義概要 平成26年に成立した「難病の患者に対する医療等に関する法律」に従って、希少疾患や難病の医療や調査研究について様々な制度の変更がありました。この講義では新たな制度の概要について説明し、医療支援に連携した調査研究の更なる推進のあり方や、これまでに行われてきた各種の研究開発と今後の新制度下での発展について紹介します。

AMED難病研究課における取り組み(中村 勝)

講義概要 1.はじめに
本邦における医療研究分野において、基礎研究の成果が医薬品や医療機器、診断技術などの開発に効果的に結びついていないことがこれまで指摘されてきました。基礎研究成果の展開に関するマネジメントの課題、臨床研究における研究支援体制の課題、国が行ってきた縦割りの研究支援がもたらす弊害などが原因として挙げられています(「医療分野研究開発推進計画」(平成26年7月22日))。日本医療研究開発機構(AMED)は医療分野の研究開発および環境整備の中心的な役割を担う機関として2015年4月1日に発足しました。その基本的ポリシーは、「医療分野の研究成果を一刻も早く実用化し、患者さんやご家族のもとにお届けすること」です。これまでは研究助成は各省庁で別々に施行してきましたが、AMEDでは文部科学省、厚生労働省、経済産業省で行われてきた研究開発の予算を集約し、医療分野の基礎研究から実用化まで切れ目無く支援することで、基礎研究成果がより効果的に医薬品等の開発につながることを目指しています。
AMEDで所管する事業の一つに難治性疾患実用化研究事業があり、難病に関する研究支援を行っています。本稿では本事業を中心にAMEDが行っている難病に対する取り組みについて説明します。

2.難病研究に対する国の取り組み
2015年1月1日から「難病の患者に対する医療等に関する法律」が施行され、難病医療費助成制度の対象となる指定難病が56疾病から110疾病へ増えました。現在は306疾病が指定難病となっており、国も難病対策に力を注いでいます。この法律では、難病に関する調査研究に関する事項および難病に係る医療のための医薬品及び医療機器に関する研究開発の推進に関する事項が定められており、難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針が含まれています。現在厚生労働省健康局難病対策課で難治性疾患政策研究事業を所管しており、難病を対象に、実態調査やガイドライン作成などを行う研究班の助成を行っています。

3.難治性疾患実用化研究事業
難治性疾患実用化研究事業は2015年にAMEDへ移管されています。本事業は、「発病の機構が明らかでない」、「治療方法が確立していない」、「希少な疾病である」、「長期の療養を必要とする」の4要素を満たす疾患を対象とした研究の支援を行っています。国で定めている指定難病は当然対象疾患に含まれますが、それ以外の疾患でも先述した4要素を満たすものであれば対象となります。本事業は、難病の原因や病態解明を行う研究、医薬品・医療機器等の実用化を視野に入れた画期的な診断法や治療法及び予防法の開発をめざす研究を推進することを目的としており、厚生労働省が所管する難治性疾患政策研究事業と連携して難病の克服を目指しています。
2016年度は約86億円の予算規模で180課題を採択して研究支援を行っています。研究課題は大きく分けて、「研究開発パイプライン」「診療に関するエビデンス創出」「基盤構築研究」「病態解明研究」に分類されます。それぞれについて概要を説明します。

① 研究開発パイプライン
薬ができるまでには様々なステップが必要です。まずは基礎研究があり、薬の候補となる化合物の同定を行います。その次のステップは非臨床試験であり、動物モデルなどを用いて候補化合物の有効性や安全性の評価を行います。次のステップは治験です。実際に対象となる患者さんに薬剤を投与して有効性と安全性を評価します。治験終了後に製造販売業者が承認申請を行い、医薬品医療機器総合機構(PMDA)で承認審査が行われます。承認が取得できると製造・販売が許可され、その後医療現場で医師が処方することが可能となり、患者さんに薬が届くことになります。
このように薬ができるまでには複数のプロセスがあり、時間や費用がかなりかかります。難病領域の薬の開発はその市場の特殊性(患者さんの数が少ないなど)の故に企業が慎重になることが少なくありません。そのため難病領域では医師が治験を行う医師主導治験の果たす役割が大きいとされています。
難治性疾患実用化研究事業の研究開発パイプラインでは合計102課題の研究を支援しており、内21課題で医師主導治験を行っています。一つでも多くの治療法が開発できるように今後もAMEDは研究支援を行っていきます。
② 診断法・予防法の開発
診療の質を高める研究として58課題に研究支援を行っています。本研究課題は主に病気に関する様々な課題を検証し、ガイドラインへ反映させることや、診断法や予防法を開発することなどを目的としています。本研究課題では難治性疾患政策研究事業の研究班との連携が重要であり、より効果的な連携が図れるように、AMEDと厚生労働省で調整を行っています。
③ 基盤構築研究
疾患群毎の集中的な遺伝子解析及び原因究明に関する研究、生体試料の収集と活用による病態解明を推進する研究、未診断疾患イニシアチブが含まれます。難病には遺伝子の異常により発症するものがあり、遺伝子解析を行う研究は、診断を行う上でも、また病因を解明する上でも重要です。本研究課題を担当している研究班は、各医療機関や学会、他の研究班から患者さんの検体提供を受け、遺伝子解析などを行い、解析結果を医療現場へ還元しています。解析を通じ新たな原因遺伝子の発見などの成果が見いだされており、その成果が治療法や診断法の開発に結びつくことが期待されます。未診断疾患イニシアチブについては後述します。
④ 病態解明研究
AMEDは治療法や診断法の開発など、実用化に重点をおいて研究支援を行っていますが、実用化にはまず病態解明を行う基礎研究が十分に行われていることが前提です。難病を対象とした基礎研究をしっかりと支援していくことが、5年後、10年後に新しい治療法や診断法の開発につながると考えています。AMEDでは2016年から新たに本研究課題枠を設定し、10課題が採択され研究を開始しています。本研究課題から将来の開発に結びつく新たな発見が見いだされることが期待されます。

4.未診断疾患イニシアチブ(Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases:IRUD)
難病の患者さんは診断までにかなりの時間を要することがしばしばあります。また診断がつかずに、様々な症状に悩まされ、困難な状況におかれることも少なくありません。
AMEDでは2015年から、未診断の患者さんに対して全国体制で診断を支援する研究事業をスタートしました。
IRUDでは全国を複数のブロックに分け、IRUD拠点病院を整備しています。かかりつけ医から十分に検査されたにもかかわらず診断に至っていない患者さんを紹介していただき、IRUD拠点病院で研究のエントリーを行います。エントリーされた患者さんの臨床情報およびIRUD解析センターで得られた遺伝学的解析結果をもとにIRUD拠点病院に設置されるIRUD診断委員会で検討を行い、担当医を通じて患者さんへ診断情報をフィードバックします。
難病の診断においては、患者さんの情報を共有することが重要です。一人の患者さんでは診断にいたらない場合でも、似た症状や同じ遺伝子変異をもっている他の患者さんの情報を突き合わせることで診断に至ることがあります。IRUDでは患者数が少ない疾患の診断を促進するために、エントリーされた患者さんの臨床情報や遺伝学的情報を研究者間で共有することができるIRUDデータネットワークの構築を進めています。

5.国際希少疾患研究コンソーシアム(IRDiRC)
国際希少疾患研究コンソーシアム(IRDiRC)は、希少疾患の診断や治療法開発、倫理・規制面もふくめた情報共有を図る目的で2011年に設立されました。現在世界17の国と地域47団体が加盟しており、AMEDは昨年正式にメンバーになりました。加盟団体には欧米の希少疾患患者団体も含まれます。IRDiRCには3つのサイエンスコミッティのほか複数のタスクフォースがあり、少ない患者さんで臨床試験を行うにはどのような試験のデザインが望ましいか、難病患者さんの情報を国際的に共有化するにはどういった仕組みが必要か、などが議論されています。IRDiRCは2020年までに200の新しい治療法及び約7,000とも言われる希少疾患の診断方法を提供することを目標としており、IRDiRCウェブサイトでの定例報告によると、2016年5月時点で195の治療法が上市され、3,500を越える遺伝子について疾患との関係が明らかとなっています。
AMEDとして、IRDiRCを通じて国際動向を把握し、国内での難病の診断法や治療法開発へ活用するとともに、日本の難病対策についても発信していきます。

6.難病対策の施策
昭和47年(1972年)の「難病大綱」より国の難病対策の施策の歴史を俯瞰する。そして国として製薬企業として研究者としてまたAMEDとしてこれら施策に対してのアイディアを議論する。

7.最後に
AMEDの難病に対する取り組みと国の施策を中心にこの講義では説明しました。特に難病領域の医薬品等の開発においては、患者さんや研究者、企業、国が有機的に連携することが重要です。今後もAMEDは各課題の研究支援や効果的な開発に結びつく仕組み作りを推進していきます。

将来のヘルスケア産業の一部としての製薬産業、命を救う創薬への原点復帰に向けて(大倉 政宏)

講義概要 製薬産業は、命を救う「科学に裏づけされた「ミラクル」」を創製するために始まったのではないでしょうか?悲しいかな1990年以降、メガファーマは見捨てられた重篤な患者さんを救うより、患者数の多い既存の市場を守り拡大するための戦略を取ってきました。
ところが、国家医療財政の逼迫から、新薬は既存薬の対する有用性や医療経済のメリットを承認後に厳しく問われる時代となりました。その為、海外大手製薬企業は既存薬の存在する分野から撤退し、医療ニーズが極めて高い疾患領域に戦略転換を行い始めたようです。
一見、製薬企業にとっては従来のビジネスモデルの転換を迫れる危機のようにも思えますが、研究開発担当者の観点からは、医療ニーズの高い命を救う本来の役割に戻れるチャンスでもあります。希少難病は重篤であると同時に多くの疾患が新薬の研究開発がなされておらず、革新的新薬がもっとも求められている領域ともいえます。しかし、企業としてはビジネスとして成立することが持続的研究開発により多くの疾患を救う為に必須であります。ビジネスの観点から、ここ10年間の希少難病研究開発を俯瞰すると共に今後のどのような疾患の新薬の開発が望ましいのか初期的な分析結果を紹介させていただきたいと思います。

オーファンドラッグ開発の国際展開について(水島 洋)

講義概要 稀少疾患においては、患者だけでなくその専門 家の数も少なく、病態などの臨床情報、治療などの知識の共有が困難となっていましたが、近年、稀少疾患研究のグローバル化が進 み、日本も欧米と情報交換を進めています。たとえばフランスをベースに発展したOrphanet(オー ファネット)は、稀少疾患とオーファンドラッグに関するデータベースを構築することにより、稀少疾患患者の診断・治療、ケア改善 を目指しています。また、IRDiRCというコンソーシアムでは国際的な 研究者や研究機関を組織して2020年までに200の新たな診断・治療法を開発するという明確な目的のもとに、データや検体への アクセス、希少疾患の分子レベルや臨床プロファイリングなどの相互協力を呼び掛けています。この他にもEUや北米などで注目されている患者主体の取り組みや、今後の国際協力 について紹介します。

オーファンドラッグ開発戦略(薬事・薬価を含む)(小栗 滋豊)

講義概要 希少疾患・難病を取り巻く環境は、大きく変わりつつありますが、製薬企業が希少疾病用医薬品を開発する意思決定においては、開発方針、試験デザイン、薬価予測、市場性、販売戦略などにおいて、希少疾病用医薬品の特殊性を考慮しなければなりません。また、十分な治療法がなく、医療上の必要性が高いことが明らかなケースも多いと思います。しかし、一方では、専門医が限られており、疾患の啓蒙や患者さんや専門医のネットワークの構築なども重要な検討事項と思われます。これらの背景や実例をご紹介し、製薬企業として、取りえる戦略を一緒に考え、一つでも多くの希少疾患・難病を克服するための一助になるようなセッションにしたいと考えています。

拡大治験と医師主導臨床試験(和田 道彦)

講義概要 希少疾患は、おおよそ7,000疾患が想定され、そのうち80%の疾患は350疾患に集約されると言われている。現在これら疾患に対する治療薬は5%に満たないのが現状である。治療薬・治療法のない疾患においては、患者さんとその家族は、少しでも治療機会を得られればと考えるのも尤もである。
今回、希少疾患領域における人道的救済を目的とした治験システムの法制化が検討される中、Regulatory scienceの観点からも、個人輸入・アクセス制度・日本版コンパッショネート・ユース制度の考え方の時代的変遷とともに、今後の運用に向けて一緒に考えてみたい。本年度新たに立ち上がった日本医療研究開発機構の一つの柱でもある希少・未診断疾患領域における創薬を前提として、アカデミアにおける医師主導型治験についても、協働・共同開発の観点から考える。

オーファンドラッグ開発の諸問題(早田 悟)

講義概要 グラクソ・スミスクライン社(GSK)は2010年に稀少疾患薬に特化した事業ユニット(GSK Rare Diseases)を設立し、これまでに培ったオーファン薬におけるノウハウを活かした医薬品開発と事業展開を行っています。
稀少疾患は6,000〜7,000存在することが知られていますが、患者数が極端に少ない場合が多く、臨床開発戦略の策定や臨床試験の遂行に工夫を要すると同時に、国のオーファン指定や難病対策などの諸制度との関連を考慮することも重要です。一方、これらの因子は稀少疾患における開発プロジェクトにおける事業性評価にも影響する場合があります。
本セッションにおいては、稀少疾患における医薬品開発をこのような種々の観点から整理していきます。
また、昨今では稀少疾患に対するアプローチはバイオ医薬品に関連することも多く、関連する業界活動などについても紹介します。

オーファンドラッグの品質保証(開発から市販後まで)(南山 智也)

講義概要 オーファンドラッグの品質保証の観点から、承認申請時における製造方法・規格及び試験方法の確立並びに市販後の品質保証について、ウルトラオーファンドラッグのバイオ医薬品を例に解説します。
オーファンドラッグの市販後の品質保証で最も重要な責任の一つとして、安定供給が挙げられます。万一、品質問題から供給不足が発生した場合、代替え治療のない希少疾病では患者さんのQOLが維持できず、その結果生命の危機にかかわる事態が発生することも考えられます。本セッションの後半は、品質問題から発生する供給不足について、ウルトラオーファンドラッグで想定した事例に基づいて、グループワークショップを行い、企業の取るべき対応について考えます。

医師主導の開発(Workshop-1):ベンチトップの創薬からの出発(平野 賢一)

講義概要 このセッションでは、日本で発見された希少疾患、先天代謝疾患をモデルに、臨床医学研究者 (Physician-scientist) である講師が行っている心血管病治療薬開発について、臨床段階の事例と、前臨床段階の事例の2つを紹介する。前者は、中性脂肪蓄積心筋血管症 (Triglyceride deposit cardiomyovasculopathy, TGCV)に対する医薬品開発である。TGCVは、2008年に我が国の心臓移植症例より発見した心筋と冠状動脈にTGが蓄積する新規難病である (N Engl J Med. 2008)。2009年から厚生労働省、本年から日本医療研究開発機構の難病対策事業として、中鎖脂肪酸を含有する医薬品のアカデミア創薬がなされ、本年9月より、医師主導のFirst-in-human試験が開始されている。後者は、善玉コレステロールとして知られる高比重リポ蛋白 (High density lipoprotein, HDL)増加治療法の開発である。コレステリルエステル転送蛋白 (Cholesteryl ester transfer protein, CETP)欠損症などの高HDL血症やタンジール病や家族性高コレステロール血症など低HDL血症を来す病態の解析から、小腸由来HDL (Small intestine-derived HDL, SI-HDL)を標的とするHDL増加治療法開発を目指した経緯について解説する (J Lipid Res. 2014)。いずれの事例も希少疾患からcommon diseaseの治療法開発に展開できると考えおり、その点も述べたい。

医師主導の開発(Workshop-2):市販薬の追加適応獲得(山野 嘉久)

講義概要 このセッションでは、HTLV-1 Associated Myelopathy (HAM)という希少な神経難病に対して、抗がん薬として承認されたばかりの抗CCR4抗体療法の開発事例を紹介し、希少難病を対象に市販薬を使用した医師主導治験の課題についてグループディスカッションを通して理解を深めます。
HAMは、本邦での患者数が約3000名と推定される希少難病で、先進国で患者が多いのは日本のみであり、これまで治験に関する報告が、欧米先進国からの報告も含め極めて少ないという特徴があるため、新薬開発を進めていこうとすると様々な課題に直面します。今回の講義では、このような特徴を有する疾患に対して新薬を開発していくためにはどのような取り組みが必要であるか、皆様と一緒に考えていきたいと思います。
具体的には、どのような情報を収集する必要があるか、情報を収集するためにはどのような取り組みが必要か、早期治験開始までに実施すべきことは何か、早期治験のデザインはどのようなものが良いか、エンドポイントはどのように設定したらよいか、承認までにどのような試験の実施(パッケージ)が求められるか、などについて議論したいと思います。
事前に指定する資料を読んで参加して頂き、当日は講師による創薬経験に基づいた講義の後に、会場内でグループ毎に検討し、創薬プロセスを協議して発表し、講評を行う予定です。

医師主導の開発(Workshop-3):国際共同開発の基盤整備(木村 円)

講義概要 このセッションでは、希少な難治性筋疾患の中でも特にDuchenne 型筋ジストロフィー(DMD)に対する治療法開発を目指した国際的な研究基盤整備の事例を紹介し、オーファン薬の開発における課題についてグループディスカッションを通して理解を深めます。事前に指定する資料を読んで参加し、当日は講師による国際協調に基づくインフラ整備の経験に基づいた講義の後に、会場内でグループ毎に検討し、創薬プロセスを協議して発表し、講評を行う予定です。

医薬品開発におけるオープンイノベーション(芦田 耕一)

講義概要 新薬の開発は長い期間と多額の費用を必要とし、そしてリスクが高い。さらに、対象疾患が難病・希少疾患をはじめとしたアンメットメディカルニーズの高い分野にシフトするにつれ新薬開発の難度がさらに高まっている。そのような新薬開発について、米国においては既にアカデミア、ベンチャー、製薬会社からなるオープンイノベーションの仕組みが構築されている。一方、日本の創薬ベンチャーは米国のそれと比べると存在感がまだ小さい。創薬ベンチャーにとって課題の一つは資金調達であるが、日本においては比較的長期の多額なリスクマネーが不足しているのが現状である。産業革新機構は官民からなる投資会社で、健康・医療分野は主要な投資分野の一つである。日本発の革新的な医薬品、医療機器および再生医療技術等の事業化を目的としたベンチャー等を支援している。当日は、新薬開発におけるベンチャーの位置づけ、日本の創薬ベンチャーに関する課題および産業革新機構の取組みを解説する。その後に、理解を深めるためにグループディスカッションを行う予定である。