【MDD Diary 2020】#14 (2020/09/19)「医療機器開発の実践2」
2020-09-19
本日はModule 4「医療機器開発の実践」第2日目でした!
午前(1~2限)は大阪大学べンチャーキャピタル株式会社より水原善史先生にお越しいただき、「Group Working – Ⅵ 医療機器開発のためのファイナンス」が行われました。
グループワーキングに先立ち、Equity Finance、Debt Financeといった資金調達方法やそれらの長所・短所、ベンチャーキャピタルの業務や投資の現状についてご講義いただきました。日本におけるベンチャー投資市場は近年右肩上がりに拡大を続けているようですが、その投資総額は米国に比べると非常に少ないとのことでした。米国では多くのベンチャー企業の中から成功したものを買収することで、投資コストは10倍かかってもビジネス成功の確度は10倍以上にあがるとの考え方があるそうです。
グループワーキングでは、医療画像診断技術の開発を行うベンチャー企業のCEO、CFOになった想定で資本政策をまとめ、キャピタリストである水原先生と交渉していただきました。まずは類似企業を選定し、それらの企業のPER(株価収益率)や出口戦略を調査しました。それに基づき、自社のExitの方法とExitバリューの設定など、具体的な資本政策を決定していきました。自社の将来の価値を、キャピタリストにいかに説得力を持って説明できるかが非常に重要であると感じました。交渉(プレゼンテーション)では、投資に関連する指標に基づいた分析に加え、コロナ禍における遠隔医療の普及を想定して企業価値を検討していたグループもあり、大変勉強になりました。
3限目は旭化成ゾールメディカル株式会社より坂野誠治先生をお招きして、「旭化成がM&Aした米国医療機器企業ZOLL Medical社とその製品を支える技術的背景」と題してご講義いただきました。
講義前半は、ZOLL社のM&Aを行った経緯について、当時の時代背景、旭化成の経営方針、坂野先生の当時のお考えなども交えてご説明いただきました。後半は、ZOLL社をM&Aした後の展開について、胸骨圧迫アシスト機能付きの除細動器、着用型自動除細動器(ライフベスト)の開発を中心にお話しいただきました。これらの開発事例をもとに、医療サービス・医療機器開発はビジネスモデルが重要であるということを教えていただきました。技術ももちろん大事だが、単に技術だけだと模倣することは難しくないため、同時に、ニーズをどういった形で解決するかというところを明確にすることが必要である、ということをお聞きし大変勉強になりました。
質疑応答場面で、買収が成功する秘訣について、「継続して働きたいと思う環境を提供できるか」「人間関係や信頼関係をどう作るか」、そして「企業で重要なのは人である」とはっきり話されていたのが大変印象的でした。科学がどんどん進歩し、多くの職業がAIに置き換わるのではないか、という漠然とした不安さえ漂うこの時代であっても、ビジネスの成功の裏に「人」のつながりがあるのだと改めて思うことができました。
4限目は名古屋市立大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科学より讃岐徹治先生をお招きして、「けいれん性発声障害の患者さんのための新規医療機器「チタンブリッジ』の開発」と題してご講義いただきました。
チタンブリッジ治療の社会実装を目指して、2013年のPMDAへの相談にはじまり、企業とのマッチング、薬事承認、保険診療開始まで、讃岐先生が実際に進んでこられたプロセスについて大変詳細にご紹介いただきました。
ご講義いただいた内容は、まさにModule2で学んだ薬事承認・保険償還手続きのプロセスそのものであり、知識の定着にも大変有益なご講義でした。非臨床試験としてチタンブリッジの力学的安全性評価のための試験方法や、医師主導治験の実施計画における症例数や評価項目、判定時期など、通常では知ることのできない詳細な情報にも触れることができ、大変勉強になりました。
チタンブリッジ治療は局所麻酔による手術であるため侵襲は少なく、創部も目立たないそうです。また永続効果を有するため根治的治療が可能とのことで、今回はじめてこの治療を知った私にも、その有益性についてすぐに理解することができました。一方で、この治療が広く普及して、多くの患者さんがこの恩恵を享受できるようになるまでには、非常に多くのステップや困難があったそうです。讃岐先生ご自身も医師主導治験は非常に苦しいものであったと振り返っておられましたが、それでも諦めずに最後まで成し遂げられたことにとても感動しました。現在、チタンブリッジの国際展開に向けての準備が進んでいるそうで、病気を理解してもらえず苦しんでおられる世界中の患者さんに少しでも早く届くといいなと思いました。
次回10月10日は、MDD Group Working- Ⅶ・Ⅷ「医療機器開発のための保険実習①②」になります。開発した医療機器の保険償還について、丸一日かけて学びます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
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2020.9.19
MDD Diary 2020
Written by team MDD