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【MDD Diary 2025】#2 (2025/6/7)

2025-06-10

こんにちは。メディカルデバイスデザイン(MDD)コース2025運営チームです。

6月7日(土)に開催された「Module 1 ~医療機器開発のための臨床医学~」の第2日目では、臨床の最前線で活躍される先生方から、専門領域と医療機器開発に関する貴重な講義をいただきました。今回はその1日を振り返ります。

1限目 精神医学の臨床と医療機器
畑 真弘 先生

大阪大学大学院医学系研究科 精神医学

精神疾患は、糖尿病よりも患者数が多いにもかかわらず、現在も問診による診断が主流という課題を抱えています。畑先生の講義では、認知症における“通常の物忘れ”との違いや、軽度認知障害(MCI)の段階からの介入の重要性など、日常生活にも役立つ知見を数多く学びました。さらに、パッチ式脳波測定デバイスや、機械学習・深層学習を活用した脳波解析によって認知症やせん妄の予測が可能になる未来像も紹介され、精神医学における医療機器の可能性に大きな期待が高まりました。質疑応答では、スクリーニング機器を活用した早期発見と、専門医療への円滑な連携の必要性についても議論が交わされました。

2限目 循環器内科学の現状と課題~循環器医療と医療機器~

坂田 泰史 先生
大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学

紀元前の古代エジプト時代にまで遡る循環器研究の歴史を振り返りながら、現代における心不全治療の最前線についてご講義いただきました。今後も増加が見込まれる心不全に対して、予防と治療の両面から取り組むことが循環器内科学の重要な使命であることを学びました。また、病院内にとどまらず、家庭においても生体データを日常的に収集・活用する時代が到来するとの展望が示され、身近なデバイスを活用したリアルタイムの健康モニタリングに関する最先端の研究にも触れることができました。さらに、病院外でバイオマーカーをリアルタイムにモニタリングするためには、技術革新に加えて制度設計の整備が不可欠であるとのご指摘がありました。特に、バイオマーカーのリアルタイム測定の実用化が、今後の診断精度に大きな影響を与える可能性があるという点が非常に印象的でした。

3限目 IVRの実際とデバイスの現況

木村 廉 先生
大阪大学大学院医学系研究科 高精度画像下穿刺治療

第3限は「切らずに治す」をテーマに、近年急速な発展を遂げているIVR(Interventional Radiology)について木村先生から講義をいただきました。血管内治療、穿刺治療など多岐にわたるIVRは、“低侵襲”を実現する医療技術の代表格といえ、デバイスや器具、画像誘導技術など、医用工学の要素が色濃く反映される分野です。質疑応答では「MRI透視下IVRはどのような症例で使用されるか?」という質問に対し、国内での実施は限られているものの、前立腺がんなどMRIでの描出が不可欠な症例での応用可能性が紹介されました。

4限目 循環器疾患外科治療~心臓血管外科手術と医療機器~

吉岡 大輔 先生
大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科学

最終講義は、心臓血管外科の第一線で活躍されている吉岡先生から講義をしていただきました。「まるで洞窟の中でミリ単位の作業をしているような手術」や「心臓を一度“解体”してから治療する」といった驚きの言葉が並ぶリアルな手術現場の話に、一気に引き込まれた講義でした。手術動画の共有を通じて、開胸手術とカテーテル治療の比較や、豚の心臓を移植した症例、ロボット手術(Da Vinci)の課題まで幅広く学ぶことができました。感染症リスクに関する質問にも、科学的エビデンスに基づいた回答がありました。また、Da Vinci手術についても徐々に心臓外科領域への導入が進められていることが示され、今後の技術的ブレイクスルーに期待が寄せられました。

次回は「放射線治療で求められる医療機器」、「消化器内視鏡機器の役割と今後の展開」、「消化器外科の臨床現場と医療機器」、「糖尿病治療と医療機器~最新の栄養疫学エビデンスとその臨床応用」について学びます。

メディカルデバイスデザインコース2025運営チーム