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【MDD Diary 2025】#7 (2025/7/26)

2025-07-26

【MDD Diary 2025】#7 (2025/7/26)

こんにちは。メディカルデバイスデザイン(MDD)コース2025運営チームです。今回は、その一日を振り返ります。

1限目 医療機器と臨床評価

望月 修一 先生

山梨大学 大学院 総合研究部 医学域 臨床研究支援講

本講義では、医療機器の開発から市販に至るまでの全体像と、その過程における臨床評価の役割についてご講義いただきました。医薬品とは異なり、医療機器においては必ずしも治験が必須ではないという事実に驚かされました。さらに、臨床評価においては、エンドポイントの設定や対象患者像の明確化、そして臨床的意義のある差をいかに定義するかが重要であることがわかりました。承認がゴールではなく、保険適用に向けたエビデンスの構築も必要であり、さらに、上市後も市販後調査、安全対策を通じて、患者にとって有益な医療機器を継続的に供給することが大事であることが示されました。

質疑応答では、「未承認の医療機器を探索的目的で臨床研究として実施する場合、混合診療の制約によりコストが高くなる印象がありますが、実際の取り扱いはどうなっているのでしょうか?」という質問がありましたが、「現在議論がなされており、今後の動向を注視する必要があるが、保険外の枠組みで行う必要が生じる可能性がある」との見解が示されました。

2限目 リスクマネジメントとISO14971

萩原 敏彦 先生
医療機器安全研究所

医療機器のみならず、日常生活にも応用可能なリスクマネジメントの本質的な考え方についてご講義いただきました。初めにリスクマネジメントにおける重要単語である「ハザード」「危険状態」「危害」「リスク」の正確な理解が必要であることをご説明いただきました。リスクとは、危害の発生確率と重大さの組み合わせであり、それを低減するための体系的なプロセスが求められています。2000年代に発生したシュレッダーでの切断事故や遊園地での事故などをご紹介されながら、製品設計段階での予見可能性や警告表示の重要性についても学ぶことができました。また、リスクマネジメントの実効性を高めるには、文書だけでなく具体的事例を通しての理解と実践が重要であることが示されました。リスクゼロは存在せず、リスクゼロに向けた努力の継続が、リスクマネジメントだという強いメッセージが印象的な講義でした。

3限目 リスクマネジメントGWに向けて
谷岡 寛子 大阪大学国際医工情報センター/京セラ株式会社
岡山 慶太 大阪大学国際医工情報センター
萩原 敏彦 医療機器安全研究所

3限目では、午後から実施されるリスクマネジメントのグループワークに向けて、谷岡先生および岡山先生よりご説明がありました。今回の実習では、シナリオA(ハードウェア:埋め込み型医療機器)とシナリオB(ソフトウェア:治療用アプリ)の2つが提示され、それぞれのシナリオの概要や背景情報について詳しい解説が行われました。

4,5限目 MDD Group Working – I 〜リスクマネジメント実習(市販前編)〜

深谷 壮弥  先生 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)

髙田 麻衣  先生 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)

深谷先生より、薬機法に基づいたリスクマネジメントの基本や、審査の視点から見た医療機器評価の考え方についてご講義いただきました。医療機器は多様かつ進化が早く、製品ごとに適切なリスク評価・管理が求められることが強調されました。その後のグループワークでは、講師陣が各グループを適宜巡回し、進捗状況を確認しながら適切なサポートを行ってくださいました。90分という限られた時間の中で、各チームが試行錯誤を重ねながら積極的に取り組む様子が印象的でした。発表では、短時間とは思えないほど内容の濃いプレゼンテーションが行われました。講評では、全体的に高い評価があった一方で、「既存治療との比較を踏まえた有効性の検討」や「製品評価においてどのような試験が望ましいか」といった視点を意識するよう助言がありました。発表後は、高田先生より申請書作成の基本、ならびに、必要な書類や添付資料との関連性について詳しく解説いただきました。提出資料におけるストーリー性の重要性や、申請書中の一つ一つの記載内容が、いかに照会事項の発生を左右するかという点が重要だということがわかりました。承認審査においては、単にデータを羅列するのではなく、「その機器がなぜ必要で、どう安全で、有効であるか」を論理的に構成することが求められるというお話は、今後の開発や実務に直結する実践的な内容でした。

次回は「MDD Group Working – Ⅱ 〜申請・照会対応実習〜」、「MDD Group Working – Ⅲ 〜リスクマネジメント実習(市販後編) 〜」について座学とグループワーキングにて学んでいきます。

暑い日が続きますが、体調に気を付けてお過ごしください。

メディカルデバイスデザインコース2025運営チーム