【MDD】MDD Diary 2017 #15 (2017/10/14)
2017-10-14
【メディカルデバイスデザインコース】
第15日目は『医療機器開発の実践3』です。今回のテーマは『医療機器ビジネスの現実』です。山科精器(株) 保坂誠 先生から医療機器開発ビジネス立ち上げで見えた課題、(株)ケイエスピー 栗田秀臣 先生から医療機器開発ベンチャーの資金調達と出口戦略とその実態、そして、ジーニアルライト(株) 和田英孝 先生からはTACE(肝動脈化学塞栓術)におけるデバイスの開発、本学未来医療開発部 真田昌爾 先生からは診療と研究の境界線・先進医療と治験・評価療養の概略とその利用戦略についてご講義いただきました。
公的資金によるプロジェクトについて、計画を公開することで、社内の事情で開発計画の遅れが出るリスクを減らし、さらに、ステージゲートがあることで、言い訳がしにくくなり、社内的にも目標を一にできるという利点をご紹介いただきました。医療機器開発においては、ニーズの確認、世の中的な技術の進歩も確認しながら進めなければなりません。できた頃にはニーズがなくなっていた、上市する頃には新しい技術が開発されてやり方自体が変わっていたなどさまざまなことが起こりえます。また、産学連携においては、学術的評価と臨床的評価を分けて考える必要があり、学問的には面白いが臨床的には使われないという製品ができてしまうのを防ぐことも必要です。さまざまな方のアドバイスも得る一方で、それを鵜呑みにするのではなく、必ず自社の状況と照らし合わせて咀嚼した上で取り入れるということが重要であることがわかりました。また、メディアや会社見学などを通して会社としてのブランディングを行い、社内の他部門の理解を得つつ、開発チームメンバーのモチベーションをいかに保つかがプロジェクトマネージャーの仕事であるというのは、まさしく新規参入で医療機器開発部門を率いてこられた方だからこそ発せられる教えでした。
VCとしての立場、そして、長年多くのベンチャー企業のインキュベーターをやってこられたご経験から、実例を交えてポイントをご講義いただきました。事業計画を作るのは対話であり、事業ドメインの設定を行うことでその事業をやる必然性がわかるというお話から、ただ流行りだから医療関連ビジネスをやるというのではなく、なぜ医療領域をやるのかということをよく考えなければならないということがよくわかりました。資金調達については、お金にも種類があり、どの資金を何に使うかが重要である、そして、どれぐらいの資金が実際に必要か、誰からいつのタイミングでいくら調達するか、いいときも悪いときもあるので、出資メンバーはよく検討する必要があるということを解説いただきました。医療機器、創薬ベンチャーがうまくいかない理由の多くが資金調達の不調によるものであるため、創業当初からR&Dと同じ重要度で人材面の準備が必要です。さらに、出口戦略として事業売却を考える場合は、開発までか、治験までか、承認取得までかなど、自社の規模や能力に応じてどこまでやるかをよく考える必要があります。ステルス方式でやる戦略もあるが、ベンチャーでリソースが少ない場合は、さまざまな場所で考えをアピールし、共感してくれる人を集めるのも必要であるということをご講義いただきました。
TACE(Transcatheter Chemoembolization)の治療手技の発展と、マイクロカテーテル、塞栓材の開発の歴史について、心臓の冠動脈のインターベンション治療:PCI(PTCA)と比較しながら解説いただきました。TACEの前身であるTAEは、1970年代に大阪市立大学の山田先生らのチームによって生まれた日本発の治療法です。因みにPCI(PTCA)は同時期にスイスのチューリッヒ大学で生まれています。これらに必要なマイクロカテーテルを製造するベンチャー企業を興し、研究開発と経営を率いてこられた中での課題についてお話いただきました。新規治療法における医療機器の開発は、工場ラインや製造販売の体制などすべてを整えた状態で治験という流れになるため、ベンチャーで最終段階までやるとするとかなりの資金が必要となるというのは、栗田先生のビジネススキームの構築、出口戦略のお話とも通ずる点がありました。
新しい医療機器の開発は、患者さんが少しでもよくなるためにという思いでなされると思いますが、やり方を間違えると、熱い思いで始まった研究開発も非難に晒されることがあるということを、事例を交えてご紹介いただきました。「研究」と「診療」を意図モデルと承認モデルの判断軸から分ける基本的な考え方、革新的医療におけるヘルシンキ宣言をもとにした考え方、これらをまとめた研究倫理についてご紹介いただきました。臨床研究と治験の違い、そして、治験は薬事承認に向けて薬機法の下に行われる臨床試験、先進医療は保険収載に向け、医学系研究に関する倫理指針の下に行われる臨床研究であるという大きなくくりでの違いについて解説いただきました。未承認医療機器の保険収載へのロードマップを、1.治験コース、2.先進医療コース、3.先進医療→治験コースにわけ、コストやかかる期間、目的など、どのような場合にどのコースを検討すべきかについてご教示いただきました。
次回10月21日はいよいよレギュラープログラム最終日となります。血管内治療用医療機器開発現場の挑戦、人工網膜の研究開発、医師のためのクラウドサービスソフトの開発、磁気刺激医療機器の開発、ウエアラブル心電計の開発についての講義を予定しています。
尚、当日はカルビー(株) 松本晃先生をお招きして、特別企画 『MDD2017ファイアサイドセミナー』を開催いたします。
モジュール4医療機器開発の実践スケジュール