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MDD Diary 2019 #3 (2019/06/22) 『医療機器開発のための臨床医学3』

2019-06-22

今日は夏至。朝8時の中之島ではすでに太陽が高く昇っていました。
 

 
本日はModule 1〜医療機器開発のための臨床医学〜の第3日目でした。消化器内科学の林先生、小児外科学の田附先生、救急医学の竹川先生、脳神経外科学の押野先生にご講義いただきました。
 

 
 1限目は消化器内科学の林義人先生から『消化器診療における内視鏡機器の意義と展開』と題してご講義いただきました。
 癌を早期のステージ1で発見できれば、食道癌であれば10年生存率が60%、胃癌、大腸癌は90%以上にもなります。早期がんは、がん細胞が粘膜層、あるいは、粘膜下層までにとどまっているものであり、医師がNBI(Narrow band imaging)内視鏡等を用いて、深達度を診断し、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を施す必要があるとのことです。
 癌の早期発見のためには、内視鏡の発展が非常に重要ですが、現在では、1000倍ズームの超拡大内視鏡で、細胞の核や細胞異形までズームして見ることができるものも、すでに販売されています。さらに、人工知能のディープラーニングによる画像認識で、癌の診断を行うモダリティが阪大でも開発中だそうです。この技術は、上記の細胞異形に対しても、人による判断が難しい場合に、非常に正確な診断を可能にすると考えられています。ディープラーニングは、製造メーカーの良品/不良品の選定を行うような課題に対しては、ソフトウェアも数多く市販されるようになってきているので、本当に近い将来、内視鏡検査による癌の早期発見が可能になるのではないかと感じました。
 また、内視鏡は、経鼻や経口のものがありますが、一定の苦しさがあると聞いているので、自分が受けるのであればカプセル内視鏡を使わせてほしいと思っていました。現在は、小腸の分野ではカプセル内視鏡が用いられることがありますが、カプセル内視鏡は病理を詳細に観察することができない、拡大倍率が高くない、胃や大腸では腔径が大きいのでコントロールが難しいといった問題があるので、実現にはまだ少し時間がかかるようでした。(Written by じゅり)
 
 2限目は外科学講座小児成育外科学の田附裕子先生から『小児外科の臨床現場と医療機器』と題してご講義いただきました。
 今回は、小児外科とは何か、小児外科におけるハードウェアの特殊性をご説明いただいた後、多くの小児特有の疾患と、それぞれの疾患に対し先生が必要と感じられている医療機器を紹介していただきました。小児外科における医療機器には、子どもが小さいこと(体重が500g~)、皮膚などの組織が弱いこと、呼吸・脈が速くデータを拾いにくい・同期しにくいこと、成長に合わせなければならないことなどの特殊性が求められるため、大人向けのものとは異なる専用の医療機器が必要です。例えば、横隔膜ヘルニアの治療に用いる呼吸器に対しては、チューブが重くない、気道抵抗が少ない、少ない換気量に対応、リークに対応できる、水がたまらないものが欲しいなど、大変具体的にニーズを説明してくださいました。
 今回は先生が現場で持たれている危機感が大いに伝わってくるご講義でした。小児外科領域においては特殊な機器が必要とされながらも、採算性などの理由からそもそも開発されない、開発されても販売が続かないといった機器が多いとのことでした。小児外科領域における医療機器の開発には、技術開発だけでは解決できない問題も多くありますが、今回の講義で多くの方が危機感や課題を共有でき、少しでも今の現状が改善すればいいなと思います。(Written by KO)
 
 3限目は救急医学の竹川良介先生から『救命救急と医療機器』と題してご講義いただきました。
 テレビ番組などで取り上げられることも多い救命救急。阪神淡路大震災や東日本大震災での状況を踏まえ、詳しくお話いただきました。あのドラマで有名なドクターヘリ。そのドクターヘリが実際に出動する際の動画を見せていただきましたが、ヘリの音の大きさにとても驚きました。普段、大阪大学医学部附属病院の近くで生活しているので、ドクターヘリの音を聞く機会はあるのですが、近くで聞くヘリの音は想像以上でした。そのため、ヘリの中で心音などを聞くことや患者さんとの会話は不可能で、さらにヘリでの移動は激しく酔うということがよくわかりました。現在ドクターヘリは全国に53機が導入されているそうですが、今後は新たなヘリの開発に加え、ヘリ専用の医療機器などの開発も必要なのではないかと感じました。また、このコースの講義でドクターヘリの役割と現状を知られた受講生の方が、北陸地域におけるドクターヘリ導入に一役かわれたということを聞き、大変興味をもちました。今日の講義で日々発展している救命救急について知ることができましたが、災害の多い昨今、一人でも多くの命を救えるように、今後もさらなる発展をつい期待してしまいました。(Written by なつ)
 
 4限目は脳神経外科学の押野悟先生から『脳神経外科領域における医療機器』と題してご講義いただきました。
 脳卒中の血管内治療や水頭症の治療について、実際に使用されているデバイスをご紹介いただきながらお話いただきました。
 脳神経外科領域では手術ナビゲーションシステムといった最先端の技術も普及しているそうです。これは光学や地場を利用し、術前のMRI画像を手術中の患者さんに反映する技術です。これにより、最短距離で治療が必要な部位に到達することができるそうです。さらに今後はMRI画像だけでなく、他の情報を組み合わせて手術中の患者さんに反映できるようになることが期待されているそうです。脳神経外科の領域でもほかの領域と同様に情報分野との融合による発展が期待されます。(Written by なつ)
 
 
 来週は、消化器外科学の高橋先生、放射線医学の東原先生、整形外科学の安藤先生、心臓血管外科学の吉川先生にご講義いただきます。また、ランチタイムには、大阪会場でMDDランチョンネットワーキングが行われます。過去のMDD受講生の方々もご参加されますので、ぜひ皆様ご参加ください。
 6月28〜29日は大阪でG20サミットが開催されます。大規模な交通規制が予定されておりますので、交通情報にご留意いただきますようお願いいたします。警察も救急隊も大阪に集結しているようです。1週間前でこれ↓(本日大阪会場の窓から撮影)なら来週は貴重な風景がみれそうですね。
 

 
 
金曜日、夕方から雨となった吹田キャンパスでは、紫陽花がとてもきれいでした。
そろそろ梅雨入りでしょうか。

 
2019.6.22
MDD Diary 2019 編集長 ChiCo