【MDD Diary 2025】#15 (2025/10/11)
2025-10-15
本日はModule4 〜医療機器開発の実践〜3日目~でした。

【1,2限目】MDD Group Working Ⅶ 医療機器開発のための保険戦略➀
一戸 和成 先生
医療法人社団 和楽仁 芳珠記念病院
笹田 学先生
広島大学
グループワーキングに先立ち、一戸先生より「医療機器と診療報酬制度」についてご講義いただきました。診療報酬とは「医療の価格表」のようなものであり、その体系が単なる価格決定の枠を超えて、医療の質・量、提供体制、さらには国の財政政策にまで影響を与える重要な仕組みであることを教えていただきました。医療技術が保険適用に至るルートとしては、「先進医療ルート」と「医療技術評価分科会ルート」の2つがあり、いずれも学会や医療機関が主導して進められるプロセスです。その中で、実際に保険収載まで到達するのは全体の約2割にとどまるとのことでした。また、今後はプログラム医療機器など新しい技術をどのように診療報酬として評価するかが大きな課題になるとのお話もあり、これから保険適用希望が出されてくる中で制度設計が並行して進んでいくということを示されました。
続いて、笹田先生より「医療機器等の保険適用の考え方」において、特に区分の選択についてご講義いただきました。医療機器の保険適用における評価方式の選択が重要であることを教えていただきました。新規性の高い保険医療材料に対しては、類似品が存在する場合には「類似機能区分比較方式」、類似品がない場合には「原価計算方式」が採用されます。また、既存の技術料で評価が難しい医療技術については、「新規技術料の新設希望」を提案することも一つの戦略であると説明されました。

谷岡 寛子先生
京セラメディカル株式会社
岡山 慶太先生
大阪大学国際医工情報センター
先生方の講義の後、岡山先生より午前中のグループワーキングテーマ(植え込み機器)が発表されました。医療機器の保険償還価格は公定価格であって、一般製品のようにブランディングやマーケティング戦略によって自由に価格を設定できないという「医療機器特有の構造的な制約」を踏まえ、受講生はグループワーキングに取り組みました。
グループ発表では、既存のB区分を選択したグループ、機能区分のみ新規としたC1区分を提案したグループ、そしていずれも新規とするC2区分を選択したグループなど、各チームが独自の視点から戦略を立案しており、その多様性が印象的でした。発表後にはそれぞれのプレゼンテーションを踏まえつつ、価格付けの考え方、さらに実務としての原価計算方式・類似機能区分方式の具体的な結果や考え方が共有され、理論を実践に結びつける学びの時間となりました。実際の制度運用を踏まえた解説を通じて、受講生は保険戦略の複雑さと奥深さを実感することができました。

【3,4限目】MDD Group Working Ⅶ 医療機器開発のための保険戦略②
大竹 正規先生
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
午後は大竹先生の「デジタルヘルスと保険」についてのご講義から始まりました。先生は、デジタルヘルス技術を含む医療機器の保険評価において、医学的有用性と患者アウトカムが直結しているという重要な視点を提示されました。単に診断技術として優れているだけではなく、治療に結びつく診断こそが評価の対象となることを示されました。たとえば、治療薬の登場を契機として初めて検査法に診療報酬が付与された例があるように、診断そのものではなく、治療と一体で医学的有用性が認められる構造が明確に示されました。
続いて、岡山先生より本午後のグループワーキングテーマ(治療アプリ)が発表されました。受講生の発表では、午前中と比べて機能区分・医療技術のいずれも新規とするC2区分を選択したグループが多い印象でした。各チームが創意工夫を凝らし、制度上の根拠と市場性の両面から論理的にプレゼンテーションを展開されました。講師陣との議論の主眼となったのは、適正と思われる価格をどのように根拠をもって説明するかという点です。自由市場のように価格を設定できない医療機器において、妥当な価格をどう説明するかは極めて難しい課題ですが、同時に本グループワークの醍醐味でもあります。多くのグループが、類似製品との比較を通じて自らの設定価格の妥当性を示そうとしており、実践的な視点からのアプローチが光っていました。
総評として、今回のグループワークでは、特定保険医療材料や技術料包括、保健適応外など様々な選択肢があることを前提として、それぞれの選択肢となるに至る論拠を示していただきました。
次回は、いよいよ2025年度の最終日となります。「医療機器開発のマーケティング」、「本気の産学官連携で事業化に漕ぎ着けた自己組織化心臓血管修復パッチ」、「患者適合型カッティングガイドとインプラントの開発・実用化」、「AI内視鏡で実現する医療の未来」、「遠隔心臓リハビリテーション実現の道のり(仮)」、「けいれん性発声障害の症状根治を目指した新規医療機器『チタンブリッジ』の開発」について学びます。
メディカルデバイスデザインコース2025運営チーム