【MDD Diary 2025】#6 (2025/7/12)
2025-07-22
こんにちは。メディカルデバイスデザイン(MDD)コース2025運営チームです。今回は、その一日を振り返ります。

1限目 医療機器開発と医療機器製造販売業 〜業態・業許可・遵守事項〜
山口 幸宏 先生
株式会社吉田製作所
医療機器の開発からそれが市場に出て販売されるまで(上市)の流れについて、山口先生よりご講義をいただきました。講義ではまず、医療機器とは何かという基本的な定義からはじまり、クラス分類(クラスⅠ〜Ⅳ)や特定保守管理医療機器などの制度上の分類について、丁寧に整理されました。製品のリスクに応じて規制が変わることが、実務上の運用や責任体制にどのように影響するかを具体的に学ぶことができました。特に印象的だったのは、医療機器ビジネスに関わる「業態」の多様性と、それぞれに求められる許可・登録・法令遵守事項の違いです。加えて、「三役」と呼ばれる責任者の配置(総括製造販売責任者、国内品質業務運営責任者、安全管理責任者)が必要である点からも、医療機器ビジネスが極めて高い社会的責任のもとに運営されていることがよくわかりました。こうした法令遵守体制の構築は、単なる法的義務ではなく、企業の信頼性や社会的信用の基盤であることが強調されていました。
質疑応答では、「国内品質業務運営責任者や安全管理責任者には3年以上の業務経験が必要とされているが、これを満たすにはどうすればよいのか?」という質問が出され、先生からは「現時点ではその点について議論が始まった段階であり、今後の対応が求められる」とのご回答がありました。

2限目 QMSとISO13485
谷﨑 みゆき 先生
MT.Lab.
医療機器の品質マネジメントに関する国際規格であるISO13485と、それに対応するQMS(Quality Management System)省令について、谷﨑先生からご講義をいただきました。冒頭では、前の山口先生の講義内容を踏まえ、医療機器の申請プロセス全体を復習する形で導入がなされました。講義では、特に設計・開発段階における「品質の作り込み」の重要性が強調され、設計インプット・アウトプット、検証・妥当性確認といった各プロセスが、医療機器の信頼性をどのように支えているのかを具体的に学ぶことができました。QMS省令とISO13485との対応関係についても丁寧な解説があり、制度と実務のつながりを理解する手助けとなりました。終盤では、最近の動向として、EUにおいてAI規制法が採択されたことが紹介され、その影響が今後日本にどのように及ぶか注視すべきであるという示唆がありました。
質疑応答では、「研究段階で実施していたデータを設計管理上の記録として活用できるか」という問いに対し、「可能であれば、なるべく早い段階で正式な設計管理の記録として着手し、記録を残すことが重要である」との助言がありました。

3限目 AI医療機器の審査
岡﨑 譲 先生
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)
AI医療機器の審査について、PMDAの岡﨑譲先生からご講義をいただきました。規制については、関連するガイドラインを丁寧に紹介いただきながら、その背景や考え方を含めて詳しく解説されました。審査においては、開発コンセプトや設計コンセプトが極めて重要であり、これらが承認審査のポイントとなることが示されました。AIを用いたプログラムには、学習により性能が変化しうる「可塑性」や「ブラックボックス性」といった特徴があるため、審査の焦点はAIそのものではなく、医療機器として患者にとって安全かつ有効かであるという視点が強調されました。単なる技術導入ではなく、社会実装を見据えたうえで、実用性と安全性を両立した設計が求められていると実感する内容でした。

4限目 医療機器開発におけるサイバーセキュリティ
中里 俊章 先生
一般社団法人日本画像医療システム工業会
日本の医療機器サイバーセキュリティ分野の第一人者である中里先生からご講義いただきました。医療機器においては従来の「品質」「安全性」に加え、サイバー攻撃への備えが不可欠であるという現状が示され、特にネットワーク接続機器の増加によって、医療機関が標的となるリスクが高まっていることが指摘されました。講義では、国内外の事件や米国FDAやIMDRFのガイドライン、リスクベースアプローチの考え方など、国際的な規制動向が紹介されました。サイバーセキュリティは単なる機能追加ではなく、「リスクマネジメントの一部」として、製品設計の初期段階から一貫して組み込むこと(セキュリティ・バイ・デザイン)が強調されました。チェックリストによる対応、脆弱性対策の実例(たとえばWindows Updateの未対応事例)など、実務に即した内容も含まれており、特に設計文書や責任体制の明文化が重要であると説かれました。

5限目 プログラム医療機器における必須知識
大竹 正規 先生
GEへルスケア・ジャパン株式会社
本日の最終講義は、大竹先生より「プログラム医療機器における必須知識」についてご講義いただきました。講義では、プログラム医療機器の該当性を判断するための4つの観点をもとに、フローチャート形式でわかりやすく読み解いていただきました。近年は医療とICTの融合が急速に進んでおり、ソフトウェア単体で医療機器として承認を得る事例も増えています。そうした中、従来の法制度だけでなく、社会動向を見据えた柔軟な理解が求められていることを実感しました。また、講義内ではサイバーセキュリティの重要性も強調され、特にAIを含むプログラム医療機器においては、薬事・診療報酬の両面から“質”をいかに担保するかが今後の大きな課題であると指摘されました。
質疑応答では、「医療機器に該当しないヘルスソフトウェアに対しても国際規格(ISO/IEC 81001-5-1、62304など)の適用は一般的か」との問いがあり、大竹先生からは「現在整備が進められている段階」とのご回答がありました。
次回は「医療機器と臨床評価」、「リスクマネジメントとISO14971」、「リスクマネジメントGWに向けて」、「MDD Group Working – I 〜リスクマネジメント実習(市販前編)」について座学とグループワーキングにて学んでいきます。
メディカルデバイスデザインコース2025運営チーム