【MDD Diary 2020】#7 (2020/07/18)「医療機器開発のマネジメント3」

2020-07-24

本日はMDD2020 「医療機器開発のマネジメント」第3日目でした!


1限目はキヤノンメディカルシステムズ株式会社より中里俊章先生をお招きして、「医療機器開発におけるサイバーセキュリティ」 と題してご講義いただきました。

 

医療機器におけるサイバーセキュリティの必要性やそのベースラインについて、具体的に何をすればいいのかという視点で世界の動向をもとにご説明いただきました。ご講義の中で、「2011年に、インスリンポンプの投与量を遠隔操作で変更可能であることをセキュリティの専門家が実証した」という話をご紹介いただきました。まるで映画のようなことが本当に起こり得ると知り、空恐ろしい気がしました。医療機器として臨床現場で使用されているものは、品質、性能や電気安全等に関する厳格な試験を経ており、ユーザビリティも考慮されたものであると、これまでの講義で学んできました。今日はこれらに加えてサイバーセキュリティに関する対策も重要であり、そこに脆弱性がある医療機器は患者さんの命をおびやかす恐ろしいものになってしまうことを学びました。近年、遠隔治療、AI診断などに関する機器が次々に開発され、実際の臨床現場で使用されるようになってきました。これらのイノベーションが人類にもたらす恩恵は非常に大きく、今後も開発は加速していくものと思われます。医療機器のサイバーセキュリティについて日本は遅れているとのことでしたが、今後3年程度をめどに、「医療機器のサイバーセキュリティの原則及び実践(IMDRFガイダンス)」が導入されると教えていただきました。日本でも、優れた医療機器の恩恵を誰もが安全に享受できる環境が構築されることを願っています。

 

2限目は医薬品医療機器総合機構(PMDA)より金澤由基子先生をお招きして、「生物学的安全性試験」と題してご講義いただきました。

生物学的安全性試験の必要性、関連法規等の概要について、そして「細胞毒性試験」「感作性試験」等の個々の試験方法やそれらの試験に用いる試料の調製がどのようになされているかについても、先生のご経験を元に詳細に教えていただきました。試験の一覧表を提示いただいたときは、種類が非常に多いことに驚きましたが、人工関節やペースメーカーなどの半永久的に体内に留置するものから、点滴の針やコンタクトレンズなど一過性に使用するものまで、医療機器の種類が多岐に渡っていることを考えると納得できました。また、「金属ステントを装着したデリバリーシステム」に代表される医療機器の組み合わせの場合は、正確に機器を評価するために試験方法に注意する必要があり、リスクが異なる場合ははじめから別々に評価すべき場合があることも教えていただきました。生物学的安全性試験は医療機器の承認申請のための非臨床試験のひとつとして位置づけられ、実際に患者さんに触れる機器として使用可能かを判断するものとして、その果たす役割は非常に大きいものであると感じました。一方で、欧米を中心にウサギなどの動物を試験で使用することが難しくなりつつあり、この代替として3次元皮膚モデルを使用する選択肢があることについても言及いただきました。現時点ではかなり費用もかかるとのことでしたが、動物を用いた試験と組み合わせることで、試験期間の短縮や動物試験数の減少などにつながることも期待できるのではないかと思いました。

 

3限目は医薬品医療機器総合機構(PMDA)より方眞美先生をお招きして、「医療機器と臨床評価」と題してご講義いただきました。

医療機器は医薬品医療機器法により、その品質、有効性及び安全性が確保され、保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制が行われています。また医療機器は4つのクラスに分類され、クラスが上がるにつれてリスクに応じた審査や規制のハードルが上がります。どのような場合は非臨床で説明できるのか、なぜ臨床での評価を行わなければならないのか、臨床で評価を行うことでどのようなメリットがあるのかについて、基本的な考え方をお示しいただきました。さらに、実際に存在する多くの事例を元に、臨床評価の設計方法や判断のポイント等について具体的にご説明いただきました。デバイスによっては、初回承認時に限定的な使用となり、市販後の調査をもとに適用が拡大していくという流れも増えつつあります。当然と言えば当然ですが、そもそも何を示すために臨床試験を行うのか、そのためにどのようなデータを集めるのか、これらのことが整理されていることが、臨床評価を効率よく進めるために重要であるということがあらためてよくわかりました。市販前に評価できるハザードには限界があり、市販後のデータ収集も非常に重要であることも理解できました。またご講義終盤には、先駆け審査指定制度など新しい制度についてもご紹介いただき、日本において新しい医療機器の実用化が進みやすくなる環境整備が、審査を担う側でも多角的に行われている現状を知ることができました。

 

 

4限目は京セラ株式会社より谷岡寛子先生をお招きして、「医療機器開発と保険償還」と題してご講義いただきました。

医療機器の開発から販売までの各過程における課題と保険償還制度について、企業で薬事を担当される立場から、経験を元にわかりやすくご講義いただきました。医療機器でない一般の製品であっても、必ずしも価格は生産者や販売者が自由に設定できるわけではなく、実際には市場原理で価格が決定されてしまうことが多いように思えます。医療機器の世界では基本的に市場原理で価格が決定されるということはありませんが、特定保険医療材料の場合、保険償還価格という価格に基づき実際の販売価格が決定されていることがほとんどです。また、保険償還価格は2年ごとの診療報酬改定の際に再算定が行われ、基本的には価格が引き下げられる方向になるというのが現実です。価格の下落が不可避でありながら、利益を維持して製品を継続的かつ安定的に臨床現場に供給するためにどのような戦略が必要か、医療機器製造販売を担うメーカーにとって、ある意味永遠の課題かもしれません。「よいものは高く売れる」ということを実現させるためには、いかに「よいもの」であるかを示すかも重要なことだと考えます。近年、チャレンジ申請という新たな制度が作られ、承認申請時に臨床的有用性の証明が困難であった場合は、使用実績を踏まえた再評価を受けることができるようになったそうです。運用はこれから進んでいくそうですが、医療を受ける患者さんに優れた医療機器を安定的に届けるためにも、医療機器を開発する側にとって有益な制度として確立されることを願っています。

 

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2020.7.18

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Written by team MDD