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【MDD Diary 2021】#3 (2021/06/19)

2021-06-19

本日はModule1 〜医療機器開発のための臨床医学〜第3日目~でした。

「消化器内視鏡機器の役割と今後の展開」
林義人先生 大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学

内視鏡には診断と治療という2つの役割があり、まずは診断の際に有用なNBI(Narrow Band Imaging)と呼ばれる、粘膜表層の毛細血管と粘膜微細模様が強調して表示される技術についてご紹介いただきました。そして、ESD(Endoscopic Submucosal Dissection)と呼ばれる内視鏡的粘膜下層剥離術という治療について、手術動画を見ながらその手技について詳細に教えていただきました。また講義後半の各論では、胃癌・食道癌・大腸癌に対する内視鏡診療についてご説明いただき、大腸癌のESDで用いられる、先端から送水する機能を備える高周波ナイフ(フラッシュナイフBT)や、穿孔リスクを低減するために先端が絶縁体となっている高周波ナイフ(ITナイフnano)などについてもご紹介いただきました。AIによる画像診断や今後の展開が期待される領域ですね。

「消化器外科の臨床現場と医療機器」
高橋秀和先生 大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学

講義冒頭で、低侵襲や早期回復といった腹腔鏡下手術の特徴や、近年実施件数が増加している現状についてご説明いただきました。続いて、腹腔鏡下手術で使用される超音波凝固切開装置や、消化管吻合時に用いる自動吻合器などのエナジーデバイスについて、実際の手術動画を用いてご説明いただきました。器械吻合の有用性については、従来の手縫い吻合をしている動画をお示しいただきながら、両者の差についてわかりやすく解説していただきました。講義後半には、ICG(Indocyanine Green)やALA(5-アミノレブリン酸)を用いたナビゲーションサージャリーや、エナジーデバイスを使用した際に生じるサージカルスモークといった、大変興味深いお話も聞かせていただきました。

「精神科医学の臨床と医療機器」
畑真弘先生 大阪大学大学院医学系研究科精神医学

はじめに、精神科で多くみられる疾患である統合失調症とうつ病の病態生理や症状についてご説明いただいた後、反復経頭蓋磁気刺激装置(rTMS)や経頭蓋直流電気刺激(tDCS)といったうつ病の新しい生理学的治療についてご紹介いただきました。講義後半では、アルツハイマー型認知症について、その臨床経過や、診断のためのMRI・SPECT・FDG-PET・Amyloid-PETといった脳画像検査、日本で承認されている治療薬等、幅広くご説明いただきました。さらに、安静時脳波のデータをAIを用いて解析することで認知症の診断を行うという最新の研究や、前額部に装着することで医療機器と同じ計測精度を持つというパッチ式脳波センサ等についてもご紹介いただきました。

「人工関節治療の臨床現場と医療機器」
安藤渉先生 大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(整形外科)

はじめに、関節の構造から人工関節で治療する疾患、人工関節の手術件数等についてご説明いただきました。そして、人工股関節の材質や構造の変遷を辿りながら、これまでの改良の歴史についてご紹介いただきました。また、人工関節置換術の術前計画や術後シミュレーション、術中ナビゲーションに使用されているCAOS(Computer Assisted Orthopedic Surgery)と呼ばれる手術方法についても教えていただきました。さらに、整形外科領域におけるロボット支援下手術の例として、ロボティックアームによる手術器械の制御及び制動を行うMakoシステムを用いた人工関節置換術(2019年保険適用)についてご紹介いただきました(参考:人口膝関節用材料-手術用支援機器専用型)。

6月26日は救急医学、泌尿器科学、内分泌・代謝内科学、脳神経外科学について学びます。

2021.6.19
メディカルデバイスデザインコース2021運営チーム