【MDD Diary 2021】#4 (2021/06/26)
2021-06-26
本日はModule1 〜医療機器開発のための臨床医学〜第4日目~でした。
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舘野丈太郎先生 大阪大学大学院医学系研究科救急医学
外傷による出血性ショックの実際の症例について、救命センター到着直後の診療・検査の場面から治療までを、動画を用いて詳細に解説していただきました。Damage Control Surgery(DCS)と呼ばれる重症外傷患者に対する救命を目的とした治療の実際もご紹介いただき、腸管切除後、腹部開放創に対して腹部開放創用ドレッシングキット(販売名:ABTHERAドレッシングキット)による陰圧閉鎖療法を実施し、術後数日かけて徐々に閉創していく様子を知ることができました。日本における救急医療は外傷救急から疾病救急へ移行しつつあり、若手医師が外傷外科手術の経験を積む機会が減っている現状があるそうです。外科医の減少とも通ずるところがありますが、重篤な外傷に対応できる、高度な技術を有する救急医の育成も今後の医療の課題であると痛感しました。
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河嶋厚成先生 大阪大学大学院医学系研究科泌尿器科学
前立腺癌、腎細胞癌、膀胱癌の解剖生理から、疫学、検査、診断、治療に至るまでについて詳細に教えていただきました。特に、Da Vinciを使用した前立腺全摘除術、腎癌に対する後腹膜鏡下腎摘除術、膀胱癌に対する経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)については実際の手術動画を用いて、術者視点で詳しく解説していただきました。また、尿管鏡による腎盂尿管癌の診断の様子なども見せていただき、泌尿器科領域では内視鏡、腹腔鏡・後腹膜鏡、ロボット、開腹とさまざまなアプローチで診断・治療が行われていることを知りました。さらに、術中ナビゲーションシステムとして、IRIS尿管照明用カテーテルという尿管の位置を容易に同定できるデバイスについても教えていただきました。
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宮下和幸先生 大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学
糖尿病の病態および急性・慢性合併症について解説していただいたのち、血糖測定とインスリン注射について詳しく教えていただきました。インスリン注射には、カートリッジ製剤をセットして使用するペン型デバイスや、皮下に穿刺したカニューレから少量ずつインスリンを持続的に注入するインスリンポンプが用いられており、2016年9月にはClosed-loop pumpと呼ばれる、血糖値に応じてインスリン量を調整するインスリンポンプがFDAで承認されたとのことでした。その他にも、マウスを用いた実験レベルではあるものの、スマートインスリンとよばれる、バイオセンサーを用いて血糖値の変化を感知し、それに応じて血糖降下作用が発現するインスリンの研究開発が進んでいるという大変興味深い話をお聞きすることができました。まさに、医薬品と医療機器が協業する分野だと感じます。
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押野悟先生 大阪大学大学院医学系研究科脳神経外科学
血管内治療において、動脈瘤の塞栓に用いるコイルの改良や、脳梗塞の血栓回収デバイス、そして巨大な脳動脈瘤を切らずに治すフローダイバーターシステムの進化など多くの医療機器の進歩があったことをご紹介いただきました。また、機能神経外科においては、運動異常症に対する深部脳刺激(DBS: Deep Brain Stimulation)のデバイスを用いた具体的な治療方法と、治療前後の実際の患者さんの症状の変化を動画でみせていただき、その効果に非常に驚かされました。さらに2019年に保険収載された新しい治療であるMRガイド下集束超音波治療(MRgFUS: Focused Ultra Sound)についてもご紹介いただきました。ご講義の終盤では、数多くの手術を執刀される脳神経外科医の立場から、手術室内の機器や道具に対する現状の課題を明らかにした上で、現場が求めるニーズについて非常に具体的に教えていただきました。
7月3日からModule2「医療機器開発のマネジメント」が始まります。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
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2021.6.26
メディカルデバイスデザインコース2021運営チーム