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【MDD Diary 2021】#14 (2021/10/02)

2021-10-3

本日はModule4 〜医療機器開発の実践〜第2日目~でした。

午前中はMDD Group Working – Ⅵ ~ 医療機器開発と事業化 ~を実施しました。Module2のリスクマネジメント、申請・照会対応のグループワーキングからロングストーリーとして続けてきた「カテーテル治療デバイス」と「治療アプリ」について、8つのグループに分かれて、財務諸表を睨みながら事業計画を作成しました。カテーテル治療デバイスのシナリオでは、販売するデバイスの数と販売体制がマッチしているか、がひとつのポイントでした。治療デバイスのシナリオでは、そもそも医療機器としてB2B(B2D2P)で医療機関に届けるのか、はたまたヘルスケアアプリとして、B2C(B2P)で患者さんまたは将来患者になり得る人に直接届けるのかが、ひとつのポイントになりました。医療機器事業が他のビジネスと異なる点として、基本的に国内では保険償還価格として価格が決められているということがあります。メーカーにとっては有利にも不利にもなり得ますが、事業計画の段階である程度この「価格(デバイスあるいはそれにより提供されるサービスのもつ価値)」というものを、どれだけ予測できるかが、その後のビジネスに大きく影響することが今回のワーキングの主題でした。今日のワーキングでは「この程度の価格で販売すればこの程度の売上・利益が見込める」ということがわかりましたが、来週のグループワーキング「医療機器開発のための保険戦略」では、実際にこの価格で販売できるかをさまざまな角度から検討したいと思います。

講師
ファシリテータ
グループワーキングの様子
ファシリテータ
ファシリテータ
1-2限目 「医療機器開発と事業化」
吉田智之先生(株式会社小宮コンサルタンツ)

グループワーキングに先立ち、事業計画策定のポイント、事業価値評価、資金調達のポイント、出口戦略の項目についてご講義いただきました。資金計画立案の際には黒字化だけにとらわれることなく、赤字となっても成長投資として必要なものか、また成長にきちんと比例した変動を認識できているか、などの視点も必要とのことでした。そして何より、事業成功のカギとなるのは、ビジネスを通して何をやりたいのかをいう志をリーダーが明確に持っていることであり、その志を共有する仲間とともに、事業を成功に導く体制を確立していくことが重要であるとのことでした。

3-4限目 医療機器開発のマーケティング①②
宮坂強先生(サムエルプランニング株式会社)

マーケティングの視点から、医療機器開発・事業化についてご講義いただきました。前半は、世界の医療機器市場の概要について、市場成長率や特許数、企業再編、事業戦略などの切り口からご紹介いただき、続いて米国の医療機器産業におけるスタートアップ、医工連携のエコシステム、大手企業のマーケティングの役割といった特徴についてご紹介いただきました。医療機器開発を成功に導くにはチーム編成が非常に重要であり、技術的要素を支えるエンジニアリング、知財・財務などの部門に加え、臨床現場との関係構築も非常に重要であること、そしてその中でもマーケティングは、ニーズ抽出や市場分析による事業性評価を行い、各ステージにおけるゲート管理を担う非常に重要な役割があるということでした。
後半は、マーケティングの方法として、開発製品の環境分析を行う3C分析や、マクロの視点から市場環境の分析を行うPEST分析などについて、具体例を挙げてご説明いただきました。また事業化の成功を握る出口戦略を考える上でもマーケティングが果たす役割が大きいということを教えていただきました。

5限目 AI内視鏡で実現する医療の未来
三澤将史先生(昭和大学横浜市北部病院)

いまやAIは我々の生活に浸透した技術であり、専門家でなくても“AI内視鏡”という言葉から製品をイメージすることができるかもしれません。しかし、先生が開発に着手された2013年ごろの社会の認識は決してそうではなく、協力企業を見つけることも、薬事申請のための資金を得ることも難しいなど数多くの壁があったそうです。また、AI構築のためには、膨大な学習用データを準備する必要があり、それはAIの精度を決定する非常に重要なものであるため、先生ご自身がその作業に携わり多くの時間を費やしてこられたそうです。さまざまな困難な中でも決してあきらめることなく、精度の高い大腸内視鏡診療の実現が患者さんに有益であるとの信念を持ち続け、世界に先駆けてAI内視鏡を社会実装されたことに感銘を受けました。

10月9日は、MDD Group Working – Ⅶ ~医療機器開発のための保険戦略①②です。保険制度について1日かけてじっくり学びます。

2021.10.2
メディカルデバイスデザインコース2021運営チーム