【MDD Diary 2022】#3 (2022/06/11)
2022-06-11
本日はModule1 〜医療機器開発のための臨床医学〜第3日目~でした。
1限目 産科婦人科領域の臨床現場と医療機器
木村 正 先生
大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学
妊娠、分娩という非常に複雑な過程において、母子のモニタリングというのは難しいものです。そんな中、近年の死産率の低下、安全な出産に寄与している胎児モニタリング技術について解説していただきました。胎児心拍モニタリングは胎児の状態を良好と判断するには良い検査ですが、脳性麻痺の発生抑制に対する有効性はないといった課題がありました。そこで脳性麻痺の原因となる分娩時の低酸素状態を予測するために、胎児心電図のSTレベル変化を見る技術(STAN)や、直接胎児の酸素分圧を測る方法などが研究されているそうです。子宮収縮に伴う筋肉の電位変化を分析し、分娩時の様子を見える化するシート型ワイヤレス子宮筋電センサの開発を進められているということについてもお話いただきました。講義後半ではリプロダクティブヘルス・ライツの観点から世界での分娩事情や今後の課題、子宮頸がん検診における医療格差の是正に向けたスマートフォン画像診断の構想などを聞かせていただきました。
2限目 泌尿器科領域の臨床と医療機器
河嶋 厚成 先生
大阪大学大学院医学系研究科泌尿器科学
前立腺癌、腎細胞癌、膀胱癌といった尿路性器癌の検査、診断、治療について解説していただきました。Da Vinci サージカルシステムを使用した前立腺全摘除術、後腹膜鏡下腎摘除術については実際の手術動画を見ながら、術者視点を交えて特徴を教えていただきました。経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)の手法についても、動画に加え、使用されている機器の発展とともに詳しく学びました。また、放射線療法、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的とするPET検査、凍結療法などさまざまなアプローチでの診断・治療を知ることができました。さらに、排尿機能の仕組みを始め、加齢にともなう下部尿路症状にまつわる前立腺肥大症、過活動膀胱といったよくみられる病気の治療や使用される機器についても学びました。術中ナビゲーションシステムとして、尿管の位置特定を容易にするカテーテルデバイスもご紹介いただきました。
3限目 消化器外科の臨床現場と医療機器
高橋 秀和 先生
大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学
ロボットや映像技術の発展が消化器外科治療の進歩に大きく貢献していることについて説明していただきました。近年では低侵襲性・早期回復が特徴である腹腔鏡手術が普及していること、手術時の血管処理に用いる超音波凝固切開装置の歴史と進化、消化管吻合の原理や器械吻合法等について、実際の手術動画を用いてわかりやすくご教示いただきました。講義後半ではICG(Indocyanine Green)やALA(5-アミノレブリン酸)といった試薬、赤外観察カメラシステムを用いた蛍光イメージングを手術に応用し、病変の同定を助けるナビゲーションサージェリーについて解説していただきました。また、エナジーデバイス使用中に発生するサージカルスモークを除去するための装置を、MDDコース受講生と開発されたお話も聞かせていただきました。
4限目 心臓血管外科手術と医療機器
戸田 宏一 先生
大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科学
講義前半では、循環器の外科治療の対象となる冠動脈疾患、弁膜症、心筋症、大動脈疾患、先天性疾患について、また、それぞれに対して用いられる治療法を説明していただきました。心拍動下冠動脈バイパス術(off-pump CABG)、低侵襲心臓外科手術(MICS)、大動脈弁狭窄症に対する超低侵襲治療のTAVI等について、実際の手術動画からわかりやすくご教示いただきました。病気に関することだけではなく心臓の解剖から説明してくださったことでより理解が深まりました。講義後半では、重症心不全に対する治療としての心移植や体外設置型・体内植込み型の人工心臓(LVAD)の歴史と現状、心筋シートを用いた心筋再生医療などを説明していただきました。特に世界で初めて行われたiPS細胞から作成した心筋シートの移植に関するお話は大変貴重でした。
来週はModule1最終日です。「救命救急と医療機器」、「精神科医学の臨床と医療機器」、「IVRの実際とデバイスの現状」、「脳神経外科領域の臨床と医療機器」について学びます。
メディカルデバイスデザインコース2022運営チーム