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【MDD Diary 2022】#4 (2022/06/18)

2022-06-19

本日はModule1 〜医療機器開発のための臨床医学〜最終日~でした。

1限目 救命救急と医療機器
舘野丈太郎 先生
大阪大学大学院医学系研究科救急医学

救命救急の現場で用いられる医療機器の現状と展望についてご紹介いただきました。救急搬送件数は近年急激に増加していますが、従来大きな割合を占めていた外因性疾患(交通事故による外傷など)は減少し、内因性疾患の件数が増加しているということです。そのため、若手医師が外傷手術の経験を積む機会が少なくなっており、ブタを用いたシミュレーショントレーニングなどが行われているということを知りました。外傷の手術においては、Damage Controlという概念で、一期的にすべてを治すのではなく、まずは出血源を特定し、止血することで血圧などのvitalを保ち、命をつなぐということにフォーカスした手術を行うということでした。実際の手術の様子を参照しながら、医師、看護師、臨床工学技士、放射線技師などチームで行う外傷治療のアプローチについて学習しました。

2限目 精神科医学の臨床と医療機器
畑真弘 先生
大阪大学大学院医学系研究科精神医学

精神医学の臨床治療と、それに関連した医療機器について解説していただきました。精神医学は他の診療科に比べて人文学的側面が強く、薬物療法・精神療法が基礎的な治療法となるということです。しかしながら近年では、科学的機器を用いた治療法に発展がみられ、統合失調症やうつ病の治療において、経頭蓋に電気刺激を与える方法などが進化しつつあります。後半は認知症の診断と治療についてもご講義いただきました。診断プロセスには、まず問診による判断が必要となり、そのあと認知機能検査やMRIを用いた脳画像検査が行われます。脳波を解析することで認知症を予防することができるという可能性があるのではないかということで、簡易に脳波を計測するための新たな医療機器の開発についてもご講義いただきました。

3限目 IVRの実際とデバイスの現状
田中会秀 先生
大阪大学大学院医学系研究科放射線医学

外科治療・薬物療法・放射線治療に並ぶ治療の4本目の柱であるIVR(Interventional Radiology:画像下治療)についてご紹介いただきました。IVRは全身の様々な疾患を対象とし、X線透視や超音波、CTなどをリアルタイムで利用することで、非常に小さな穴から低侵襲で治療や生検などの診断を行えることが特徴です。画像診断装置の他に、血管形成術にカテーテルやステント、止血術に金属や粒子状、液状の塞栓物質というように、多彩な機器が使用されており、医用工学的要素が大きいと感じました。日本においては、国内で開発された機器が少ないこと、さまざまな事情により適応外使用のまま臨床使用されるデバイスがあることなどが課題とのことでした。新たなデバイスが開発されることで、治療の安全性や質の担保に繋がることが望まれています。

4限目 脳神経外科領域の臨床と医療機器
押野悟 先生
大阪大学大学院医学系研究科脳神経外科学

血管内治療と機能神経外科で用いられる医療機器について、ユーザーの視点からご紹介いただきました。脳神経外科では、診断から治療まで多くのデバイスが使用されています。脳血管障害に対し、血管の中からアプローチする血管内治療が現在増加しています。動脈瘤の塞栓に用いるコイルや脳梗塞の血栓回収デバイス、巨大な脳動脈瘤を切らずに治すフローダイバーターシステムなど多くの医療機器が開発され日々進歩しています。機能神経外科における運動異常症に対する外科治療では、デバイスを用いた深部脳刺激(DBS: Deep Brain Stimulation)や、2019年に保険が適用された新しい治療であるMRガイド下集束超音波治療(MRgFUS: Focused Ultra Sound)などが行われているとのことでした。術者として日常的に感じる手術室の環境についてさまざまな角度からお話いただき、まだまだ解決し得る課題やニーズが溢れていると感じました。

再来週7月2日からはModule2 ~医療機器開発のマネジメント~が始まります。

初日は「医療機器開発のプロジェクトマネージメント 〜ニーズ探索・コンセプトデザイン・開発インプット〜」、「医療機器開発と医療機器製造販売業〜業態・業許可・遵守事項〜」、「医療機器における承認・認証制度」、「プログラム医療機器における必須知識」について学びます。

メディカルデバイスデザインコース2022運営チーム