【MDD Diary 2023】#15 (2023/10/14)
2023-10-19
本日はModule4 〜医療機器開発の実践〜3日目~でした。
1~4限目 Group Working – Ⅶ,Ⅷ 医療機器開発のための保険戦略
一戸 和成 リゾートトラスト株式会社
1~4限目 Group Working – Ⅶ,Ⅷ 医療機器開発のための保険戦略
笹田 学 厚生労働省
午前中最初の講義では、一戸先生より「医療機器と診療報酬制度」というテーマでご講義いただきました。診療報酬は「技術・サービスへの対価」および「物への対価」という側面だけでなく、医療サービスの質・量や医療提供体制の構築、財政にも大きく影響を与える重要なものであることをご教示いただきました。また、今年度の診療報酬改定や、新しい医療技術の導入や、無駄な医療費を膨らませないための医療保険外併用療養費、先進医療などについても、国としての方向性と併せてご説明いただきました。
次に、笹田先生より「医療機器の保険償還と材料価格制度」というテーマでご講義いただきました。「物への対価」に相当する特定保険医療材料には原価計算方式と類似機能区分比較方式が存在します。一方で、「技術・サービスへの対価」として評価される技術料包括については、機器自体に価格が設定されるわけではなく、その機器を使用する診療に対して保険点数が付与されます。医療機器を開発する際は、その機器がどちらで評価されるのが望ましいか、そして、特定保険医療材料となる場合には、類似するものがあるのか、その差分に対して加算される可能性があるのかなどについて、事前に十分検討しなければいけないことを教えていただきました。
1~4限目 Group Working – Ⅶ,Ⅷ 医療機器開発のための保険戦略
大竹 正規 GEへルスケア・ジャパン株式会社
午後最初の講義では、大竹先生より、保険承認を踏まえた「デジタルヘルスと保険」というテーマでご講義いただきました。デジタルヘルスという新しい技術に対する保険上の評価はまさに現在進行形で、講義冒頭ではアカデミア、中医協それぞれにおいてどのような考えをもって議論が進められているのか説明いただきました。プログラム医療機器の評価ポイントの明確化が課題となっている状況を踏まえ、いくつかの実例を通してアプリの保険適用のルール化が求められていることや、健康アプリとの線引きの難しさなど具体的なポイントを知ることができました。デジタルヘルスの保険適用に関する事例はまだわずかですが、今後もより時代に即した制度が構築されていくことが期待されます。臨床的な有用性をどのように診療報酬に反映させ、持続可能なシステムを設計していくかという保険戦略が必要になりそうです。
Module2の承認審査のプロセスでは、先行事例との差分が少ない方が追加で示すべき事項も減り、ハードルが低くなりますが、一方で、保険償還のプロセスでは、今までになく画期的なもので、臨床的にもこれまでにみられなかった新しい効果が見込まれる方がより高い評価が得られます。ここには明確なtrade offが存在し、それゆえに薬事戦略の段階で、いたずらに先行例との類似性をアピールするのではなく、その機器の臨床的アウトプット(=開発した医療機器の価値)をどう示すのかというところまで見通した戦略を立てる必要があります。
レクチャーに続いて、治療アプリのシナリオについて、保険適用希望区分や算定方式、点数設定の背景・根拠や保険償還取得後の中長期戦略などについてディスカッションを行いました。プログラム医療機器については先行事例が限られていたり、承認のルールがまだまだ発展途上ということもあり、検討は難解さを極めましたが、各グループともこれまで6回にわたるグループワーキングで培ったチームワークを活かして取り組まれていました。最前線で活躍されている専門家の先生方から補足やご指摘、講評をいただいたことで、医療機器の保険戦略の理解を実践的に深められたのではないかと思います。
次回は「医療機器開発のマーケティング」、「アルツハイマー病における血液バイオマーカーの確立」、「逆算して開発をスタートした新規クラスIV心臓血管修復パッチ」、「患者適合型カッティングガイドとインプラントの開発・実用化」、「AI内視鏡で実現する医療の未来」、「けいれん性発声障害の患者さんのための新規医療機器『チタンブリッジ』の開発」について学びます。実際に医療機器を開発し、臨床現場に届けるというプロセスを実践されている先生方をお招きし、開発に至ったきっかけ、コンセプトづくりから開発内容、承認そして保険適用までのご苦労、さらに今後の展望など、これまで学んできた医療機器開発の集大成としてご講義いただきます。
5月から始まりましたMDDコース2023も来週で最終日となります。最後までよろしくお願い申し上げます。
メディカルデバイスデザインコース2023運営チーム