【MDD Diary 2023】#4 (2023/7/1)
2023-07-8
本日はModule1 〜医療機器開発のための臨床医学〜4日目、最終日でした。
1限目 精神医学の臨床と医療機器
畑 真弘 先生
大阪大学大学院医学系研究科精神医学
精神医学は他の診療科に比べ、哲学に近い人文学的な要素を強く持っています。しかしながら近年では、医療機器を用いた科学的な治療法が注目を集めています。例えば統合失調症やうつ病の治療において、医療機器を用いて脳の細胞に電気刺激を与える方法などが考案されています。
講義の後半では、認知症の診断と実際の治療の流れについてもご講義いただきました。脳波を解析することで認知症予防に貢献できる可能性があるのではないかということで、本来であれば測定環境を厳格に整える必要がある脳波を簡易に計測するための新たな医療機器の開発についてもご講義いただきました。加えて、ディープラーニングによって患者さんの脳波の分析がより詳細にできるようになる可能性を伺い、精神医学の新たな局面への期待が高まりました。
2限目 産科婦人科領域の臨床現場と医療機器
木村 正 先生
大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学
分娩においては、胎児の安全を確保することが最大の課題です。胎児心拍モニタリングは胎児の状態を良好と判断するには良い検査ですが、一方で、脳性麻痺の発生抑制に対する明らかな有効性は確認できていないといった課題がありました。そこで脳性麻痺の原因となる分娩時の低酸素状態を予測するために、胎児心電図のSTレベル変化を見る技術(STAN)や、直接胎児の酸素分圧を測る方法などが研究されているそうです。
講義後半ではリプロダクティブヘルス・ライツの観点から世界での分娩事情や今後の課題、子宮頸がん検診における医療格差の是正に向けたスマートフォン画像診断の構想などを聞かせていただきました。妊娠・出産をはじめ、世界中の女性の健康を守るという木村先生の熱い想いを講義から感じました。
3限目 小児外科の臨床現場と医療機器
田附 裕子 先生
大阪大学大学院医学系研究科外科学講座小児成育外科学
小児外科は成人と比べて、体が小さい、バイタルサインの基準値が異なる、患者さんが成長するといった特殊な要素により、診療方法や診療に用いる医療機器に至るまで、全く違った配慮が必要になるということを具体的な疾患・治療の画像を見せていただきながら学びました。また、それぞれの治療の場面で用いられている医療機器に対して具体的な課題をわかりやすく説明いただきました。
このような特殊性がありながらも、患者さんの絶対数が少ないため、メーカーから注目を得られにくく、現場では成人を対象として設計された機器を工夫しながら活用せざるを得ない状況になっていることがわかりました。
しかし未来を創る子どもを守るという社会的意義は大きい分野であり、小児に対しても利用しやすい医療機器の開発が望まれます。
4限目 救命救急と医療機器
舘野 丈太郎 先生
大阪大学大学院医学系研究科救急医学
近年、救急搬送件数は急激に増加していますが、従来大きな割合を占めていた外因性疾患(交通事故による外傷など)は減少し、内因性疾患の件数が増加しています。そのため、若手医師が外傷手術の経験を積む機会が少なくなっており、ブタを用いたシミュレーショントレーニングなどが行われています。
講義の後半には実際の救命救急センターの様子などを紹介いただきどのように現場が動いているかを使用されている医療機器と共に学ぶことができました。外傷の手術においては、損傷部位へのアクセスを残したまま治療が行えるようになった陰圧閉鎖療法という画期的な治療法などについても解説いただきました。
次回からModule2〜医療機器開発のマネジメントが始まります。
初日は「医療機器開発と医療機器製造販売業〜業態・業許可・遵守事項〜」、「医療機器開発のプロジェクトマネージメント 〜ニーズ探索・コンセプトデザイン・開発インプット〜」、「ユーザビリティエンジニアリングとIEC 62366-1」、「医療機器における電気安全とEMC(電磁両立性)の実際」、「プログラム医療機器における必須知識」について学びます。
メディカルデバイスデザインコース2023運営チーム