【MDD Diary 2020】#3(2020/06/13)「医療機器開発のための臨床医学3」

2020-06-15

本日はModule 1〜医療機器開発のための臨床医学〜第3日目~でした。

 1限目は大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学(整形外科)より安藤渉先生をお招きして、「整形外科の臨床現場と医療機器」と題してご講義いただきました。
 人工関節で治療する疾患について、その材質や本来の関節構造との比較に基づき、施術後のレントゲン画像を用いて詳しく教えていただきました。人工関節手術の件数のうち9割以上を占める股関節と膝関節を中心にご講義いただきました。
 人工股関節は、その開発の歴史をたどりながらご説明いただき、どのような改良を経て現在の形になったのかを詳しく学ぶことができました。材質や表面加工、固定様式などさまざまな要素において多くの改良が加えられてきたのを知り、人間の体がいかに複雑に成り立っているのかということを改めて感じました。日頃、股関節の動きを意識して生活していませんでしたが、人間が歩くことや座ることを担っているとても重要な部分であり、平均寿命の延伸に伴い人工股関節の耐久性はさらに重要になっていくだろう思いました。(Written by ur & ChiCo)

 

 2限目は大阪大学大学院医学系研究科 放射線統合医学講座(放射線医学)より東原大樹先生をお招きして,「IVR(Interventional Radiology)の実際とデバイスの現況」と題してご講義いただきました。
 IVR(画像下治療)は、全身の幅広い疾患を対象としていて”切らずに針穴で”行うために低侵襲であり、患者さんのQOL改善や早期社会復帰に有用な治療法として活躍の場が拡がっています。IVRではCTや血管造影などの画像支援装置、カテーテル、穿刺針、ステントなどの治療器具、塞栓物質や抗がん剤などの薬剤が使用され、講義ではそれらがどう使われているか、どのような効果があるかということについて実際の症例をベースに多数ご紹介いただきました。一方で、液体塞栓物質の多くが海外製で未承認であったり、デバイス・ラグが未だ残っていたりするということを課題として教えていただきました。今後IVRは更に拡がっていくと考えられるので、国内産の医療機器や薬剤の開発を期待したいところです。(Written by ai)
 講義の中で、特に興味深かったのは肝動脈塞栓療法(TACE)です。これは肝動脈を塞栓することで腫瘍組織への血液の供給を停止するものです。特に薬剤溶出性ビーズ(DEB)を用いたDEB-TACEは腫瘍組織に近い位置で塞栓するため、腫瘍への血液供給を限定的に停止することができ、全身への副作用を低減できる手法だそうです。一般的に抗がん剤は副作用が強いというイメージがありましたが、この手法ではその影響を抑えることができ、がんと闘う人たちにとって身体的な負担軽減に加え、精神的にも楽になる治療法ではないかと思いました。(Written by ur)

 

 3限目は大阪大学大学院医学系研究科 オンコロジーセンターより秋野祐一先生をお招きして、「放射線治療で求められる医療機器」と題してご講義いただきました。
 放射線治療ではがん細胞に放射線を照射してがん細胞を減らしていきます。1回の治療に要する時間が短いため外来通院が可能であることや、寝たままでも治療を受けられるため高齢の患者さんでも対象となることなどが特徴だそうです。放射線治療で使用される医療機器というと放射線を照射する装置がまず思い浮かんでいたのですが、講義では、患者さんの位置を固定し、正確に捉えるための医療機器についてもご紹介いただき勉強になりました。
 一方で、放射線治療に供する医療機器の精度管理はユーザー責任で現場のスタッフが行わなければいけないという点が印象に残りました。私も大学院での研究で精密機器と呼ばれるものを複数扱っており、メンテナンスも自分自身で行っていますが、その作業は非常に煩雑です。放射線治療では、機器やソフトウェアの不調が患者さんの命に関わるということもあり、メンテナンスの頻度が多く、多大な時間・労力を要しているとのことでした。機器自体の性能を更に上げていくだけでなく、メンテナンスなど作業者の負担を軽減するためのデバイス、ソフトウェアがあれば、より多くの患者さんに対して安全に治療を提供できることにつながるのではないかと感じました。(Written by ai)

 

 4限目は大阪大学大学院医学系研究科 脳神経外科学講座より押野悟先生をお招きして,「脳神経外科領域における医療機器」と題してご講義いただきました。
 脳神経外科領域での血管内治療にて用いるコイル、カテーテル、ステント等の進歩や、外科的手術、また機能神経外科でのデバイス治療についての紹介、さらには現場で診療・治療を行う医師の視点から新たな医療機器の種となるようなお話もしていただきました。
 脳神経外科手術において頭皮を切開する際の、毛髪の処理のお話が印象に残りました。昔は全剃毛されていたそうですが、最近は無剃毛の場合もあるとのことで、髪の毛を術野にかからないようにまとめたり、頭皮と毛髪を接着させたりするために良い方法があれば、ということも話されていました。手術現場を経験したことの無い私には思い浮かばないニーズだったので、大変興味深く勉強になりました。(Written by ai)
 大血管内の塞栓治療ではその症状に応じて様々な医療機器が用いられるそうです。その一つであるコイル塞栓デバイスは、筒状のカテーテルの中に形状記憶コイルが入っており、カテーテルから出てくると同時に丸まることで動脈瘤のスペースを埋めてしまうことが可能になります。またこのコイルは通電によって切り離されるよう改良された(detachable coil)ことで、広く用いられるようになったそうです。(Written by ur)

 

 

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ステイホームに慣れてきた今年は、梅雨も楽しめそうですね。

2020.6.13

MDD Diary 2020

 

Writers:

ai -分析化学、代謝物の解析に従事する背が高めの大学院生,

ur – バイオマーカーを探して毛髪分析に没頭する大学院生

 

Editors:

ChiCo & MDD brain KEI2