MDD Diary 2019 #4 (2019/06/29) 『医療機器開発のための臨床医学4』

2019-06-29

本日は大阪でG20サミットが開催されていました。その影響もあり、MDD大阪会場近くは、車両検問、車道のバリケード、多くの警察官による厳重警備など、テレビニュースのようなシーンが広がっていました。今回の大阪でのG20サミットの宣言が実現されて、世界がひとつになっていくといいなと思いました。
 

 
本日はModule 1〜医療機器開発のための臨床医学〜の第4日目でした。消化器外科学の高橋秀和 先生、放射線医学の東原大樹 先生、整形外科学の安藤渉 先生、心臓血管外科学の吉川泰司 先生にご講義いただきました。
 

 
Two big events took place in Osaka on this day under strict security measures; the G20 Summit and the 4th part of Module 1 in the MDD course. In the 4th (and last) part of Module 1, we had four interesting lectures covering topics in the fields of gastroenterological surgery, radiology, orthopedics, and cardiovascular surgery.

The first lecture was given by Professor Hidekazu Takahashi from the Department of Gastroenterological Surgery. Professor Takahashi introduced the field of gastroenterological surgery and the medical equipment that is commonly used in the field.

The second lecture was given by Professor Hiroki Higashihara from the Department of Radiology. Professor Higashihara talked about the current state of the field of Interventional Radiology (IVR) and the equipment used to conduct IVR procedures.

At lunchtime, the students and the staff were invited to a buffet where they got to know each other, network, and enjoy the delicious selection of food, drinks, and desserts. In addition, groups members got to know each other in preparation for the group activities scheduled for Module 2.

After lunch, the third lecture was given by Professor Wataru Ando from the Department of Orthopedics. Professor Ando talked about joint replacement procedures and focused on the equipment and artificial joints that are used in these procedures.

The fourth lecture was given by Professor Yasushi Yoshikawa from the Department of Cardiovascular Surgery. Professor Yoshikawa gave us a look into the history of the field of cardiovascular surgery, discussed common challenges for heart transplant surgery and the potential benefits of iPS cells in regenerative medicine.

With this, Module 1 is over and I am looking forward to starting Module 2 next week.

(written by Samar, a researcher in Osaka, a student in Kyoto, and an alien in Japan)
 
 1限目は消化器外科学の高橋秀和先生から『消化器外科の臨床現場と医療機器』と題してご講義いただきました。
 200年前、全身麻酔が可能になり始まった手術。その手術に用いられる機器について、歴史をたどりながら、詳しく教えていただきました。消化管の吻合について、実際の手術の様子を動画で見せていただきながら説明していただきました。手縫い吻合で、気を付けていることはやはり手振れだそうです。私も先日、初めて動物実験でラットの足の縫合にチャレンジしましたが、やはり手振れが気になり、とても神経を使う作業です。今では、器械での吻合も行われているそうですが、動画を見た印象では装置が大きく、とても時間がかかっている様子でした。ロボットのような高度な新技術だけでなく、今ある工学の技術ですぐにでも改善できることが手術現場にはまだあるのではないかと感じました。
(Written by なつ-工学と医学の融合分野で日々研究、国語が苦手な理系女子)
 
 消化器系癌診断で注目されるナビゲーションサージェリーについてもご講義いただきました。肝臓癌細胞が取りこむ蛍光色素(ICG)を用いた赤外観察カメラによるICG蛍光イメージングや、すべての癌細胞が多く産生する5-アミノレブリン酸(5-ALA)が青色光を取り込み、赤色光を発することから、これを光感受性物質として、癌細胞を赤色蛍光発色させる癌診断、光学力学診断(PDT)などが行われています。(さらに、特定波長光によって癌細胞に攻撃を与える治療も行われているようです。)また近年増加傾向である遠隔操作ロボット手術システムのda Vinciシステムを用いた外科手術についてもご講義いただきました。日本には、2019年春時点で300台程度導入されているとのことで、アメリカに次ぐ導入数となっています。Da Vinciは手首の稼働域が人体よりも格段に広く、手振れなしで繊細な手術が可能ですが、出血が多い手術の対応が難しいというお話もありました。
(Written by じゅり-技術×芸術×起業が人生テーマの30代研究者兼起業家(の卵))
 
 2限目は放射線医学の東原大樹先生から『IVR(画像下治療)の実際とデバイスの現況』と題してご講義いただきました。
 みなさんはIVRという医療についてご存知でしたか?私は名前を聞いたこともないし、内容についても知りませんでした。IVRは開腹したり、内視鏡を使うのではなく、カテーテルなどによる経皮的で低侵襲な治療です。これは、CTやX線透視の画像ガイド下で行われます。阪大病院には、2014年に開設したIVRセンターがあります。24時間緊急対応もしており、年間で1000件以上IVRを実施しているそうです。IVRはリンパ管を含めた血管系だけでなく臓器や骨、体腔などの非血管系も対象としています。IVRができることは多岐に渡り、①ステントやバルーンなどにより血管を広げる拡張術、②動脈瘤などを詰める・止血する塞栓術、③溜まった液体などを吸い出すドレナージ、④病変を灼いたり、凍らせたりするアブレーション、⑤血栓の補足と溶解、⑥生検のための試料採取、⑦異物の回収、⑩腸管などを自然につなぐ磁石吻合などが挙げられますが、他にも様々な疾病の治療に用いられる可能性があります。
 私の祖父が解離性大動脈瘤で亡くなっているので、もし治療となったらIVRでの塞栓術が使われたのかなと考え込んでしまいました。1週間ほど前から腹痛、胸痛があったようです。病院に行かなかったのでしょうがないのですが、もし受診していればどのような治療がありえたのだろうと少し思案したことがあったのですが、今日、3年越しにその答えが得られました。
(Written by じゅり-技術×芸術×起業が人生テーマの30代研究者兼起業家(の卵))
 
 3限目は整形外科学の安藤渉先生から『人工関節の臨床現場と医療機器』と題してご講義いただきました。
 血管が通っておらず、再生能に乏しい軟骨の損傷に関わる病気と医療機器、人工関節を用いた治療法についてご紹介いただきました。人工関節において、工夫がなされてきた点として、その材質、形状、表面加工が挙げられていました。また、耐久性を上げるためには、まさに関節の部分に当たる摺動面における摩耗をいかにして減らすかという点が非常に重要であるとのことでした。一方で、近年、再生医療による治療法の開発が進められています。自家細胞培養を移植する手法に加え、他家細胞培養による三次元人工組織の開発も成されています。人工関節の更なる発展に加え、再生医療による有効な治療法の確立にも期待が高まります。
(Written by ai-分析化学、代謝物の解析に従事する背が高めの大学院生)
 
 関節軟骨は血管がないので、再生することがなく、治療としては人工関節で対応することになるとのことです。幹細胞による再生は、外格の形成などで難易度が高いため、まだまだ人工関節が有用とのことでした。人工関節は部位別件数割合が膝、股関節が90%以上ですが、身体の全ての関節にそれぞれ対応した形状や材質、表面加工、ベアリング部、骨と人工関節の固定などを考えて、設計、手術計画を立てる必要があります。3Dプリンタ技術のおかげで形状や表面の加工は自由度が高まり、個人に合わせて作られるようになってきているそうです。また、材料についても副作用を生じることがある骨セメントを使わずに、三次元造形や多孔性金属コートにより対応できるようになり、ベアリングについても摩耗しないよう部品の材質と構造設計が非常に精密にできるようになっってきたそうです。手術計画立案にはITを活用したシミュレーションも導入されており、ナビゲーションを行うロボットが登場しているとのことでした。
(Written by じゅり-技術×芸術×起業が人生テーマの30代研究者兼起業家(の卵))
 
 4限目は心臓血管外科学の吉川泰司先生から『心臓血管外科の現場から』と題してご講義いただきました。
 心臓外科の歴史から始まり、人工心肺、心臓疾患と治療法、また新たな治療法として再生医療についてもご紹介いただきました。心疾患は死因の上位を占める疾患で、日本でも今後増えると予測されている重症心不全に対して、現在はドナーからの心臓移植もしくは補助人工心臓の植え込みによる治療が行われています。しかし、日本では心臓移植のドナーが著しく不足していること、人工心臓については移植適応患者のみが治療を受けられることが課題として挙げられていました。米国ではDestination Therapyとして、心臓移植の適応がない患者さんへの人工心臓植え込みが実施されているとのことです。また、新たな治療法として再生医療が挙げられていますが、講義ではiPS細胞からの心筋細胞の作成、大量培養についても紹介されていました。再生医療の確立、普及は現在ドナー不足で治療を受けることができていないような方にも福音となることが期待されます。
(Written by ai-分析化学、代謝物の解析に従事する背が高めの大学院生)
 
大阪会場では、ランチョンネットワーキングが開催され、講師の先生、卒業生の方々にもご出席いただきました。
短い時間ではありましたが、受講生の方々が笑顔で話しておられる姿が印象的でした。Module 2では、グループワーキングが予定されています。何を学ぶか、誰に学ぶか、そして誰と学ぶか。皆様の学びが少しでも深くなるよう願っております。
 


 
 
 来週からは、Module 2がはじまります。Module 2では医療機器開発において避けては通れないさまざまな法規制(regulation)について学びます。初日となる来週は、『医療機器における承認・認証制度』、『QMSとISO13485』、『医療機器製造販売業』、『プログラム医療機器』の4つの講義が予定されています。
 
今週の吹田キャンパス。ラベンダーが元気よく咲いており、近くのベンチに座ると癒しの香りに包まれました。もし吹田まで来られることがあれば行ってみてください〜(ICホールの前あたりです)
 

 
2019.6.29
MDD Diary 2019
Writer なつ-工学と医学の融合分野で日々研究、国語が苦手な理系女子
Writer じゅり-技術×芸術×起業が人生テーマの30代研究者兼起業家(の卵))
編集長 ChiCo