MDD Diary 2019 #6 (2019/07/13) 『医療機器開発のマネージメント 2 』
2019-07-16
今日は東京会場に参加させていただきました。
東京は少しどんよりとした空でしたが、会場近くではきれいな風鈴の音をきくことができました。
本日はModule 2 〜医療機器開発のマネージメント〜の2日目でした。医療機器安全研究所から萩原敏彦先生、一般財団法人 日本品質保証機構(JQA)から芝田侯生先生、株式会社UL Japanから吉田賢先生にご講義いただきました。
The 2nd part of Module 2 included, as usual, four lectures. Three lectures were presented at the Tokyo venue and one lecture at the Osaka venue. The lectures at the Tokyo venue were given by Mr. Toshihiko Hagiwara from the Medical Device Safety Research Institute and Dr. Ken Yoshida from UL Japan, Inc. The lecture at the Osaka venue was given by Mr. Kosei Shibata from the Japan Quality Assurance Organization (JQA).
1, 2限目は医療機器安全研究所 萩原敏彦先生から『リスクマネジメントとISO14971』『JIS T 0601-1:2017』と題してご講義いただきました。
1限目は、リスクマネジメントにおける重要な用語である「ハザード・危機状態・危害・リスク」について解説いただきました。リスクとは危険状態のことだと思っていましたが、危害の発生確率とその危害の重大さから算出するものだそうです。2限目は、医用電気機器および医用電気システムの基礎安全及び基本性能について規定するIEC 60601-1について、適用範囲、一般要求事項、プログラマブル電気医用システム、MEシステム、電磁両立性に特化してご講義いただきました。
1, 2限ともに、多くの身近な事例をご紹介いただきながら大変わかりやすく教えていただきました。それらを通じて、リスクマネジメントは危険な状態を防ぐためのものという漠然とした認識だったものが、丁寧にリスクを分析、評価、そしてコントロールしなければならないという認識へと変わりました。「完璧な商品はない。事故が起きたら、すぐにフィードバックし、対策を講じなければならない。」という先生の力強いお言葉が心に残りました。また、ME機器のユーザビリティについては、規格は存在するものの、まだまだ検討の余地があるそうです。そのような状況であってもユーザの安全を損なうことがないように、製造業者はユーザビリティを最大限に適用した製品開発を責任を持って行わなくてはならないのだと思いました。(Written by なつ & じゅり)
In the first and second lectures, Mr. Toshihiko Hagiwara talked about risk management and introduced the ISO 14971 and JIS T 0601-1:2017 standards. The ISO 14971 is an international standard for the application of risk management to medical devices, and JIS T 0601-1:2017 is a Japanese standard that defines the general requirements for basic safety and essential performance for medical electrical equipment. In his lectures, Mr. Hagiwara defined risk, how it is calculated and how it must be analyzed, assessed, and controlled. Mr. Hagiwara explained the responsibility of the manufacturers to ensure the safety of their users and to produce devices with high levels of usability and safety.
3限目は一般財団法人 日本品質保証機構(JQA)芝田侯生から『EMC(電磁両立性)の実際』と題してご講義いただきました。
私は液晶素子を使ったウェアラブルデバイスを開発しており、電磁界の影響は非常に大きいと考えていたのでEMC(電磁両立性)試験についても、製品開発が済めば、品質保証の一部として考えていかねばと思っていました。そしてセミナーなどを受講し、製品に対してどのような試験を依頼できるかということを学んでいました。しかし、本日の講義を受講して、リスクマネジメントに関する様々なパラメータを製品開発の段階でもしっかり考えておくことが重要だと気付きました。製品が電磁波を出して人体や他の機材などに干渉すること(エミッション)を防ぐだけでなく、他の機材からの電磁波を受けない・あるいは耐性を付けること(イミュニティ)も設計段階から考えておく必要性を教えていただいたので、早急に専門家に相談していきたいと思います。また、有認定取得試験所で資格者による試験を実施することも大切だとアドバイスを頂いたので、こちらもしっかり対策していきたいです(Written by じゅり)。
In the third lecture, Mr. Kosei Shibata talked about Electromagnetic Compatibility (EMC) and the importance of preventing medical devices from emitting and receiving electromagnetic waves. Mr. Kosei Shibata noted that the risk management measures to prevent such occurrences could be applied starting at the design stage. To test the EMC, devices manufacturers could hire accredited experts to conduct the testing and evaluation.
4限目は株式会社ULJapanから吉田賢先生から『ユーザビリティエンジニアリングとIEC 62366-1』と題してご講義いただきました。
ユーザビリティエンジニアリングとは、適切なユーザビリティを達成するために、人の行動、能力、限界およびほかの特性を医療機器(ソフトウェアを含む)、システム及びタスクの設計に適用することだそうです。ジョンズ・ホプキンズ大学の研究によれば、医療機器の誤使用が原因で米国において毎年多くの人が死亡しているということをお聞きしてとても驚きました。この事実を考えると、医療機器におけるユーザビリティはもはやユーザーに注意喚起するレベルではなく、エンジニアが誤使用を防く設計思想を学び製品開発に反映すべきものなのだと思いました。「理系です。工学部です。」というと、興味の対象は“人”ではなく“モノ”だというイメージを持たれがちですが、実際には“モノ”を使う“人”のことを何よりも考えることが重要であると感じました。「ユーザーが機器に合わせるのではなく、機器がユーザーに合わせる。」という吉田先生のお言葉、エンジニアとして心にとめておきます(Written by なつ)。
In the last lecture, Dr. Ken Yoshida talked about usability engineering and the IEC 62366-1 standard. Dr. Yoshida stressed the importance of applying usability engineering when designing medical devices. Given the potential adverse effects of misusing medical devices, it is very important for device manufacturers to design the devices in a way that minimizes the possibility of misuse. Dr. Yoshida also stressed the importance of focusing on the user instead of the product, noting that the product should fit the user and not vice versa.
お昼は東京会場でランチョンネットワーキングが行われました。今回は7月27日のグループワークのメンバーでテーブルを囲んでいただきました。初対面の方も多かったように思いますが、会場のBGMが聴こえなくなるくらい賑やかな雰囲気だったのが印象的でした。
来週は、医療機器開発のプロジェクトマネージメント、生物学的安全性試験、医療機器と臨床評価、医療機器開発と保険償還について学びます。
Next week, we will hold the 3rd part of Module 2 where we will learn about project management for medical device development, biological safety testing, clinical evaluation of medical devices, and insurance reimbursement. See you next week!
今週末は福岡では博多祇園山笠が行われているそうですね。
大阪の天神祭ももうすぐ。夏がはじまりますね!
来週もどうぞよろしくお願いいたします。
2019.7.13
MDD Diary 2019
Writers : なつ-工学と医学の融合分野で日々研究、国語が苦手な理系女子, じゅり-技術×芸術×起業が人生テーマの30代研究者兼起業家(の卵), Samar-a researcher in Osaka, a student in Kyoto, and an alien in Japan
編集長 : ChiCo-小さい頃の夢はエジプト考古学者
MDD brain: KEI2