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【MDD Diary 2025】#1 (2025/5/31)

2025-06-3

本日よりメディカルデバイスデザインコース2025が開講いたしました。

初日はModule1 〜医療機器開発のための臨床医学〜1日目でした。

開講に先立ち、当センターの日比野 浩センター長より開講の挨拶、続いて本コース代表教員の岡山慶太先生よりMDDコースの目的・意義についてイントロダクションが行われました。

1限目 産科婦人科学と医療機器
小玉 美智子 先生
大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学

「産婦人科とは、女性の一生を見る診療科です。」というフレーズから始まった1限目では、小玉先生より、産科婦人科学と医療機器というテーマで講義をいただきました。未解明な点が多く残る妊娠・分娩のプロセスや、死産率の低下に向けた胎児モニタリングの進化についてご紹介いただきました。子宮頚管の開大や児頭下降度の把握においては、現代でも触診が最も有効であるという言葉が印象的でした。質疑応答では、「胎児心拍変動のモニタリングにAIが活用されることはありますか?」という質問があり、「検討は進められているが、実用化には至っていない」とのご回答をいただきました。今後の医療機器開発への期待が高まる講義内容でした。

2限目 整形外科の臨床現場と医療機器
前 裕和 先生
大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学

2限目では、骨や関節、筋肉などの運動器を専門とする整形外科領域について、前先生にご講義いただきました。レントゲン画像や動画を用いた手術の説明は非常に分かりやすく、理解を深める内容でした。人工関節の歴史では、素材の改良とともに耐用年数が向上したこと、極めて精緻な手術操作が求められることが紹介されました。また、人工関節置換術において、術後合併症の約22%を占める脱臼を防ぐため、ロボットによる術中支援が活用されている現状について解説いただきました。質疑応答では、10個を超える多くの質問が寄せられました。「人工関節置換術におけるリスクとその対応策は?」という質問には、現在では脱臼よりも“感染”が最大の課題であるとのことでした。補足として、「人工関節が入っていてもMRI検査は可能です」との情報も共有されました。

3限目 泌尿器科領域の臨床と医療機器
河嶋 厚成 先生
大阪大学大学院医学系研究科泌尿器科学

3限目は河嶋先生による、前立腺癌や腎細胞癌といった尿路性器癌の検査・診断・治療に関する講義でした。Da Vinciサージカルシステム導入による出血量の減少や、最新機種の機能向上による手術の変化に加え、コストとのバランスについても触れられました。ロボット支援により、1人の術者が対応できる範囲が大幅に広がったことも紹介されました。実際の術中動画が多数紹介され、受講生の集中した視線が印象的でした。また、排尿に関連する論文や手術動画の紹介を通して、日常生活に関わる身体機能への理解も深まりました。質疑応答では、「ロボット手術で代替が困難な手術には何がありますか?」という質問に対し、「熟練医でなければ対応できない術式もまだ残されており、人間の感覚を鍛える必要性は依然として重要」との回答が印象に残りました。

4限目 呼吸器外科診療の実際
新谷 康 先生
大阪大学大学院医学系研究科呼吸器外科学

本日の最終講義は、例年受講生から人気の新谷先生による呼吸器外科の講義でした。日本初の肺がん切除術が大阪大学で行われたことを起点に、日本がこの分野で世界に大きく貢献している点が強調されました。近年では、手術支援ロボットや低侵襲機器の進歩により、開胸を伴わない手術が主流となっていること、また、肺葉切除に代わり区域切除(縮小手術)が増えている現状が紹介されました。さらに、放射線療法や重粒子線治療、化学療法などと組み合わせた総合的な肺がん治療の進展についても学びました。質疑応答では、「肺がんの罹患率が上昇している原因は何か?」という質問に対し、「明確な要因は不明だが、加齢が一因の可能性がある」との見解が示されました。

今年も多くの受講生の方々にご参加いただき、各専門分野から様々なスペシャリストにご参画いただいております。これから10月まで、よろしくお願い申し上げます。

来週は「精神医学の臨床と医療機器」、「循環器医療と医療機器」、「循環器疾患外科治療~心臓血管外科手術と医療機器~」、「IVRの実際とデバイスの現況」について学びます。

メディカルデバイスデザインコース2025運営チーム