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【MDD Diary 2025】#14 (2025/10/04)

2025-10-8

本日はModule4 〜医療機器開発の実践〜2日目~でした。

【1,2限目】MDD Group Working ーⅥ ~医療機器開発のための事業化計画~

吉田 智之先生 株式会社ディースリーマネジメント 

園川 将司先生 株式会社KOL

岡山 慶太先生 大阪大学国際医工情報センター

午前中は、グループワーキングに先立ち、吉田先生より前回の講義の補足をいただきました。事業化のデューデリジェンスとして、数値を作成する際のポイントや収益に紐づくコストの管理についての解説の中で、数字を緻密に作り込むこと以上に大切なのは、事業者が何を核として事業を進めていくのかを見極めることだと強調されました。グループワーキングでは、「事業計画や販売戦略、資金調達の戦略」「事業性とリスクの考察」「ビジネスの実現に向けた必要条件とExit戦略」の三つの課題に挑みました。ファイナンスという専門性の高いテーマであるため難渋しながらも、各グループが真剣に議論を交わす姿が印象的でした。

発表では、医療機器の有効性が示せない可能性や競合他社によるサービス展開、資金不足といった多様なリスクが網羅的に想定されていました。医療機器として承認されない場合に備えて、アプリ開発では広告収入を組み込むようなマネタイズ方法も並行して準備し、不測の事態においても単なる開発で終わらせないといった、サバイバル戦略も提案されました。また、Exit戦略は、子会社化やM&Aによる売却など複数の選択肢が提示されました。ディスカッションでは、資金提供が得られない場合を想定した準備の重要性や、スタートアップは金融機関からの融資を得るのは難しく、ベンチャーキャピタルからの出資を受けるのが現実的であることなど、実践的な意見が多く出されました。また、スタートアップ段階では必ずしもCFOは必要でないこと、十年稼働しても売却が難しい場合はM&Aを検討するという現実的な視点も共有されました。最後に、まずは夢を描いた事業計画を立てることから始め、その後に専門家と共に地に足の着いた事業計画へと磨き上げていけばよいとまとめられました。

【3・4限目】 医療機器開発と保険償還①・②

河原 敦先生

午後は河原先生を講師に迎え、「医療機器開発と保険償還」について学びました。本講義では、健康保険制度の中で医療機器がどのように位置づけられ、どのようなプロセスを経て保険収載されるのかという制度的な枠組みが丁寧に解説いただきました。医療機器の償還価格には、「特定保険医療材料」として個別に評価されるものと、医師の手技に対する技術料の中に包括されて評価されるものがあり、その区別を理解することが保険戦略を立てる上で極めて重要であることが示されました。また、プログラム医療機器のような新しい領域では、従来の枠組みにとらわれず、アップデートによる性能向上や使用目的の変更などに応じて再評価を受けることが可能であるなど、最新の制度改定の動向にも触れられました。実務的な内容として、決定区分(A〜F)の違いとそれぞれの申請の流れを理解することができました。

講義の後半では、医療機器の保険適用希望による診療報酬の新設の枠組みについて解説がありました。特に、長期に体内に埋植する製品など、薬事承認時に長期的な評価が行われていない医療機器に対して、使用実績を踏まえて再評価を行うことを可能にする「チャレンジ申請」の制度が紹介されました。グループワーキングで扱った医療機器の事例とも関連づけながら、実際の申請方法や留意点を学ぶことができました。

また、C1・C2区分の申請では、常にエビデンスの提示が求められるものの、令和6年度の診療報酬改定では、評価対象となった技術のうち、ガイドラインで明確に位置づけられているものは全体の約2割にとどまり、一時期の4割程度と比べて採用率が低下していることが示されました。これまでのご経験から「保険適用がうまくいった医療機器は、開発の早い段階で自らの製品の位置づけを正確に理解し、戦略的に進めていた事例が多い」とのことでした。事前相談は開発初期段階からでも可能であり、相談事項を明確にすることが重要であるということを学びました。また、プログラム医療機器の診療報酬が相対的に低い傾向にある点についても知ることができました。

次回は、「MDD Group Working Ⅶ 医療機器開発のための保険戦略➀」、「MDD Group Working Ⅷ 医療機器開発のための保険戦略②」として、丸一日保険戦略についてグループワーキングを通じて学びます。果たして保険上の評価は今回事業化戦略で想定した価格通りになるのでしょうか?

メディカルデバイスデザインコース2025運営チーム