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宮川 繁教授、麻野井 英次招へい教授、坂田 泰史副センター長が記者会見を行いました。-心不全の悪化を早期に検出できる非侵襲的指標“RST”の遠隔モニタリング―医師主導治験により有用性を実証、SaMDに承認―

2024-12-19

 当センターの兼任教員宮川 繁教授(医学系研究科心臓血管外科学講座・教授)と坂田 泰史副センター長(医学系研究科循環器内科学講座・教授)らの研究グループは、日本医療研究開発機構(AMED)の支援のもと、国内5つの医療機関とともに医師主導治験を行い、呼吸安定性の定量指標であるRSTの心不全に対する医学的有用性を検討しました。その結果、RSTは心不全症状の悪化(息切れや体重増加など明らかな悪化)よりも前に現れる悪化(不顕性増悪)を検出できることを確認しました。また心不全症状の悪化時のRST低下を治療により上昇させることができた場合には、その後入院に至りませんでした。
 RSTは呼吸安定性を定量できる生理学的指標で、当センター麻野井 英次招へい教授が開発したものです。今回、この治験成績を基に作られた「RST®算出プログラム」は、クラスII(管理医療機器)のプログラム医療機器(SaMD※)として今年8月23日に承認されました。「RST®算出プログラム」はクラウド上にあり、患者が体動センサを敷いた寝具で就寝するだけで、体動信号がクラウドに自動送信され、終夜のRSTが毎日、自動で計算されます。算出されたRSTは遠隔モニタリングにより病院や診療所で連日追跡することができます。これにより、RSTをガイドに在宅心不全患者の症状が出る前の不顕性増悪を検出して早期に治療を開始し、その効果を評価することが可能となります。これにより、心不全症状の悪化による再入院を回避できる可能性が期待されています。

※ SaMD: Software As a Medical Device
疾病の診断、治療、予防に寄与するなど、医療機器としての目的性を有するプログラム(アプリなどのデジタル技術)のうち、流通・販売にあたって薬事承認が必要となるものは「プログラム医療機器(Software as a Medical Device:SaMD、サムディー)」と呼ばれる。