MDD2020卒業生 早川 剛一 さん(株式会社IBS)
2020-12-31
MDD2020 受講
早川 剛一 さん
(早川さんのコメント)
私は、制御機器の製造会社に所属しており、地域医療に取り組まれている先生方から「使用してきた医療機器がなくなり患者さんに大きな影響がでる。何とかしてほしい」という声に押され医療機器の開発に取り組みました。しかし、似て非なる分野でゴールも見えず開発を断念するか決断を迫られていました。そんな時に出会ったのがMDDでした。講師の先生方の生の声から薬事申請、特許戦略まで学んだことをそのまま日々実践に活かし自信をもって継続することができました。MDDグラントをいただいたり他大学からも開発依頼を受け上市に向けて取り組んでいます。実践に活かせる医療機器開発が身につき、何より講師、事務局の方々の熱い思いが伝わり医療機器開発に取り組む苦労は、人のために役立ち、社員の利益にもつながる。そう実感できた講義でした。
(事務局より)
早川さんはメディカルデバイスデザインコース2020レギュラーコースをご受講されました。また、2021年度も新設の講義をご受講いただいております。
早川さんは、2020年度のMDDグラントにご応募され、見事グラントを獲得されました。グラントについてお話しをお伺いした際に「何をすれば良いか分からなかったけれど、動いてみたら獲得できました!動くことが大事!やってみることが大事!」と仰っていた言葉がとても印象的でした。 経営者として常に持たれている「人のため、社員の皆さまのため」という思いや行動力が大きく広がっていった結果が今に続いているのだと思います。
今後もさらなる医療機器開発を楽しみにしております。
早川さんのますますのご活躍をご祈念申し上げます。
(追記)
早川さんが取り組んでおられた高頻度人工呼吸器PAC-35がPMDAより認証されました。
薬事申請は3つのカテゴリーで認証を受けました。
・用途:呼吸不全患者さんの排痰補助が主目的
・高頻度人工呼吸器 クラス3(機械式からデジタル併用式、誰でも使える機器へ)
・呼吸器回路セット クラス2(吸気呼気の拡散防止で感染症対策する仕組みへ)
・呼吸器用フィルタ クラス1
・チューブ誤接続防止機構 (特許申請中)
・一変で次号としてECMOで排痰が必要な場合の補助機器、コロナでホテル待機の患者さんの症状の緩和、人口呼吸器離脱後の復帰、COPDリハビリでの使用、院内治療用、酸素吸入との併用、救急・被災地での応急治療、在宅患者の応急処置に向けての改良検討に入 っています。
~装置の開発と上市までの道のり~
九州地区の在宅呼吸器学会の先生、施設看護師、販売業さんからの強い依頼から始まりま した。 自活呼吸が困難な小児麻痺患者さんや人工呼吸器をつないでいる患者さんが排痰ができず呼吸困難に陥ることを防ぐ目的で使用されていた米国製品が輸入停止となり、部品補修も滞り始めました。300名の患者を抱えながら地域治療に影響が出る、という課題を現地の小児特別病院で小児麻痺患者さんの前で保護者の方から直接、強くお話をお聞きしました。
以前に入所されていた保護者の方から、自分の子供が笑うことができた、成長を感じることができた、1日だったが看護師さんと一緒に小学校に行くことができた、この装置があったおかげだった、というお話をお聞きし、機器を開発することを引き受けました。(引き受けてしまいました、引き受けますと言うしかなかった、が正しいでしょうか)
しかし、産業機器とは似て非なる状況にどうしていいのか分からず、社内からも小さな会社でやるべきではなかった、それでなくても人が不足し費用ばかり嵩んで本業を圧迫する、という声があからさまに聞こえ、取り組んでいる社員も日々疲弊してしま い、退職者も出る、タッグを組んだ販売業者さんとも毎日喧々諤々と言い合いになり費用をめぐって弁護士まで入る、という状況に陥っていました。小児施設を訪問し先生に断念することを伝えるという決断を求められているときに MDDのチラシを見つけました。
MDDで学びながらもう一度1つ1つ実践していこう、販売業者さんを説得し一緒にあと1年だけ頑張ろう、と社員と互いに鼓舞し、コロナ禍でネットでしか会話できない中を、診療の後や休日に対応してくれた先生・看護師の方、寝ずに装置開発、ドキュメ ント整備に対応した社員(ブラック企業ですね…)の努力で今回の上市となりまし た。また、両社の結束という意味で販売業者さんと話して当初販売業さんが行う予定だった製販業を製造業である弊社と共同でRSL社を設立して薬事申請に臨むこととしました。
星を投げる人 作家ローレン・アイズリーのエッセイより
『 朝、いつものように海岸を散歩していると、ひとりの少年が何やら海に向かって投げている。「何してるんだい?」「ヒトデを投げているのさ」 見ると、見渡す限り無数のヒトデが打ち上げられている。やがて死んでしまうだろう。「こんなにたくさんいるのに何の足しにもならないよ」少年はヒトデをもうひとつ拾いあげた。「でもこのヒトデには、大きな違いだと思うよ」 そう言って、そのヒトデを海に向かって投げたのである。 ヒトデはこんなにたくさんで、全部は助けられない。徒労に思える。でも少年は言う、「こ の」ヒトデは確実に助かるよ。そして、ひとつずつヒトデを投げ続ける。それならできるから 』
まさに私たちにとって MDDの講義は、メディカルデバイスデザインのメンターを越えたこの一説を具現化できた存在でした。
本当に感謝しております。