【MDD】MDD Diary 2017 #7 (2017/07/22)
2017-07-22
【メディカルデバイスデザインコース】
第7日目は『医療機器開発のためのマネージメント3』です。本日午前は医療機器安全研究所より萩原敏彦先生をお招きして、リスクマネジメントとISO 14971そして、医用電気機器とIEC 60601-1についてご講義いただきました。午後からは食品薬品安全センターの金澤由基子先生より生物学的安全性試験について、日本品質保証機構の芝田侯生先生より、EMC(電磁両立性)の実際と題してご講義いただきました。
公表されているさまざまな事故の事例もご提示いただきました。最初からリスクのない製品はなく、またリスク自体を取り除いてしまうと製品として価値のないものになってしまう場合もあり、だからこそそのリスクのレベルを下げ、さらに頻度を下げるというプロセス、すなわちリスクマネージメントが大事なのですというメッセージが一貫してよく伝わる内容でした。医療機器開発のリスクマネージメントも病院でのリスクマネージメントも家電製品の開発のリスクマネージメントもすべて基本は同じですね。医療機器開発のための講義ですが、さまざまなことに応用できる内容でした。
尚、チーム形式でリスクマネージメントを考える実習をモジュール3(8月19日)で予定しております。
非常に多岐にわたる内容で、本格的に勉強しようと思うとこのコースのすべての時間を遣っても足りないかもしれないところを、要点を絞っておまとめいただきました。最初からどのような要求事項があって、何に対応しなければならないかを把握しないと、設計が終了してから規格に合わないという冗談みたいなことが本当に起こる訳ですね。規格に適合するよう該当箇所を分析し、初期段階である程度試しておくことが必要という基本原則が重要ということをあらためて学べる講義でした。また、規格を守るのは当たり前、その上で製品固有のリスクがないかをさらに評価するというリスクマネージメントやユーザビリティともつながる事例についてもご紹介いただきました。
尚、講義の中で少し触れられましたユーザビリティについては来週29日に同じく萩原先生のご講義を予定しております。
本日の講義はすべてリスクマネージメントに関するものであり、また実務的には承認申請時の添付資料として必要になる中身と読み替えることもできますが、それを踏まえた上で全体の流れにおける生物学的安全性試験の立ち位置、必要性、GLP省令について、そしてISO10993-1に基づき日本のみならず、欧州、米国が基準を定めているが微妙に異なる点(特にFDA Guidance)、試験で行う具体的内容などについて非常に分かりやすく解説いただきました。生物学的安全性試験には時間を要する試験もありますが、結局はここで起こりえるリスクを分析し、仮にリスクがあるのであればそれをいかにマネージメントするかというのが目的であるというメッセージが伝わりました。また、昨今増えてきつつある医薬品との複合製品や、一時接触と長期的接触の両方が組み合わさった機器などの事例もご紹介いただき、今後こういった分野の機器に対してどのようにリスク評価をしていくかというのが一層重要になるという示唆もいただけました。
午前中の電気安全の講義でも同じメッセージをいただきましたが、開発当初からEMCを意識をしたものづくりをするというのが重要だということですね。これは当たり前のようで、意外とできていないということかもしれません。特に今まで医療機器としてのケアだけでよかったものが、製品によっては情報機器、無線機器にも該当することになり、これらの基準にも適合している必要が出てきます。いわゆる医療機器、情報機器、無線機器といったデバイスでのボーダレス化が起こっており、今後ロボット医療などが進むことで、自身の開発品が実際にどの規格に適合する必要があるのかがますますわかりにくくなってきているようにも思います。また、海外に出るにあたり、国内規制のみ対応できていればよかったものが、欧州や、米国の基準に適合させる必要もあります。さらに、基準に適合していれば大丈夫という訳ではなく、最終的には製品固有のリスクマネージメントが必要になります。今以上に開発品の正確な分析と情報収集が重要になってくるということですね。
次回はこの流れに引き続き、欧州・米国の医療機器規制の実務、ユーザビリティとIEC 62366-1:2015、医療機器開発と材料調達、医療機器における臨床評価のポイントについて学びます。