【MDD】MDD Diary 2017 #11 (2017/09/02)
2017-09-2
【メディカルデバイスデザインコース】
第11日目は『医療機器開発のための機器実習3』です。午前は日本メドトロニック株式会社、ウェトラブ株式会社ならびにパナソニックヘルスケア株式会社のご協力を得て、ペースメーカー・ICD・CRTDのセッティングと植え込みのシミュレータートレーニング、血糖値センサーについて実習を行いました。午後からは、フクダ電子近畿販売株式会社、フクダライフテック関西株式会社、バクスター株式会社のご協力のもと、心電計と携帯型心電計、ポリソムノグラフィと持続的自動気道陽圧ユニット(CPAP)、腹膜透析(PD)機器(自動腹膜灌流装置と腹膜灌流用紫外線照射器)について実習を行いました。
ペースメーカー・ICD・CRTDの実習では、プログラマーを用いてペースメーカーの設定を行いました。ペースメーカーはリード(電気信号を伝えるコード)を含めて完全に体の中に植え込んだ状態で使用されますので、設定を操作するには遠隔操作が必要になります。このため、マグネットと呼ばれる磁石を用いて操作や情報通信が行われます。ちょうど前日9月1日より日本でリードレスペースメーカーの臨床使用が可能になったこともあり、非常にタイムリーな実習となりました。
ペースメーカーはジェネレーターと呼ばれる電池の部分を皮下に植え込んで使用されます。実際の手術ではジェネレーターの皮下への植え込みと、リード線を心臓の中の適切な位置に留置する操作が行われます。今回は、皮膚モデルを用いて、ポケットという空間を皮下に作成し、ジェネレーターを留置し、皮膚を縫い合わせる手術トレーニングのシミュレーションを行いました。見ていると簡単そうですが、意外とコツが必要ですね。
血糖値センサーでは、実際に血糖値の測定を体験していただきました。前半の講義では、事業の成り立ちから開発のプロセス、センシングビジネスの市場環境についてもお話いただきました。センシングというのは医療機器開発においてもキーワードのひとつですが、どこにマーケットを見出し、ビジネス性をもたせるかという考え方がよくわかりました。意外なところからビジネスが生まれるものですね。つい最近も非侵襲的な血糖値測定方法の実用化に関する報道がありましたが、患者さんの利益になる医療機器の開発がどんどん進めばいいですね。
心電計と携帯型心電計では、被験者の方の協力を得て測定実習を行いました。十二誘導心電図の理論的なところから、昨今の機器開発の変遷についてもご紹介いただきました。小型化や無線LAN対応、ペーパーレス化、ファイリングソフトなどソフト面での発達が進んでおり、数十年以上前から存在する機器であっても年々進化を遂げていることがわかりました。本コースでもAIやマシーンラーニングといった用語がときに出てきますが、心電図の自動解析機能についてもこの10年で大幅に進歩したと感じます。
ポリソムノグラフィと持続的自動気道陽圧ユニット(CPAP)では、睡眠時無呼吸症候群の診断から治療までをテーマに実習を行いました。一時、列車の運転手の記事などで話題になりましたが、機器面でも大きな変化が見られます。機器の小型化はもちろんですが、BluetoothやLAN回線を駆使した通信機能の進化が見られ、夜間のトイレの問題や、検査専用の個室が必要といったさまざまな課題をクリアできるようになっていることがわかりました。CPAP機器は実際に陽圧換気の体験をしていただきました。3G回線で専用サーバーに睡眠時のデータを自動送信することで、治療へのフィードバックができるようになっています。
腹膜透析(PD)機器では、自動腹膜灌流装置と腹膜灌流用紫外線照射器についてご紹介いただきました。自宅など病院以外の環境で使用する場合を考慮した設計が随所にほどこされていることがわかりました。また、停電時や機器の異常時の対処についても様々なリスクマネージメントが反映されていることがよくわかります。たこやき実習で得られたロジックと照らし合わせて考えると、非常に面白いですね。医療機器というと主に医療機関で使用されるため、見た目のデザイン性が後回しになっていた感がありますが、こういった自宅で使用する機会の多いものに関して、環境に溶け込むデザインが採用されるケースが増えてきていると感じます。
来週は大型機器の実習です。
血液透析機器、内視鏡機器、鏡視下手術機器、自動制御機能付き歩行器、3次元画像解析システム、義肢装具を予定しています。