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【MDD Diary 2021】#10 (2021/08/28)

2021-09-3

本日はModule3 〜医療機器開発のための機器実習〜第2日目~でした。

 8つのセッション形式で、ポリソムノグラフィと持続的自動気道陽圧ユニット(CPAP)(フクダライフテック関西株式会社)、心電計と携帯型心電計(フクダ電子近畿販売株式会社)、血糖値センサー(PHC株式会社)、漏れ電流・EPR実習(大阪大学医学部附属病院医療技術部臨床工学部 副技士長 楠本繁崇先生)、除細動器・AED・パルスオキシメーター・血圧計(日本光電工業株式会社)、血液透析機器(ニプロ株式会社)、腹膜透析(PD)機器:自動腹膜灌流装置と腹膜灌流用紫外線照射器(バクスター株式会社)について学びました。今年もwebインタラクティブ形式で、前半は機器の開発の歴史や医療現場での使われ方、市場動向などについて知識を深め、後半は実際の医療機器を用いて実演形式で学びました。

ポリソムノグラフィと持続的自動気道陽圧ユニット(CPAP)
フクダライフテック関西株式会社

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療に用いられる持続的自動気道陽圧(CPAP)機器について、操作性や静音性など機器の特徴に加え、遠隔モニタリング機能についてもご紹介いただきました。また、自宅で行う簡易ポリソムノグラフィと、睡眠障害や睡眠呼吸障害等の確定診断検査と位置づけられている終夜ポリソムノグラフィ(PSG)について、実際に装着しながら、機器の特性や検査の実際を中心にご説明いただきました。運転中など眠気が大きな事故につながることもあり、SASは未治療であることが自身のみならず他者をリスクに晒すことがある疾患です。スクリーニング検査から確定診断、そして治療までの流れが理解できました。

心電計と携帯型心電計
フクダ電子近畿販売株式会社

多くの医療現場で活躍している心電計について、心電図に関する基礎的知識から、心電計を用いた測定方法までご講義いただきました。実習では、12誘導心電図検査における電極の装着方法や、正しい検査結果を得るための注意点などについてご説明いただきました。また、在宅診療などで活躍する携帯心電計や、2週間にわたって心電図を測定できる心電計などもご紹介いただきました。10秒間の測定から2週間までと幅広いラインナップがあり、最近ではスマートフォンでモニタリングをするものも登場しています。1903年にEinthoven(アイントホーフェン)先生が心電図を生み出してから1世紀以上が経ちますが、テクノロジーの進歩を感じました。

血糖値センサー
PHC株式会社

血糖測定に用いられる血糖値センサーについてその開発の歴史から原理、現在の市場まで幅広くご講義いただいた後、実際に血糖値を測定する様子をみせていただきました。血糖値センサーをセットすると自動で電源が入る測定器や、穿刺後の針に触れることなくワンプッシュで安全に針を取り外せる機構など、ユーザビリティの面でも多くの工夫があると感じました。センサーの製造は現在でも日本国内で行っているとのことです。電池の研究開発で得た技術を応用して、世界に羽ばたく医療機器を実現させた開発者の方々には頭が下がります。

漏れ電流・EPR実習
大阪大学医学部附属病院医療技術部臨床工学部 楠本繁崇先生

講義冒頭で、電撃が人体に与える影響について教えていただき、その後、病院電気設備や医用電気機器の漏れ電流対策についてご紹介いただきました。実習では、接地漏れ電流、接触電流、患者漏れ電流、測定電流について、ベッドサイドモニタを用いて実際に電流を測定しながら解説していただきました。医療機器は病院に納入されたら終わりではなく、その後も日々のメンテナンスや安全性の確認などを行うことが必要であるということを、あらためて学びました。

除細動器・AED
日本光電工業株式会社

講義では、救命率向上のために、解析時間の短縮と解析精度の向上を同時に実現させる解析方法の改良や、ノイズ低減パッドの開発など、これまでの取り組みについてご紹介いただきました。実習では、医師が心電図波形を確認して、除細動器により任意のタイミングで電気ショックを実施する様子と、AEDによる心電図の自動解析を元に、医師以外が除細動を行う様子を比較しながら学びました。除細動器とAEDの違いは、心電図の判読と除細動の判断を誰が行うかに違いがあるということがわかりました。いずれも最後のスイッチは人間が押すというところは同じです。今後この辺りも技術革新により変わっていくのでしょうか。

パルスオキシメーター・血圧計
日本光電工業株式会社

血圧や酸素飽和度という、医療現場では必要不可欠な生体データを測定する機器についてご紹介いただきました。講義では、昨今のコロナ禍で身近になっているパルスオキシメータについて、開発の経緯や測定原理について学びました。実習では、iNIBP(加圧測定)という新しい手法を用いて、従来の血圧計よりも20秒早く測定することができ、患者さんの苦痛が少ないという血圧測定を見せていただきました。パルスオキシメーターは1974年に青柳卓雄(日本光電工業株式会社)先生が発明した日本の技術です。青柳先生は残念ながら昨年4月にお亡くなりになられましたが、このパンデミックの中で日本の技術が世界の患者さんを助けているという事実は、誇らしい限りです。

血液透析機器
 ニプロ株式会社
 

血液透析治療の原理、透析機器の基本構造について学んだ後、実際の透析治療が行われる際に実施される、透析回路と透析機器の準備(プライミング)や患者さんへの接続までの流れを、実際の機器を用いて確認しました。患者さんの高齢化に伴い、穿刺針の自己抜去や接続はずれなどの事故が増加し、その対策として開発された見針絆®という新しいセンサーが作動する場面も再現していただきました。透析回路の準備は透析室の朝の日課ですが、以前よりもかなり楽になっていることがわかりました。また、回路内の血液を回収する際のプロセスもかなり自動化されており、さらに回路内にできる血栓が飛ばないようにするリスクマネジメントについても伺うことができました。

腹膜透析(PD)機器:自動腹膜灌流装置と腹膜灌流用紫外線照射器
 バクスター株式会社

腹膜透析の原理やメリットについてご講義いただいた後、実習では、在宅で夜間に腹膜透析を実施する想定で、自動腹膜灌流装置「かぐや」と腹膜透析灌流用紫外線照射器「つなぐ」を用いた腹膜透析の場面を再現していただきました。これらの機器を用いることで、すべての手順についてディスプレイ表示と音声による説明が行われ、プライミング、接続や切り離しといった作業がボタン一つで自動で行われる様子を見せていただきました。医療従事者のいない在宅において、誤使用や感染などのリスクが低くなるとともに、使用者の不安や負担も軽減されると感じました。また、腹膜透析は日本国内のすべての透析症例の3%程度ということでしたが、保険制度の改定に伴い、少しずつ増えてきていることも学びました。

来週は、経皮的心肺補助システム(PCPS/ECMO)、内視鏡機器、鏡視下手術機器、ペースメーカー・ICD・CRTD・プログラマー、リードレスペースメーカー、着用型自動除細動器(WCD)、義肢装具について学びます。

2021.8.28
メディカルデバイスデザインコース2021運営チーム