【MDD Diary 2022】#16 (2022/10/22)
2022-10-25
本日はModule4 〜医療機器開発の実践〜4日目~、MDD2022レギュラープログラムの最終日でした。
1限目 医療機器開発のマーケティング
宮坂強 先生 サムエルプランニング株式会社
医療機器開発や事業化のマーケティングの役割について、実際に経験された事例をまじえながらご講義いただきました。医療機器開発では各フェーズで様々な課題に直面します。医療現場の課題を抽出・評価し、開発しようとしている医療機器が課題を解決できるのか、どんな価値を提供できるのか、どういった市場で売れるのか、これからどういった戦略で販売していくのかを考え、事業計画を立案し、事業戦略を立てるというプロセスには、マーケティングが非常に重要な役割を果たすことを教えていただきました。講義後半では、実際にマーケティング主導で市場開拓・事業化した医療機器の例として、血管内治療の末梢血管領域への展開について教えていただきました。
2限目 患者適合型カッティングガイドとインプラントの開発
村瀬剛 先生 ベルランド総合病院
従来の治療法では正確性に限界があった上肢骨折後の変形癒合に対する新たな治療法として「カスタムメイドガイド」や「カスタムメイドプレート」を自ら開発され、薬事承認・保険適用を経て社会実装されたお話を伺いました。自らの体験談として、開発や実用化に要する資金を獲得をすることが難しいということで、苦労されて研究費を獲得し、さらに学術的信頼を得るためにも大変尽力されたということもわかりました。BoneCloudというシミュレーション支援・データ管理クラウドシステムの構築にも取り組んでおられ、今後ビックデータやAIを利用して治療効果の向上を目指されているという貴重なお話しも伺うことができました。
3限目 けいれん性発声障害の患者さんのための
新規医療機器『チタンブリッジ』の開発
讃岐徹治 先生 名古屋市立大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科学
先駆け審査指定制度で初めて承認された医療機器「チタンブリッジ」の開発から薬事承認・保険収載に至るまでの過程についてご講義いただきました。原因不明で難治疾患であるけいれん性発声障害の治療に用いるチタンブリッジの開発は、治験が必要であるのにも関わらず、稀少疾患であることもあり企業治験が困難であったことから、臨床医であった先生自ら医師主導治験を行われました。チタンブリッジは特定保険医療材料の形で保険適用されているだけでなく、その術式も新規医療技術の形でも保険適用されています。現場のニーズを汲み取って改良を繰り返しながら治験・承認申請・薬事承認・保険適用には長い時間と苦労があったと思いますが、こうした道のりを経て実用化された医療機器によって、多くの患者さんが苦しみから救われていることは本当に素晴らしく感じます。
4限目 ITとブロックチェーン技術で実現する持続可能な医療
上野太郎 先生 サスメド株式会社
ICT技術を活用した持続可能な医療機器開発についてご講義いただきました。不眠症の標準治療は薬物療法が主体ですが、治療用アプリを用いた認知行動療法という視点から開発をされています。アプリを用いた治療法には、従来のような睡眠薬を使用した治療法と比べて、依存性などの副作用がみられないのではないかと期待されています。また、患者さんが自律的に自らの健康状態を管理することができるので、医師にかかる負担も少なくて済みます。一方で、ブロックチェーン技術を活用した、医療データをより安全に管理できるシステムの開発も手掛けられており、このシステムでは外部からの改竄を防止することができます。医学・薬学分野に活用できるアルゴリズムの構築と、持続可能な医療を実現するエンジニア人材の育成の重要性についても教えていただき、ICTを利用した医療の未来に期待が高まりました。
5限目 AI内視鏡で実現する医療の未来
三澤将史 先生 昭和大学横浜市北部病院
「AI内視鏡で実現する医療の未来」というテーマでご講義いただきました。「AIは人間を超えられるか?」という問いに対し、三澤先生はAI技術はあくまで人間の医師による診療を支援するものであると答えます。人間の能力には限界がありますが、その限界をAIの補助によって乗り越えさせることで、より正確な診療が可能になるとのことでした。開発したAIが薬機法による承認に至るまでの過程に関するお話も興味深いものでした。PMDA(医薬品医療機器総合機構)に積極的に相談することで、審査する側からの意見を聞くことができるようになり、その結果医師のニーズに合った機器を作りやすくなります。このことを先生は「適切な評価方法を審査する側と一緒に探っていくイメージ」と簡潔に表現しておられました。
6限目 日本発の手術支援ロボットシステム
浅野薫 先生 株式会社メディカロイド
メディカロイド社が開発する手術支援ロボット「hinotori」について、開発の経緯や製品の特徴を参照しながら解説していただきました。hinotoriは、川崎重工業が百年以上にわたって蓄積してきた機械テクノロジーとシスメックス社による医療機器分野での研究が融合した、まさしく「日本医療機器技術の粋」と呼ぶべき存在です。手術支援ロボット業界にはすでにda VInciという強力な先駆者が存在しますが、浅野先生は日本の医療従事者に、より安く高性能な国産の手術支援ロボットを提供するため奮闘されています。最後にスティーブ・ジョブズの名言を引用しながら情熱的な激励の言葉を送っていただきました。hinotoriの魅力を生き生きと語る先生の姿に、誇り高き国士の躍動を見る思いがしました。
講義終了後に、オンラインでMDD2022修了式が行われました。8回にわたるグループワーキングの結果発表と表彰状授与が行われました。続いて、当センター長の貴島先生より受講生へ修了証が授与され、受講生代表の方からご挨拶をいただきました。最後は恒例の記念撮影を行い閉幕しました。2016年に始まったMDDコースも今年で延べ800名近い方に受講いただいております。MDDコースをご受講いただきました皆様、そしてご講義いただきました先生方、ご協力いただきました医療機器メーカーの皆様、あらためまして感謝申し上げます。
最後は恒例の記念撮影を行い閉幕しました。2016年に始まったMDDコースも今年で延べ800名近い方に受講いただいております。MDDコースをご受講いただきました皆様、そしてご講義いただきました先生方、ご協力いただきました医療機器メーカーの皆様、あらためまして感謝申し上げます。
皆様の益々のご活躍をご祈念申し上げます。
メディカルデバイスデザインコース2022運営チーム