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【MDD Diary 2023】#1 (2023/5/27)

2023-05-31

本日よりメディカルデバイスデザインコース2023が開講いたしました。

初日はModule1 〜医療機器開発のための臨床医学〜1日目でした。

開講に先立ち、当センターの貴島晴彦センター長より開講の挨拶、続いて本コース代表教員の岡山慶太先生よりMDDコースの目的・意義についてイントロダクションが行われました。

1限目 泌尿器科領域の臨床と医療機器
河嶋 厚成 先生
大阪大学大学院医学系研究科泌尿器科学

前立腺癌、腎細胞癌、膀胱癌といった尿路性器癌の検査、診断、治療について解説していただきました。Da Vinci サージカルシステムを使用した前立腺全摘除術、後腹膜鏡下腎摘除術の特徴や国産の手術ロボットを紹介していただきました。また、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)の手法等について、動画や画像を交えて使用されている機器の変遷とともに詳しく学びました。

既存の手術と比較して、ロボット手術は手術時間や出血量がより抑えられ、患者さんの負担を大きく軽減できることがわかりました。そして、放射線療法、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的とするPET検査、凍結療法などさまざまなアプローチでの診断・治療を知ることができました。さらに、排尿機能の仕組みを始め、加齢にともなう下部尿路症状にまつわる前立腺肥大症、過活動膀胱といったよくみられる病気の治療や使用される機器についても学びました。

2限目 麻酔・集中治療と医療機器
榎谷 祐亮 先生
大阪大学医学部附属病院集中治療部

授業冒頭で麻酔科の成り立ちを紹介していただき、麻酔は鎮静・鎮痛・筋弛緩の3要素からなることや麻酔科医の担う役割、マインドを説明していただきました。

麻酔科医は手術中に麻酔器、パルスオキシメーター、気管挿管チューブ、カテーテル等さまざまな機械を巧みに利用して麻酔管理・呼吸管理・循環管理を行い生命維持のバランスを整えていることが分かりました。また、麻酔科医は重症患者を対象に行われる集学的なケアである集中治療も仕事のうちのひとつであり、エコーや人工呼吸器などの機械を活用して治療に当たっていることをお教えいただきました。

そして最後に、現在は治療に使う機器の発展だけでなく、ビッグデータや通信技術を組み合わせた遠隔ICUを実現し、安全性の担保や集中治療医不足のカバーをしていく動きがあることを説明していただきました。

3限目 IVRの実際とデバイスの現状
田中 会秀 先生
大阪大学大学院医学系研究科放射線医学

IVR(Interventional Radiology・画像下治療)について、基礎的なことから今後の展望についてまでご講義いただきました。

IVRは外科治療・薬物治療・放射線治療に続く、治療の「四番目の柱」としての利用が期待されています。IVRでは患者さんの皮膚にあけた非常に小さい穴から処置を行うので、治療における侵襲性が非常に低いのが特徴です。IVRに必要な装置や器具の種類は多岐にわたっています。画像診断装置はもちろん、血管形成の際にはカテーテルやステント、止血術には金属や粒子状・ゲル状の塞栓物質というように、あらゆるデバイスを使いこなすことが求められます。

医学と工学の緊密な連携に基づいた、最先端の治療技術の現状を垣間見ることができました

4限目 放射線治療で求められる医療機器
秋野 祐一 先生
大阪大学大学院医学系研究科放射線治療学講座

放射線治療において使用される医療機器を、実際の動作を見せていただきながらご講義いただきました。

放射線を用いて治療する場合には、重要な臓器にはダメージを与えず、腫瘍だけを狙って集中照射しなければなりません。腫瘍の状態を詳しく分析し、照射範囲と照射回数のバランスを考慮して精密な治療計画を立てる必要があります。現在では、患者さんが呼吸したときの胸の動きに合わせて腫瘍を正確に狙い撃ちする「呼吸同期照射」という技術が実用化されています。放射線治療の最大の課題は、「患者の不確かさ」であるということを学びました。体内臓器の位置や患者の姿勢が少し変わっただけでも、腫瘍の位置はずれてしまいます。

照射精度の向上や医療事故防止のため、日々治療計画の立案が行われており、AIを活用することも進められていることがわかりました。

今年も多くの受講生の方々にご参加いただき、各分野から様々なスペシャリストに参画いただいております。5か月間よろしくお願い申し上げます。

来週は「消化器内視鏡機器の役割と今後の展開」、「人工関節の臨床現場と医療機器」、「消化器外科の臨床現場と医療機器」、「脳神経外科領域の臨床と医療機器」について学びます。

メディカルデバイスデザインコース2023運営チーム