大阪大学国際医工情報センターロゴ

MDD Diary 2018 #9 (2018/08/04)

2018-08-4

Module3『医療機器開発のための機器実習』の初日が東京会場と大阪会場にて開催されました。

 
午前中は、株式会社VORONOIより大浦イッセイ先生、森ノ宮医療大学より西垣孝行先生、大阪大学医学部附属病院臨床工学部より楠本繁崇先生にご講義いただきました。
午後からはパルスオキシメーター、血圧計、除細動器を用いた機器実習と点滴ポンプ等を用いた漏れ電流測定実習が行われました。

 
大浦先生には「医療機器開発に必要なデザインとクリエイティビティ」と題してご講義いただきました。これまでは『医療機器開発=医療に用いる機器をつくる』という物理的な側面からしか考えていませんでしたが、今日の先生の講義はそれとは全く異なるアプローチだったように感じました。
講義の序盤に『将来、人が免許を持つのではなく、車が免許を持つ時代が来る』と先生が話されたときは、正直大変驚きましたが、たしかにその未来はすぐそこまできているようにも思いました。これまでの知識や経験によって自分の中に、『当たり前』を作っていることに改めて気づきました。クリエイティビティな医療機器開発のためには、自分の中にある当たり前を壊す(バイアスを外す)ことや、物事の本質である構造を理解することが大変重要であると知りました。
また、ダイソン社製の掃除機を例にあげ、これまで隠すことが一般的だったゴミを、掃除の成果として見せるというアイデアにより、『新たな価値を創造』し製品が生まれたということを教えていただきました。『ものをつくる』ことが『価値を創造する』ことであると考えたのは初めてでありとても新鮮でした。いかにしてバイアスを外し新しい価値を創造するのか、また、どのようにしてその新しい価値を共有し新たな構造を構築するのか、大変難しいことなのだと思いますが、このプロセス自体がイノベーションなのかもしれません。先生のお話をきいていると、ぜひ取り組んでみたくなります。
講義の後半では、新たな構造を構築する際に、戦略的思考を視覚化しチームで共有することができるツールとして、ビジネスモデルキャンバスをご紹介いただき、実際の例を挙げて詳しく解説していただきました。バリュープロポジション(提供する価値)の置き方によって、ビジネスモデルは大きくかわることを知り、『どのような物にするか』を考える前に『どのような価値を共有したいのか』を考える重要性を学びました。

 
西垣先生には「医療機器開発における臨床ニーズのクリエイティビティ」と題してご講義いただきました。いのちを救うはずの現場に、実は多くの『死のデザイン』(危険な事故につながりかねないデザイン)があふれていることを、生命維持装置のスイッチや医療機器のコンセントの束の写真をもとにして教えていただきました。このように、写真をみながら課題をブレーンストーミングで抽出し、その構造を読み解いていくという手法があることをご紹介いただき、大変興味が湧きました。日頃私たちは、SNSに挙げられている写真をみて、見たこともない世界を想像したり、多くの人々と感情を共有しています。それを考えれば、写真の持つインパクトや説得力を活用したこの方法は大きな可能性を秘めており、かつとても楽しそうだと感じました。
先生は今後、この方法で現場のニーズを共有できる仕組みを作られる予定とのことでした。それは、現場の一人一人のスタッフを『EVAGrapher いのちのアートグラファー』と呼び、彼らが一つのテーマに対し、自分の感性で現場のシーンを切り取った写真を共有するもので、撮った写真はアート作品として登録されることで著作権による保護を受け、EVAGrapherにはエントリーすることでポイントが加算されるそうです。臨床ニーズを集める際に、その知財化について考えたことは今までありませんでしたが、このシステムを教えていただいたことで、その必要性を認識することができました。
先生は講義の中で、『デザインは製品ができたあとから考えるものではなく、医療機器にデザインはなくてはならないもの。いのちを救う最後の砦である。』と話されました。
本コースは『メディカルデバイスデザインコース』という名前がついています。先生のお話をききながらそのことを改めて思い出し、医療機器におけるデザインの重要性について考えることができました。

 
楠本先生には「漏れ電流・EPRの予備知識」と題してご講義いただきました。はじめに病院電気設備と医用電気機器の漏れ電流対策について解説いただきました。手術室やカテーテル検査室をはじめ、病院は電気を使用した医療機器にあふれています。しかしこれまで、これらの医療機器を当たり前のように使用することができており、電気設備等に意識を向けることはありませんでした。『医療機器のコンセントは3本(3Pプラグ)のものが多いなあ』という印象ぐらいで、何の不自由も感じたことはなかったのは、知らないところで患者さんや医療者の安全を守るために非常に多くの対策がなされているおかげであったということを今日の講義を通して知りました。午後からの実習では、その対策の一つとして定期的に行われている漏れ電流測定を体験させていただき、『当たり前の安全』を守るために技術者の方々が行なっている作業について学ぶことができました。
医療機器の中には、輸液ポンプやシリンジポンプのように患者さんのすぐ近くで使用するものや、心電図のように患者さんの体に装着するものも多くあります。モジュール2で医用電気機器の安全についても学びましたが、なぜこういった規格に適合させる必要があるのかということがあらためて実感できました。電撃(感電)による人体の反応や漏れ電流について学ぶことは、医療機器開発においてだけでなく、医療者にとっても必要であるとも感じました。

 
午後からは阪大病院臨床工学部、ならびに日本光電工業株式会社様の協力を得て、病院で活躍する医療機器を用いた機器実習が行われました。今回のテーマは「漏れ電流・EPR」、「除細動器とAED」、「パルスオキシメーター・血圧計」でした。
 

 

 

 
 
来週は夏休みで、次回は8月18日になります。午前中は医療機器開発のためのリスクマネージメント実習(医療機器編)、午後からは医療機器開発のための知財実習になります。PCを使ったグループワークがありますので、各自PCをご持参いただきますようお願いいたします。
MDD2018【医療機器開発のための機器実習】スケジュール

 
この日は大阪会場近くでなにわ淀川花火大会が開催されました。
東京でも江戸川区花火大会が開催されたと伺いました。
帰り道、大阪駅の近くで花火がみえました。
久しぶりにみた花火はとてもきれいで暑さを忘れて癒されました。
夏ですね〜
 


 
 
2018.8.4
MDDコース2期生 チコ(ChiCo)