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MDD Diary 2019 #16 (2019/10/19) 『医療機器開発の実践 4 』

2019-10-19

本日はModule 4〜医療機器開発の実践の第4日目でした。
そしてMDDコース2019 レギュラープログラムの最終日でした。
Today was the last day of Module 4 and the last day of the whole MDD course.
 
午前中は大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社から水原善史先生にお越しいただき、『Group Working – Ⅶ 医療機器開発のためのファイナンス』が行われました。午後からはパラマウントベッド株式会社から木暮貴政先生、三洋化成工業株式会社から前田広景先生、名古屋市立大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科学から讃岐徹治先生をお招きしご講義いただきました。
On this day we had a mix of group work and lectures. In the morning, Mr. Yoshifumi Mizuhara from Osaka University Venture Capital Co., Ltd. started by giving us a lecture on “Capital Strategy for Medical Device Ventures.” He explained to us the different type of business funding – debt and equity – and discussed the risks and profits of venture capitals.
 

授業前半には、2種類の事業資金調達について説明していただきました。事業資金調達には、Debt FinanceとEquity Financeの2種類があります。Debt Financeの資金提供者が銀行などの金融機関であるのに対し、Equity Financeの資金提供者は投資ファンドで、Equity Financeはリスクは高いですが成功したら大儲けできる、ベンチャー企業向きの資金調達とのことでした。(Written by なつ
 
授業後半では、東京、福岡、大阪の全受講生がベンチャー2種6チームとVC(ベンチャーキャピタル)2種6チームに分かれて2つのシナリオに基づいて資本政策に関するグループワークを行いました。
グループワークは戦略・交渉・締結フェーズの3つに分かれており、ベンチャー側が資本政策を作成してVCに提出し、VCがそれを検討したのち、交渉・締結を行うというものでした。戦略フェーズでは、ベンチャーとVCがお互いの手の内を見せないように戦略を立て、CEO、CTO、CFO、社長、キャピタリストなどの役割分担を決めました。締結フェーズでは、熱い口調でプレゼンを行うベンチャー起業のCEOの話を、冷静沈着に迎え撃つVCの社長やキャピタリストの姿がとても印象的でした。
日頃聞き慣れない難解な内容を、短時間で処理しなければならないという大変ハードなグループワークでしたが、最終的にはどのグループも大変完成度の高い資本政策の立案と経営判断をされており、ご講評のときの水原先生の目が『リアル投資家』になっていたように思いました。(Written by ChiCo )
 

After his lecture, we split into groups of ventures and groups of venture capitals. He provided us with two scenarios and guided us to work on three activities: preparing a capital strategy, negotiations between the ventures and ventures capitals, and concluding with a decision of investing or not. It was a very interesting and dynamic group work. At the end we found out that there were very good investors sitting amongst us all this time.
 

睡眠の質の評価を行うために開発された「眠りSCAN」の開発、そしてダーウィンの海に漕ぎ出すまでのストーリーをお話いただきました。
マットレスの下にシート型のデバイスを設置し、睡眠障害の評価を「睡眠習慣を見える化」するもので、睡眠日誌機能を有し、最近では介護施設で使用されるようになったとのことでした。
開発後3年は投資を回収できなかったが、AIの普及や働く人間の労働力不足に貢献できつつあり、最近ではようやく回収につながっているそうです。しかしその裏には経営陣の理解があったことも大きく影響していると同時に、開発者の根気強さもあったのだろうと感じました。
また睡眠を可視化できることで、家庭では離れて暮らす家族の睡眠状況を確認できたり、また施設においてはスタッフの巡回の労動力の軽減も可能であったりと今後の展開がとても楽しみになりました。(Written by Akky
 

今回ご紹介いただいた「マツダイト」という止血剤は、医療機関からの依頼が始まりで、心臓血管外科で行われる大動脈人工血管置換術時の血管縫合の侵襲をできるだけ小さくすることを目指して開発されたそうです。
異物である糸での縫合の代用としてポリウレタンの被膜を応用し、設計開発から薬事承認をクリアして上市するまでに30年を要したとのことでした。社員、社長も入れ替わる中であきらめることなく、人から人へバトンが受け継がれ、プロジェクトメンバー全員にとって人生をかけたようなものだったろうと考えると、頭が下がる思いがしました。ここでも、キーワードは社長の理解であったように感じます。上場企業であるため社長は順次交代していくわけですが、医療への貢献という精神のバトンは、開発プロジェクトメンバーのみならず、経営陣の間でも受け継がれていたのですね。(Written by Akky
 

対象疾患はけいれん性発声障害(稀少難治疾患)で、原因不明のため最後には憑き物のせいだと言われお祓いされるというような、長きにわたり社会から隔絶されてきた疾患です。先生が日常診療の中で患者さんに出会い、何とかしたいという強いお気持ちからこのデバイス開発に取り組まれてきたそうです。
局所麻酔下で甲状軟骨(のどぼとけ)にチタン製のプレートを設置するため、すぐに発声がかわるのを患者さんと医師が一緒に確認できるそうで、多くの患者さんはご自身の声を聞いたときに涙されるそうです。患者さんにとっては本当に長年の苦悩から解放される瞬間なんだと思いました。
(Written by Akky
 

 
講義終了後は、東京-大阪-福岡の各会場をネット中継でつないでMDDコース2019修了式が行われ、東京会場では坂田泰史 国際医工情報センター長より各会場からお越しいただいた受講生代表に修了証が手渡されました。
 

 
レギュラープログラム終了後は、恒例のファイアサイドセミナーが開催されました。
今年度の《ファイアサイドセミナー【特別講義】》は、オリンパス株式会社の笹宏行先生をお招きし、『これから日本の医療機器産業を担う方へ』と題してご講義をいただきました。多くの経験に裏付けされた先生のお言葉はどれも私の胸にズンと響きました。順調に行かないことが多い日々であっても、初心を忘れることなくあきらないで努力を続けていきたいと改めて思うことができました。
(Written by ChiCo )
 
 
特別講義に続いて、大阪会場では特別講義をいただいた笹先生、講師の先生方、そしてMDDコース卒業生の方々にもご参加いただき、《ファイアサイドセミナー【ネットワーキング】》が行われました。モジュール4で実施しました「Group Working – Ⅵ 医療機器開発のための保険戦略」の結果発表が行われ、大阪の2チームに表彰状が送られました。これまで東京チームが表彰状を総なめにしていましたが、大阪会場としては最後に一矢報いた展開でしょうか。

What a journey this has been! I am sad that the course is over and that I will not get to see everybody again. But I am happy with the experience, the memories that I will have of it, and the fact that I will get more sleep next Saturday.
 
Even though the MDD course is over, I am sure that we will always continue to learn new things because we are lifelong learners. Cheers!
 
 

2019.10.19
MDD Diary 2019
Writers : なつ-工学と医学の融合分野で日々研究、国語が苦手な理系女子, Akky-今も某大学病院で働くベテラン看護師, Samar-a researcher in Osaka, a student in Kyoto, and an alien in Japan
編集長:ChiCo
MDD brain: KEI2
 
今年もご協力いただきました講師の先生方にあらためて感謝申し上げます。受講生の皆様におかれましても約半年間お疲れ様でした。
MDDコーススピンオフ企画:『MDD Plus One ~Meet the US Experts~』、そしてアドバンストコースはまだ続きます。お楽しみに。