MDD Diary 2019 #2 (2019/06/08) 『医療機器開発のための臨床医学2』

2019-06-8

【メディカルデバイスデザインコース2019】
本日はModule1『医療機器開発のための臨床医学』の第2日目が開催されました。

 

 
1限目は大阪大学大学院医学系研究科より木村正先生をお招きして、『産婦人科領域の臨床現場と医療機器』と題してご講義いただきました。

 
 妊娠、分娩の進行過程についてご説明頂いた後、安全な出産を行うための技術として胎児心拍数のモニタリングについてご紹介頂きました。胎児の状態を良好と判断するには有用である一方で、早期産を増加させてしまうなどの問題についてもご指摘頂きました。また、新たなモニタリング技術、着床能の測定技術についてもご紹介頂きました。
 私の専攻する生物工学の分野ではゲノム・遺伝子工学の研究が進められています。その中でより安全な妊娠・出産を目指す技術としては着床前遺伝子診断や染色体スクリーニングが注目されています。重篤な遺伝性疾患の防止、また着床率向上の手法として本分野の発展には期待が高まっていますが、技術の安全性、信頼性の担保、及び倫理的観点に対する議論が重要となることが考えられます。
(written by ai)

 
 不妊治療を行っている、行っていた人が身近に数人いて、30代ですが、加齢とともに件数が増えていくことを実感しています。しかし、数年治療に取り組んで子供が産まれた方が多く、人工授精、体外受精の医療の進歩を感じます。そのような中で、染色体異常の受精卵を使用しない、つまり命の選別を行えば、着床成功率は格段に上がるというのは衝撃的でした。子供を望む家庭の強い希望でもあるので、倫理的な懸念を払拭できるような技術が開発されないものかと考えてしまいます。
 子宮内膜の着床能について、胎内の酸化電位とインピーダンスを調べることで、100%着床しないタイミングなどが阪大医学部の研究でわかるようになってきたそうです。そのためのプローブが開発されていますが、プロトタイプを完成させるのに技術的ハードルがあると伺いました。私が仕事で製作している液晶素子も、電気制御を行い、ウェアラブルデバイスとするために電線を引っ張る予定ですが、インピーダンスの変化が素子の駆動に致命的な欠陥を引き起こす可能性があることを十分注意しなければならないと気づきました。
(written by じゅ)

 
 
2限目は本コース・MDDコースのコーディネーター/責任者でもあられる大阪大学大学院医学系研究科 岡山慶太先生より、『循環器医療と医療機器開発』と題してご講義いただきました。

 
 循環器疾患、心不全の医療機器を用いた治療方法について多数ご紹介いただきました。致死性不整脈に対するデバイス、AEDついて、市民が心肺蘇生を実施するか否かで一か月後の生存率、社会復帰率が大きく異なるというお話は印象的でした。また植え込み型除細動器ICDやペースメーカーなど植え込みが必要なデバイスの問題点としてデバイス感染、及びそれによる合併症の発生が挙げられていました。ペースメーカーについてはケーブルの無いリードレスペースメーカーが紹介されていましたが、機能性でまだ劣る部分があるとのことでした。
 各医療機器について、現在の性能に至るまでの歴史、普及に貢献した技術開発も合わせてお話し頂き、これからの医療機器の発展に期待が膨らみました。
(written by ai)

 
 人工心臓やペースメーカーを体内に埋め込むと、感染症を起こした時に取り出すことが難しく、患者さんの心臓を損傷してしまうこともあります。そこで、リードレスペースメーカーや、皮下に植え込むS-ICDなどの開発もされていますが、これらも電池が永遠にもつはけではないため、電池が切れた場合はジェネレーターを交換するか、新しいものを追加するしかありません。
 ワイヤレス充電を私たちの開発しているウェアラブルデバイスに応用したいと考えていましたが、この技術が切実に求められているのは医療、特に最も大事な器官である心臓疾患治療であると感じました。侵襲性のないウェアラブルデバイスでも、心電図のリアルタイムモニタリングと、不整脈の治療が行えるようになってきていて、セルフヘルスケアが可能な疾患も増えてきているように感じます。
(written by じゅ)

 
 
3限目は大阪大学大学院医学系研究科より坂口了太先生をお招きして、『麻酔集中治療領域における医療機器の現状と今後の展望』と題してご講義いただきました。

 
 麻酔科治療の基礎、そして麻酔科で必要な医療機器について丁寧に説明して頂きました。麻酔科では大変多くの医療機器が使われており、脳神経系に対してはBISモニター(脳波を計測し麻酔鎮静度を算出)、脳組織酸素飽和度監視システム(術中脳梗塞や脳への血流変化が予想される手術における脳組織酸素飽和度の監視)、気道呼吸系に対してはパルスオキシメータ(末梢血酸素飽和度の計測)、喉頭鏡・挿管チューブ・人工呼吸器(麻酔によって自発呼吸が低下した患者の呼吸支援)、循環器系に対しては心電図(不整脈や虚血性変化を監視)、ベッドサイドモニター(血圧、心拍数、体温、中心静脈圧等を計測)、カテーテル(薬剤・輸液投与、中心静脈圧等の計測)、心エコー(心室・弁の挙動監視)が紹介されました。
 注目すべきは人工呼吸器の進化です。人工呼吸器は最初期段階では手動だったそうですが、2000年代から電子制御化が進み、自発呼吸への同調性向上、虚脱した肺の解放機能、呼吸器の自動ウィーニング(呼吸数、一回換気量など患者の呼吸状態に合わせて機器の離脱に向け人工呼吸補助を調整)等高度な機能が実装され、機器単体で相当な対処が可能とのことでした。医学と産業・工学の連携には難しさがあげられることも多いですが、人工呼吸器のように技術的に高度に発達し、かつ臨床現場のニーズに応えている機器もあり、ぜひ医工連携のモデルとして参考にしたいと感じました。
(written by KO)

 
 
4限目は大阪大学大学院医学系研究科より木内寛先生をお招きして、『泌尿器癌診療における医工学』と題してご講義いただきました。

 
 泌尿器科におけるがん治療の基礎(前立腺がん、腎細胞がん、膀胱がんにおける正常臓器の機能、原因、症状、診断の流れ、治療方法)と診断・治療に使用される医療機器(CT、MRI、手術ロボット)について講義して頂きました。泌尿器科におけるがんは2018年のがん罹患率予測の上位10のうち2つを占めており、非常に重要な領域です。
 今回重点的に説明して頂いた点は手術ロボットのメリット・デメリットです。手術ロボットは現在泌尿器科手術でかなり頻繁に使用されているそうです。メリットとしては、人の手の数倍繊細、人にできないアプローチができる(前立腺がん手術では結果尿道を長く残すことができ術後尿失禁を防止できる)、出血量が少ない、という点を、デメリットとしては、機器が高額、触覚がない(結果事故につながる可能性がある)、複数のアームが干渉する、という点を具体例と共に説明して頂きました。残念なことに国内で使われている手術ロボットは全て海外製ということでした、技術的には日本のロボティクス技術ならば参入可能に感じますが、どのような参入障壁があるか、今後の医療工学、ビジネス、法令、特許の講義も合わせて考えていきたいと思います。
(written by KO)

 

 
来週はお休みです。次回は消化器内科学、小児成育外科学、救急医学、脳神経外科学と医療機器について学びます。
 
2019.06.08
 
MDD2019 事務局スタッフ一同 
 
今週は外遊中のChiCo編集長に代わり、事務局スタッフ皆で編集しました。