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MDD Diary 2018 #6 (2018/07/07)

2018-07-7

【メディカルデバイスデザインコース2018】
今週は真夏のような暑さとともにはじまりましたが、週の後半には記録的な大雨となりました。少しでも早く雨の勢いがおさまり、皆様に穏やかな日々が戻りますようお祈り申し上げます。
 
各地で警報が発令され、高速道路の閉鎖や交通機関の運休などがある中、多くの受講生の方々にご参加いただき、皆様の熱意を感じました。
 

 
『医療機器開発のマネージメント』第2日目は、医療機器安全研究所より萩原敏彦先生、JQA 一般財団法人 日本品質保証機構より芝田侯生先生、株式会社 UL Japanより吉田賢先生にご講義いただきました。
 

 
萩原先生には2コマにわたり、「リスクマネジメントとISO 14971」「医用電気機器とIEC 60601-1」と題してご講義いただきました。1限目はリスクマネジメントにおける重要な用語である「ハザード・危険状態・危害・リスク」について、電気ポットの熱傷事故の例を用いて解説いただきました。ハザードをとり除くことができない場合は多いが、ハザードを特定することで対策を立てることができるということ、事故情報を早期にフィードバックすることで新たな事故の発生を防止することができるということ等を学びました。2限目は、ME機器の詳細な要求事項についてご説明いただきました。日頃、何気なく目にしていた機器の表示や標識にも細かい規定があることを知り、驚くとともに、このような徹底した管理によって、私たちの命が守られていることを痛感しました。講義冒頭で過去の医療機器に関する事故をご紹介いただきながら、
『患者は一般の機械のようにとりかえることができない。だから医療機器は丁寧に作らなければならない』と話された先生のお言葉を忘れてはいけないと思いました。
 
芝田先生には、「EMC(電磁両立性)の実際」と題して、さまざまな制度とEMCの関連からEMC試験の実際まで非常に幅広い内容についてご講義いただきました。電磁波の存在を日々の生活において認識することはほとんどありません。しかし、目に見えない細菌が人間の健康を脅かすことがあるように、目に見えない電磁波も多くの医療機器で成り立っている現代の医療にとり大きな脅威になり得ると思いました。今後在宅医療が進むと、一般社会に医療機器がどんどん普及していくと考えられます。病院という管理された環境でなくても、医療機器が周囲に悪影響を及ぼすことなく、本来の性能を発揮していくために、医療機器におけるEMCの管理を徹底していくことが重要であると思いました。

 
吉田先生には、「ユーザビリティエンジニアリングとIEC 62366-1」と題して、ユーザビリティエンジニアリングの概念が普及している米国FDAの法規制を中心にご講義いただきました。誤使用(use error)を防ぐために、機能と形状をリンクさせるシェイプコーディングの例や、誤使用の原因を『まずは一回全ての誤使用をデザインのせいにしてみよう』という考え方など、大変勉強になりました。臨床現場では投薬ミスや患者誤認を防止するためにバーコードリーダーなどによる確認システムの導入が進んでいます。しかしヒューマンエラーをゼロにすることはできません。機器を開発する側も機器を使用する側も、『人は間違える』という思考を常に持っておくことが重要であると改めて認識できました。
 
今日の4つの講義を通して、機器開発におけるリスクマネジメントの実施と文書化の重要性を学びました。

来週7月14日はお休みで次回は7月21日になります。生物学的安全性試験、医療機器開発のプロジェクトマネージメント、医療機器をとりまく行政の役割と施策、QMSとISO13485について学びます。
 
今晩は七夕! ですが、今年も雨模様ですね。。。
大阪会場の前の川はこれまでに見たことがないくらい濁っていました。
皆様、お気をつけてお帰りください。

 
2018.7.7
MDDコース2期生 チコ(ChiCo)