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【特別企画】MDD Webinar 2020 ~新型コロナウイルス感染症と医療の変化~

2020-05-27

本日はMDD 2020の開催に先立ち、【特別企画】MDD Webinar 2020 ~新型コロナウイルス感染症と医療の変化~が開催されました。

Webinar開催の1週間前からのご案内であったにもかかわらず、全国から200名を超える方々にご参加いただきました。どうもありがとうございました。

 

本年4月より新しく国際医工情報センター センター長に就任された貴島 晴彦 先生より開催のご挨拶がありました。
 

大阪大学医学部附属病院高度救命センター 入澤 太郎先生より『救急現場における新型コロナウイルス感染症の対応』と題してご講演いただきました。実際にコロナウイルス陽性疑いの患者さんが救命センターに搬送されてきた際の事例を元に、「防護具を装着した状態での気管挿管を再現した場面」や「N95マスクの代わりに用いるHEPAフィルターを搭載したHALO(一体型小型電動ファン付き呼吸器防護具)の装着」について、動画を用いてご紹介いただきました。きちんと防護具を身に着けることで医療者を守ることができる一方で、ナイロン製のガウンを全身にまとうことによる暑さ、マスクからの息でフェイスシールドが曇り視界不良になること、挿管や点滴の際に細かな作業をしようと顎をひくとフェイスシールドの縁が当たって思うように作業ができないこと、HALO装着により呼吸は楽になるが大きな音が耳元で生じるので医療者同士の会話がしにくくなること、など大変リアルな話をたくさん聞かせていただきました。
私たちはインターネットやテレビでも非常に多くの情報を毎日得ることができます。しかし、実際の診療に携わっている医師から語られる内容は、どれも大変説得力があり、ひとつでも改善できないものかと聞き入ってしまいました。

 

2017-2019年にかけてMDDコースの講師を務めていただきました竹川 良介先生にご講演いただきました。竹川先生は現在ニューヨークのFeinstein Institute for Medical Research, Northwell Health でご勤務されており、ニューヨークでの新型コロナウイルスのパンデミックの現状についてお話いただきました。ご勤務されている研究所の1階がCOVID-19の検査場所に、カフェテリアが病床に、といった話をきいていると、ニューヨークの医療供給体制がいかに逼迫していたかと、、、コロナウイルスの勢いを改めて認識することができました。ニューヨークでのReopening(活動再開)は、ICUの病床稼働率など7つの項目に基準を定め、それをもとに段階的に行われているそうです。大阪や東京でもそれぞれの基準で段階的に社会経済活動が再開しつつあります。未知のウイルスとの付き合い方に「正解」を見つけることは困難ですが、世界でのさまざまな取り組みを共有することで、少しでも早く最適解をみつけていけるとよいと思いました。

 

大阪大学医学部附属病院感染制御部 森井 大一先生より『感染症時代に求められる視点』と題してご講演いただきました。新型コロナウイルスの致死率などの科学的データに基づき、季節性インフルエンザやSARS、MERSとの違いについて教えていただきました。また新型コロナウイルスの感染様式についても、具体例を用いて大変わかりやすく教えていただきました。なぜマスクをするのか、いつ手を洗わなくてはいけないのか、どうしてソーシャルディスタンスは2mといわれるのか、『新しい日常』の中で当たり前になりつつあることについて、改めてその理由を知ることができ大変勉強になりました。ご講演の中で『原理を知ることが、理想解をとることができないときの次善策を考えるために重要である』と話されていたのが印象的でした。ご講演後の質問の際には、日頃私たちが疑問に思っていることに対して、データや知見をもとにわかりやすくお答えいただきました。新型コロナウイルスに対する社会の混乱の根源は『未規定のリスクに対する怖さ』であると改めて認識できました。この怖さや不安に対処しながら適切な行動をとるために重要なことは、正しい情報をインプットすることであり、それは私たちひとりひとりに求められていることなのだと思いました。

 

正幸会病院 院長 東 大里先生より『オンライン診療の現場から』と題してご講演いただきました。2018年3月からオンライン診療が保険適用となり、2020年4月から時限的にオンライン初診が解禁になったことなど、オンライン診療をとりまく環境の変遷についてご紹介いただきました。東先生の病院では2018年6月からオンライン診療を導入されたとのことで、実際の診療の場面や患者さんが使用するアプリの画面などをみせていただきました。アプリは大変見やすく、予約の方法はまるで美容院や飲食店の予約を取るかのようでした。リモートワークをするようになって、移動時間や待ち時間に対する“もったいなさ”のような感情が以前よりさらに大きくなってきたように思います。加えて病院受診の場合は、感染リスクへの不安が大きく、避けたいと考える人は多いと思います。対面受診のみしか選択肢がない場合は、受診を躊躇することで受診タイミングが遅れ、重症化のリスクがあがる場合もあると思います。時には人命が危険にさらされることにつながるかもしれませんし、診断治療が遅れることでさらに医療費がかかることにもなりかねません。遠隔モニタリングやオンライン診療の普及により、症状悪化の早期発見や、限られた医療資源の最適化が実現することは非常に有益だと感じました。もちろん、オンライン診療には医師が実際に患者さんに触れて診察することができないなどデメリットもあり、疾患や患者特性、居住地など、さまざまな要因により、対面診療とオンライン診療の有用性は変化します。両者の利点を最大限に生かすことができる制度作りが重要で、それが実現するであろうAfterコロナの社会が少し楽しみになりました。

 

今週末の5月30日よりMDD2020がはじまります。Module1は、総勢16名の阪大病院の医師による医療機器開発に必要な医学の知識について学びます。臨床現場の話がたくさん盛り込まれており、理解しやすくとても楽しい講義です。

「患者さんを救えるのはお医者さんだけではありません 医療機器開発のプロになって世界の患者さんを助けませんか」これがMDDコースのコンセプトです。
コロナウイルスがもたらした多くの悲しみや苦しみの中、医療従事者でない方々におかれましてもいのちや医療について考えることが増えたと思います。ぜひ一人でも多くの方に医療機器に興味をおもちいただき、今後の日本の医療機器開発についてともに考えていただければ幸いです。

 

講演後の学内では、色あざやかに青もみじが風に揺られていました。

このもみじが色づき、落葉するころまで、どうぞよろしくお願いいたします。

2020.5.23
MDD Diary 2020
Written by ChiCo & MDD Brain KEI2